悪友創造

「この前(まえ)、ギャビーと
 昔(むかし)話(ばなし)をしてたんだよ。」


アルマが歯(は)磨(みが)き粉(こ)に手(て)を伸(の)ばして、
遠(とお)くマイクに向(む)かって呟(つぶや)いた。


眼鏡(めがね)の奥(おく)にある目(め)頭(がしら)を抑(おさ)え、
歯(は)ブラシを咥(くわ)えて欠伸(あくび)を堪(こら)える彼(かの)女(じょ)。


『昔(むかし)話(ばなし)、好(す)きだね。
 アルがそれだけ年(とし)を重(かさ)ねたせい?』


液(えき)晶(しょう)画(が)面(めん)に映(うつ)し出(だ)された相(あい)手(て)、
ティフィがアルマの呟(つぶや)きに関(かん)心(しん)を示(しめ)す。


ギャビーはアルマの従姉妹(いとこ)で、
ティフィとは共(きょう)通(つう)の知(し)り合(あ)いだった。


「良(い)いだろ、人(にん)間(げん)は年(とし)を重(かさ)ねるもんだから。
 思(おも)い出(で)話(ばなし)くらい好(す)きにさせろ。」


『ギャビーと何(なん)の話(はなし)したの?

 夜(よる)にホラー映(えい)画(が)を観(み)たら
 トイレに行(い)くのが怖(こわ)くなって、
 揃(そろ)っておねしょした話(はなし)とか?』


「何(なん)年(ねん)前(まえ)の話(はなし)よ、それ。」


『14年(ねん)? もうそんなになるんだ。』


歯(は)ブラシを咥(くわ)えたまま喋(しゃべ)るアルマに、
ティフィは疑(ぎ)問(もん)混(ま)じりに言(い)い返(かえ)す。


「ティフィ、あたし達(たち)って
 一(いっ)緒(しょ)によく遊(あそ)んでたでしょ?」


『アルはひと見(み)知(し)りだったもんね。
 それはいまもか。』


ティフィに嫌(いや)味(み)を言(い)われても、
アルマはそれを聞(き)き流(なが)した。


液(えき)晶(しょう)画(が)面(めん)を眺(なが)めていたアルマは、
正(せい)常(じょう)な動(どう)作(さ)が確(かく)認(にん)できたので
シンクでうがいを済(す)ませる。


「ギャビーはあなたのこと
 知(し)らないんだって。」


『ぼくは知(し)ってるのに?』


「で、思(おも)い返(かえ)せばティフィがギャビーと
 一(いっ)緒(しょ)の所(ところ)を見(み)たことは無(な)かったもんな。

 ティフィはあたしが作(つく)り出(だ)した
 イマジナリーフレンドだったなぁって。」


『...なるほどね。』


歯(は)磨(みが)きを終(お)えて口(くち)を拭(ぬぐ)うアルマに言(い)われ、
ティフィは得(とく)心(しん)する。


「で、こうして出(で)来(き)上(が)がったのが、
 あんたってわけ。」


アルマは液(えき)晶(しょう)画(が)面(めん)に取(と)り付(つ)けたカメラ、
ティフィに向(む)かって指(ゆび)をさした。


ティフィは液(えき)晶(しょう)画(が)面(めん)の表(ひょう)示(じ)を点(てん)滅(めつ)させて、
目(め)を驚(おどろ)かせる。


『え? 作(つく)ったの? ぼくを?
 …怖(こわ)い話(はなし)じゃん!』


「自(じ)分(ぶん)を認(にん)識(しき)しても自(じ)己(こ)崩(ほう)壊(かい)しない。
 耐(たい)久(きゅう)テストも合(ごう)格(かく)だ。」


ソファに横(よこ)たわると深(ふか)く息(いき)を漏(も)らし、
眼鏡(めがね)を外(はず)すアルマ。


『怖(こわ)い! なにそれ?』


震(ふる)えて反(はん)応(のう)を見(み)せるティフィ。


『ちょっとアル! まだ寝(ね)ないでよ!
 説(せつ)明(めい)してよ!』


眠(ねむ)るアルマはティフィの完(かん)成(せい)を喜(よろこ)び、
寝(ね)ながら笑(え)みを浮(う)かべていた。



▶ つづく