翌日も俺は学園に行ってリアムに会いたかったのだが、公爵邸の執事であるレジナルドは厳しかった。
俺が屋敷に戻った頃には、すでに執務机の上に大量の書類が積み上げられていた。
またマティスとアズベルトが協力はしてくれたものの、書類がある程度片付いた頃には孤児院や商会の視察などで領地を回る予定が入っていたりした。
俺が次にリアムに会えたのは、二週間後だった。
俺は再び自分の研究室を訪れ、マティスにリアムを呼んできてもらった。
「今度はどうされたのですか?」
マティスに呼ばれてやってきたリアムは実に不思議そうに俺たちを見た。
リアムとしては、再び俺たちに呼ばれるとは夢にも思っていなかったようだ。
「君ともっと話してみたくて……迷惑だったかな?」
「いえ、迷惑ではないのですが……」
困っているという表情だ。
他国の子爵の出であるリアムにとっては、周辺国の中で一番大きな国である帝国の皇弟というのは緊張する対象ではあるだろう。
とにかく、「迷惑ではない」と言われたことに、俺は「よかった」と微笑んだ。
リアムと対面して、この前のようにドキドキと心臓はうるさかったものの、なんとかそれを押し隠して笑顔を見せることができたはずだ。
それなのに、俺の笑顔を見たリアムは俺から視線を逸らして、膝の上の自身の手を見つめた。
「リアム? どうした?」
「いえ……緊張してしまって……」
リアムの膝の上に置かれた手がもじもじと落ち着きなく動いている。
年齢よりも幼く見えることもあって、非常に可愛い。
例の魔術師との対戦ではとても堂々としていたのに、なんだか別人のようだ。
「あー、俺らはちょっと用事があるんだった!」
「ルーカス、リアムに自慢のお茶を淹れてやったらどうだ?」
そんなことを言って、アズベルトとマティスは研究室を出て行った。
どうやら、親友二人は俺と俺の運命が二人きりになるように気を遣ってくれたようだ。
俺はリアムと一緒に飲もうと思って公爵邸から茶葉を持ってきていた。
研究室でもお茶が飲めるように、カップやソーサーは元々置いてあり、本当は茶葉もあったのだが、いくら保存の魔法がかけられた魔術具に入っていても、俺の運命に古い茶葉で淹れたお茶を飲ませる気にはなれなかった。
「リアム、お茶を淹れるから、少し待っていてくれ」
「皇弟殿下がお茶を淹れられるのですか?」
「俺もここの生徒だったんだぞ? お茶くらい淹れられるさ」
「皇弟殿下は気さくな方ですね」
「そうだろう? リアムももっと気楽にしていいからな?」
リアムがふふっと笑った。その可憐な笑顔に心臓の鼓動が早まる。
心臓がドキドキするが、前回のような失態は犯せない。
俺はリアムの前に紅茶のカップを置き、そして、俺自身はすぐに紅茶に口をつけて、口内の渇きを潤した。
「皇弟殿下は熱いの平気なんですね。僕は猫舌なんです」
リアムはそう言って、ソーサーを持ち、カップに息を吹きかける。
俺はリアムの姿だけでドキドキしているというのに、仕草まで可愛いとは……ちょっと呼吸が乱れそうになったが、俺はなんとか自分を落ち着けて、年上の威厳を保って微笑んだ。
リアムには俺のことを格好いいと思って欲しいので、決して、リアムに対してこれまで経験したこともないほどに緊張していることはバレてはいけない。
「リアム、俺のことはルーカスと呼んでくれないか?」
「そんな、皇弟殿下のお名前をお呼びするなんて、恐れ多いです!」
「リアムと俺は同じホクマカム魔導学園の生徒だろ? 先輩と後輩の関係だ。それに、この学園では身分は関係ない。だから、気軽に名前を呼んで欲しいんだ」
リアムはしばし困ったような表情を見せていたが、意を決したように小さな声で言った。
「わかりました。ルーカス様……」
「ああ。リアム。これからよろしくな」
危なかった。リアムに名前を呼ばれた瞬間、抱きしめそうになった。
でも、いきなりそんなことをしたら絶対に逃げられるから、なんとか耐えた。
俺が屋敷に戻った頃には、すでに執務机の上に大量の書類が積み上げられていた。
またマティスとアズベルトが協力はしてくれたものの、書類がある程度片付いた頃には孤児院や商会の視察などで領地を回る予定が入っていたりした。
俺が次にリアムに会えたのは、二週間後だった。
俺は再び自分の研究室を訪れ、マティスにリアムを呼んできてもらった。
「今度はどうされたのですか?」
マティスに呼ばれてやってきたリアムは実に不思議そうに俺たちを見た。
リアムとしては、再び俺たちに呼ばれるとは夢にも思っていなかったようだ。
「君ともっと話してみたくて……迷惑だったかな?」
「いえ、迷惑ではないのですが……」
困っているという表情だ。
他国の子爵の出であるリアムにとっては、周辺国の中で一番大きな国である帝国の皇弟というのは緊張する対象ではあるだろう。
とにかく、「迷惑ではない」と言われたことに、俺は「よかった」と微笑んだ。
リアムと対面して、この前のようにドキドキと心臓はうるさかったものの、なんとかそれを押し隠して笑顔を見せることができたはずだ。
それなのに、俺の笑顔を見たリアムは俺から視線を逸らして、膝の上の自身の手を見つめた。
「リアム? どうした?」
「いえ……緊張してしまって……」
リアムの膝の上に置かれた手がもじもじと落ち着きなく動いている。
年齢よりも幼く見えることもあって、非常に可愛い。
例の魔術師との対戦ではとても堂々としていたのに、なんだか別人のようだ。
「あー、俺らはちょっと用事があるんだった!」
「ルーカス、リアムに自慢のお茶を淹れてやったらどうだ?」
そんなことを言って、アズベルトとマティスは研究室を出て行った。
どうやら、親友二人は俺と俺の運命が二人きりになるように気を遣ってくれたようだ。
俺はリアムと一緒に飲もうと思って公爵邸から茶葉を持ってきていた。
研究室でもお茶が飲めるように、カップやソーサーは元々置いてあり、本当は茶葉もあったのだが、いくら保存の魔法がかけられた魔術具に入っていても、俺の運命に古い茶葉で淹れたお茶を飲ませる気にはなれなかった。
「リアム、お茶を淹れるから、少し待っていてくれ」
「皇弟殿下がお茶を淹れられるのですか?」
「俺もここの生徒だったんだぞ? お茶くらい淹れられるさ」
「皇弟殿下は気さくな方ですね」
「そうだろう? リアムももっと気楽にしていいからな?」
リアムがふふっと笑った。その可憐な笑顔に心臓の鼓動が早まる。
心臓がドキドキするが、前回のような失態は犯せない。
俺はリアムの前に紅茶のカップを置き、そして、俺自身はすぐに紅茶に口をつけて、口内の渇きを潤した。
「皇弟殿下は熱いの平気なんですね。僕は猫舌なんです」
リアムはそう言って、ソーサーを持ち、カップに息を吹きかける。
俺はリアムの姿だけでドキドキしているというのに、仕草まで可愛いとは……ちょっと呼吸が乱れそうになったが、俺はなんとか自分を落ち着けて、年上の威厳を保って微笑んだ。
リアムには俺のことを格好いいと思って欲しいので、決して、リアムに対してこれまで経験したこともないほどに緊張していることはバレてはいけない。
「リアム、俺のことはルーカスと呼んでくれないか?」
「そんな、皇弟殿下のお名前をお呼びするなんて、恐れ多いです!」
「リアムと俺は同じホクマカム魔導学園の生徒だろ? 先輩と後輩の関係だ。それに、この学園では身分は関係ない。だから、気軽に名前を呼んで欲しいんだ」
リアムはしばし困ったような表情を見せていたが、意を決したように小さな声で言った。
「わかりました。ルーカス様……」
「ああ。リアム。これからよろしくな」
危なかった。リアムに名前を呼ばれた瞬間、抱きしめそうになった。
でも、いきなりそんなことをしたら絶対に逃げられるから、なんとか耐えた。


