二人で町への買い出し……これは、実質、デートではないだろうか!?
密かにそう思いながら店を周っていると、不意にリアムが「ふふっ」と愛らしい笑い声を漏らした。
「なんだか、デートみたいですね」
いや、もう、デート確定でいいだろう!!?
「リアム、手を繋いでもいいか!?」
緊張から勢いよく聞いてしまい、あまり格好良くはなかったけれど、それでもリアムは可愛く微笑んで頷いてくれた。
手を繋ぎながら、素材を買い揃えるために店を周り、購入した大量の荷物はすぐにマジックバックに詰め込んで、リアムの手を握り直す。
途中、町の人たちに声をかけられた。
「おや、ルーカス様と……リアムちゃんじゃないか、戻ってきたのかい!?」
ホクマカム魔導学園がある島は帝国の統治下にあるため、皇帝の弟である俺のことを知っている町の人たちは多いのだが、理不尽な貴族の学生から町の人たちを守っていたリアムもよく知られているようだ。
「リアム! 国に帰らなきゃいけないと言っていただろ!?」
「リアムちゃんが帰ってきてくれて嬉しいわ」
「魔導学園に戻って来れてよかったな!」
そんな風にリアムに声をかける人が多い中で、俺にも心配そうな視線を向ける人々がいた。
「ルーカス様も今、立場が危ういんだろう?」
「ルシアン先生に聞いたよ」
「他の先生たちもルーカス様につくと聞いたし」
「俺たちもルーカス様とリアムの味方だからな!」
一体何をどのように聞いたのかはわからないけれど、彼らは前皇帝である父上や叔父上ではなく、俺の味方をしてくれるという。
それって……
俺はリアムの手を握る手に力を込めた。
俺とリアムが出会ったことによって、本当に、帝国の形は変わってしまうかもしれない。
ホクマカム魔導学園は帝国が所有する島である。
この島には多くの魔法使いが集まり、魔術師になる。
魔術師になって母国に帰り、母国のために働く者も多いが、魔導師になることを目指してこの地で学び続ける者も多い。
ルシアン先生のように魔導師になった後も、この土地を愛し、ここで学ぶ者たちを愛し、この地に定住する魔導師も複数人いる。
この星全ての国のことなど知らないけれど、周辺国の中では、この島に最も多くの魔法使い、魔術師、そして魔導師が集まっている。
さらに、彼らを支える町の人たちも魔法や魔術に対しての知識が多少なりともあり、魔法使いや魔術師に寛大である。
そんな島全体を敵に回すことは、帝国は半分の武力を失うに等しかった。
「なんてことだ……」
俺はリアムの手をしっかり握って目を閉じる。
俺とリアムが出会い、一緒になることで、帝国が大陸に君臨するための武力が半分も失われるなんて……
「……」
俺は目を開けて、町の人たちに微笑みかけた。
そして、リアムとしっかり握った手を見せた。
「今後とも、俺たちのことを応援してくださると嬉しいです」
町の人たちは少し驚いた表情になった。
俺はあまり笑わず、愛想もないため、父上からもよく注意されたものだ。
しかし、笑顔ひとつで周囲の人たちの協力を得ることができて、リアムとの未来が万全なものになるのならいくらでも微笑もう。
「ルーカス様はそんな顔もできたんだな」
「二人が幸せになれるように、あたしたちがいくらでも協力するよ!」
「買い物に来る生徒たちにもルーカス様とリアムちゃんの不遇を話しておくわ」
「きっとみんな味方になってくれるわ!」
「非協力的な奴には素材は売らねーよ!」
「おう! うちもそういう奴には食事は提供しないことにしよう!」
笑顔一つにこれほどまでの威力があるとは知らなかったけれど、今後も効果的に使っていきたいと思う。
「皆さん、穏便に」
この島は魔導学園の教師陣や事務員、それから町の数名の代表者と城から派遣された文官によって自治が行われているため、町の人たちが俺たちの噂を広めれば、城から派遣されている文官に俺たちのことが知られてしまうだろう。
つまり、それは、決戦が近いということだ。


