「はい、そこ、いちゃついている場合じゃないことを思い出してほしいんだけど?」
もうリアムと片時も離れるつもりのなかった俺は、マティスとアズベルトに頼んで魔術具の素材を用意してもらった。
そして、俺たちは公爵邸の執務室と魔導学園を繋げたのと同じ魔術具の扉を作り、リアムが監禁されている部屋と魔導学園の研究室を繋いだ。
攫うように連れ帰ってもよかったのだが、それは家族のことを心配したリアムに遠慮されたし、俺も、リアムの家族が危険に晒されるのはよくないだろうと考えた結果の処置だ。
リアムが軟禁されている部屋に人が来るのは食事の時間だけということなので、その時間だけリアムは部屋に戻っていればいいだろう。
そして、俺たちは俺が魔導学園にいる頃に研究に着手し、作りかけになっていた魔術具の開発を再開した。
「ルーカス様、これすごいです!」
魔術具の扉を作る時にも楽しそうにしていたリアムだったが、研究室の隠し扉から俺が自分の作りかけの魔術具を取り出すとその目をキラキラと輝かせた。
リアムは本当に魔術の研究が好きなのだ。
こんな魔術好きな者から魔術を学ぶ機会を奪おうとした父上と叔父上に対して俺は腹が立った。
「すごく格好いいです! 魔術式も緻密ですが、この魔術具の姿、ものすごくワクワクします!」
「しかし、これはまだ本来作る予定の百分の一の縮尺なんだ」
「これをさらに大きくするんですか?」
「ああ。でも、それには素材も時間も足りないから……」
「僕はこのままでいいと思います!」
「このままで? でも、このままだと、それほど威力を期待できないぞ?」
「でも、大きな一体があるよりも、これが百体あった方がすごいと思います!」
リアムがキラッキラッの瞳でそう言った。
そして、リアムの言葉を聞いたマティスがひくりっと唇の端を引き攣らせた。
アズベルトはちょっとウキウキし出したのがわかる。
俺はリアムの発想力に感心した。
「そうか、これが百体……」
いいかもしれない。
帝国と、ルクシア王国のどちらも制圧するためには、その方がずっと効率がいいだろう。
「それに、小さなものでよければ、ここの術式は省略できますし」
「ここの素材も、もっと手に入れやすい素材でいいな……」
「手に持つ武器はいろんなタイプがあってもいいよな?」
「それなら、ここに搭載する武器も……」
俺たちはみんなで色々とアイデアを出し合い、研究と制作を進めた。
朝、昼、晩の食事の時にはリアムを城に戻す必要があったけれど、心配だったから俺もついていって、使用人が部屋に入ってきた時には物陰に隠れてやり過ごし、使用人が部屋を出た後に一緒に食事をとった。
ちなみに、研究室にはちょくちょくレジナルドが来て、足りない食事の分は公爵邸の料理人が用意してそれをレジナルドが運んで来るので、城での食事を俺と分けても問題はない。
食事と睡眠以外の時間の全てを研究に注いでおり、研究に集中していると城の食事の時間を忘れることもあるが、その辺もレジナルドがきちんと教えてくれるので、今のところリアムがすでに軟禁状態から脱していることに気づかれてはいない。
「できたー」
そんな環境下の中で懸命に俺たちが研究を進めた魔術具がひとまず一体完成した。
「戦闘特化型魔術具・魔神くん完成!」
名前はリアムがつけた。
気づいた時には、二足歩行したり飛行したりして攻撃できる魔術具に「魔神くん」と呼びかけていた。
「しかし、これをこれから量産しても……二、三体作ったところで、リアムが城から自由に出入りしていることがバレるんじゃないか?」
マティスがそんな心配を口にした。
百体作りたいところだが、正直、そんな余裕はないだろう。
リアムが部屋から抜け出していることがバレなかったとしても、王女との結婚式が迫っていたし、それまでに百体は無理だ。
しかし、そこで考え込む俺たちにリアムは余裕の笑顔を見せた。
「大丈夫です! 魔神くんに量産システムを組み込んでおきました!」
「……え?」
「魔神くんは魔神くんを作ることができますから、それほど日数を要することなく百体できますよ」
リアムは魔神くんに魔神くんを制作する魔術式を組み込んでいたのだという。
しかも、魔石からだけではなく、空気中や水中などの魔素を取り込んで魔力に変換もできるため、自動で労力となる魔力を取り込み、昼夜構わず動き続けて、二日ほどで一体を完成させるという……
一体が一体を作り上げるのに二日かかるが、順調にいけば二週間ほどで百体を超えるだろう。
「リアムは天才だ!」
そんな便利機能を魔神くんに導入していたとは知らなかったので、俺はリアムを抱きしめた。
「さすがリアム様ですね」
完成を見守っていたレジナルドも感心している。
「その発想はなかった」
「その機能があれば、数千体規模にするのも容易いということか……」
マティスも感心し、アズベルトは軍隊規模の魔神くんを想像してワクワクしている。
「武器は俺が作る!」
魔神くんに別々の武器を持たせたいと言っていたアズベルトが言い、マティスもそれに協力すると言う。
俺とリアムは百体分の素材を集めるために町へ買い出しに行くことにした。


