どうして、見知らぬ女性の元に転移してしまったのかと思ったが、彼女の手には俺の魔石が握られていた。
「その魔石……」
「あなたは……もしかして、ルーカス様?」
彼女は表情を明るくした。
「リアムを助けに来てくれたの!?」
「迎えに来ました。彼はどこですか?」
「リアムは今、王城で……王の庇護の元という名目で、軟禁されています」
「なんだって!?」
父上と叔父上は、ルクシア王国の国王をも動かしていたということだろうか?
「ルーカス様! リアムと逃げてください!」
「あなたは一体?」
リアムとよく顔立ちが似ているから、親族ではあるのだろうが……
「姉です」
リアムの姉だという彼女の名前はルルアという。
ルルアが言うには、リアムには魔法の才能があったけれど、クォーツ家にはリアムを魔導学園に行かせるだけの余裕はなかったそうだ。
しかし、リアムの魔法の才能に気づいた王家が援助をしてくれることになり、魔導学園に行けることになったそうだ。
しかし、その期間は一年だけと決められ、リアムはその一年で魔術師になることを求められていたという。
そして、一年後には王女と結婚する約束になっていたそうだ。
「それが、急に王様がすぐにでもリアムを呼び戻し、王女と結婚させると言い出したのです」
「結婚? リアムが?」
俺は頭に血が上り、苛立ちに拳を握った。
「ルーカス! 落ち着け!」
マティスが俺を諌める。
しかし、リアムが俺以外の者と結婚するなどという話、俺はとても許容できない。
「リアムはルーカス様をお慕いしていると思います!」
「え?」
ルルアから急にそんな話を聞かされて、俺の血圧は一気に安定する。
「この魔石は大切なものだから、どうか預かってほしいとリアムに持たされたのです。城に持っていって、万が一にも取り上げられたら、困るからと……どうか、リアムを助けてください」
リアムの姉のルルアは心からリアムの幸せを願っているようだ。
リアムが俺以外の誰かと結婚するなど絶対に許容できないから、城を破壊してリアムを連れ出そうかと思ったが、この国を滅ぼしたら、リアムの家族も困ることになるのかと思うと、俺は城を破壊すればいいということではないと考えを改めた。。
「ルルア嬢、協力してもらえますか?」
俺の魔石はここにあるから、俺の魔力を辿ってリアムのところに行くのは無理だ。
だから、俺はルルアに協力して貰って、リアムの残留魔力が一番残っているものを借りることにした。
そうして、たどり着いた城の部屋のベランダに俺とマティス、アズベルトは杖で降り立ち、窓から中を覗く。
部屋の中にリアムの姿を発見して、俺はひとまず安堵の息を吐いた。
リアムは椅子に座って、読書をしていた。
窓を叩くと、リアムはこちらに視線を向けて、その表情を明るくする。
リアムは小走りに大窓に近づいて、中から鍵を開けてくれた。
魔術師のリアムを完全に閉じ込めるのではなく、窓が開く状態にしているとは、王は迂闊な人物なのか、それとも、リアムのことを信用しているのだろうか?
「ルーカス様!」
「リアム! 無事か!?」
俺はリアムの体に怪我がないか念入りに確認する。
「僕は大丈夫です。それより、こんなところまで、どうされたのですか?」
「リアムを助けに来たんだ!」
「助けに……僕、助けられる必要はないですよ? 元々、一年後には王女様と結婚する約束でしたし、確かに、魔導学園にいる時間は短くなっちゃったけど、短い間しかいられないのは最初から決められていたことですし……魔導学園での勉強があまりに楽しかったから、あのままあそこにいたら、国に帰るのが嫌になっていたかもしれないから……これでよかったんです」
「俺はよくない!」
俺は勢いに任せてリアムを抱きしめた。
「俺はリアムが俺から離れるなんて嫌だし、俺以外の者とリアムが結婚するなんて絶対に許さない!」
「ルーカス様以外と……」
リアムがこぼした言葉で、俺は自分がうっかり告白していたことに気がついた。
「ルーカス様は僕と結婚がしたいんですか?」
俺の腕の中でモゾモゾと動いたリアムは、俺を見上げて小首を傾げた。可愛さがすごい。
「うん……リアムのことを他の人に渡す気なんてないよ」
たとえリアムが王女との結婚を望んでいたとしても、俺は何年かけたとしても、リアムの心を手に入れるつもりだ。
「それなら、僕、もうルーカス様のことが好きな気持ちを隠さなくてもいいんですか?」
リアムがものすごく可愛いことを言い出した。
「リアムも、俺のこと、好きでいてくれたのか?」
「はい……だって、ルーカス様、すごく格好いいですから」
リアムがえへへと可愛く笑った。
これはもうこのまま結婚式を挙げてもいいのではないだろうか!?
教会はどこだ!!?


