甥のルーカスが子供の頃、あの子の未来を何度も見た。
ルーカスの兄のハロルドは運命を示す星のめぐりに影響を受けずに、自分で未来を作り上げる能力に優れていたから、未来など見ても無駄だった……というか、そういう才能を持っている人物というのは、未来視でも見ることができないのだ。
そんな理由から、ハロルドの未来はそれほど見なかったけれど、第二皇子のルーカスの未来は何度も確認した。
私と同じ立場……皇帝の弟になるルーカスのことが自分のことのように心配だったから。
十数年先の未来などぼんやりしか見えなかったけれど、それでも、ルーカスが魔導学園で特別な一人と出会うことはわかった。
だから、ルーカスに「魔導学園で運命の相手に出会える」と伝えた。
正直、まだ子供のルーカスは未来のことなどそれほど気にしないだろうと思っていた。
しかし、ルーカスは運命の相手の話を喜び、何度も私に運命の相手について聞いてくるようになった。
ルーカスにせがまれて私は何度もルーカスの未来を見るようになり、そして、ルーカスが魔導学園に入学する頃に気づいたのだ。
ルーカスと彼の運命は出会ってはいけない。
詳細はわからないけれど、二人が出会うと、何か大きな出来事が起こり、それが帝国だけではなく、周辺国にも影響を与えることがわかった。
私は兄である皇帝にこのことを伝えて、なんとかルーカスと彼の運命とを出会わせないようにすることにした。
「とは言っても、ルーカスは魔導学園から離れたがらないだろう」
魔術の研究が好きなルーカスの心配をする皇帝に、皇太子が軽い調子で言った。
「いっそのこと、ルーカスに正直に言ってはどうですか?」
ルーカスの兄で皇太子のハロルドの言葉に私は首を横に振った。
「ルーカスは運命の相手に出会うのを楽しみにしていたから、国が滅びる可能性があるから会うのはやめろと言ってもきっとやめないだろう」
「まぁ、そうでしょうね」とハロルドは飄々と言った。
「しかし、ルーカスが魔術と運命の相手以上に興味を持つものなどありませんよ? どうするんですか?」
ハロルドの言葉に私も皇帝も悩む。
そんな我々を見て、ハロルドはまた言ったのだ。
「叔父上か父上かどちらかが倒れたらいいのではないですか?」
「……何を言っているんだ?」
当然、皇帝は眉間に深い皺を寄せて不快そうに聞いた。
「ルーカスは真面目ですから、致し方のない状況で、ルーカスにも役目があるということに納得ができれば、魔導学園からも離れるでしょう」
そうして、ハロルドが考えたシナリオが、皇帝が病で倒れたことにしてハロルドが皇帝につき、その若き皇帝を支える役目として私が城に詰めるために、ルーカスに公爵の仕事を任せるというものである。
急に地位から追われることになった皇帝は不満そうではあったが、国の大事を前にして文句を言うことも憚られ、大人しくハロルドに玉座を譲ることとなった。
ハロルドはルーカスとは違い少し不真面目なところがあるから皇帝としてこの先やっていけるのか少し不安だが、器用な奴なのできっと大丈夫だろう……
皇帝としてのハロルドの未来が心配になって、未来を見てみたけれど、やはりハロルドの未来は他の者よりもかなりぼやけていてなかなか見えない。
次に魔導師になるのは私だと魔術師たちの間では噂されているけれど、皇帝の未来を見ることもできない私が、本当に魔導師になれるのか非常に不安だ。


