驚きと呆れに俺は頭痛を覚えた。
つまり、父上は俺を忙しくさせるためだけに、皇帝の座を兄上に譲ったということだ。
そして、俺とリアムがすでに出会っていることに気づいた叔父上たちは、今度は、リアムをリアムの母国であるルクシア王国へと帰るように仕組んだのだという。
俺は今すぐにリアムを追いかけなければならない。
「どうせお前はすぐにリアムに会えるのだからとりあえず落ち着け」
そうルシアン先生に言われて、俺は首を傾げた。
「すぐに? リアムが杖で飛行していたらもう追いつかないくらいの距離にいるかもしれないじゃないですか?」
あれほど魔法が得意だったのだ。当然、飛行魔法を使えるだろうし、馬車で三ヶ月ほどかかる距離でも、高速で飛行すればそれほど日数はかからないだろう。
もしかすると、単純な飛行魔法ならリアムは俺よりも速く飛べるかもしれない。
「リアムはお前から魔石を貰ったと喜んでいたぞ?」
「ああ!」
そうだ。俺はリアムに魔力を込めた魔石を渡したのだ。
リアムがそれを持っていてくれる限り、俺はリアムのことを見つけることができる。
「ルーカス、公爵と前皇帝に対抗する術を考えてからリアムのことを迎えに行ったほうがいいだろう」
「先生は国が崩壊すると言われて、どうしてルーカスの味方をするのですか?」
マティスが冷静に質問した。
「ルーカスが怒ってこの帝国は半壊するような大事が起こるかもしれないと公爵が考えていることはわかったけれど、ルーカスが怒って帝国を半壊させたとして、ルーカスは魔導学園を攻撃するだろうか?」
「「それはないです!」」
ルシアン先生の言葉に俺の親友二人は即答した。
しかし、俺自身はすぐに「そんなことはしない」と答えることはできなかった。
「ルシアン先生が俺とリアムの邪魔をする気はないのはわかりましたが、魔導学園の方針はどうなのでしょうか?」
もしも教師たちの中に、俺とリアムの未来を否定する者がいれば、俺はその教師を潰す必要があるだろう。たとえ、相手が魔導師であっても、リアムとの未来を諦めるつもりはない。
「ルーカス、私がこの学園の教師たちを御せないとでも?」
にこりとルシアン先生が微笑んだ。
俺の師匠は魔導師だ。
それこそ、この島を沈めようと思えば難なくやってのけるだろう。
「それなら、俺も魔導学園を攻撃する理由などありません」
「そういうことだ」
国は半壊するかもしれないけれど、魔導学園が無事ならばそれで構わないということか。
「我々魔術師にとっては魔導学園が攻撃されなければ、帝国や周辺国がどうなろうと大した問題ではないですからね」
マティスの言葉にルシアン先生は頷いた。
「ああ。そういうことだ。だから、公爵の味方をするより、可愛い弟子たちの味方をするのは当然のことだ」
魔導学園が敵にならないのならば、俺としてもだいぶ対処は楽になる。
「では、前皇帝と公爵への対処を考えるか」
そう言ったルシアン先生に俺は「それなら大丈夫です」と答えた。
「対抗策はもう考えてあるのか?」
「作りかけのものを完成させようと思います」
公爵代理を任せるまで、俺が研究していたものがある。
それが完成すれば、たとえ騎士団が向かってきたところで一掃できるだろう。
アズベルトの目が輝いた。
「それって、全面戦争じゃん!!」
戦闘狂が非常に嬉しそうだ。
しかし、全面戦争だって仕方ないのだ。
「向こうが俺の運命の人を人質に取ったんだから、仕方ないだろう?」
「それなら、リアムに手伝ってもらうのがいいだろう。あの子は、効率的な魔術式を組むのが上手いからな」
俺は早速、リアムを迎えに行くことにした。
しかし、親友二人と一緒に転移魔法を展開し、リアムに渡した魔石に込められた俺の魔力を辿って向かった先には、リアムはいなかった。
「あなたたちは一体……」
そこには、リアムに面立ちの似た女性がいた。


