マンガシナリオ『九尾の息子は、生涯孤独の彼女を優しく甘やかす』


前話に続く
○大宴会場、立食スタイル
沢山の人。設置された壇上に亜仙が登壇する。マイクで話す
亜仙「皆さま、本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。ホテル、旅館、宿泊施設の経営に携わる方々が集まる、1年に一度の貴重な時間を有意義なものにできればと思っております」

会場内で、亜仙と戌井が色んな社長たちと順に話しているシーン。

亜仙と戌井の後ろ姿。
戸倉父「亜仙様」声のみ
亜仙振り返る。
亜仙「あ、戸倉社長。ご無沙汰しております」
お互いに会釈
亜仙「今日はご家族と一緒なんですね」
戸倉父「はい。今日は娘も来ておりまして…」
亜仙のかっこよさに頬を染める戸倉が前に出る
戸倉父「娘の礼奈です」
戸倉「初めまして、礼奈と申します。本日は亜仙様にお会いできて、大変嬉しく思います」
亜仙「初めまして、亜仙です」ニコッ
戸倉(きゅん…!)
亜仙「戸倉社長、私も紹介したい人がいます。…戌井」
戌井「はい」その場を離れる

ほのりが連れて来られる。
戸倉(え…)
亜仙「こちら、私の婚約者のほのりです」
戸倉(!?)
ほのり「ほのりと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
戸倉父「あなたはさっきの…?」
亜仙「ほのりと面識が?」
戸倉父「先ほど娘の同級生だと聞きまして」
亜仙「そうなの?」ほのりを見ながら
ほのり「はい、高校が同じで…」
戸倉(どういうこと?何でこの子が亜仙様の婚約者なの!?ありえないわ!!…どういう経緯で知り合ったかは分からないけど、きっと亜仙様は何も知らないんだわ。私が教えてあげないと…)
「そうなんです。ほのりちゃんとは、高校から仲良しで」
ほのり(え、何言ってるの…)困惑
戸倉「ご婚約されているということは、亜仙様はほのりちゃんがどこで暮らしていたかご存知なんですよね?」
亜仙「というと?」
戸倉「この子、養護施設で長年過ごしていたんですよ。ご両親を亡くしているとはいえ、親戚にさえ見放されるなんて可哀想で…」
亜仙「あの…」戸倉の発言を遮るように
ほのりの肩を抱き寄せる亜仙。
亜仙「私の大切な人に何かご不満でも?」
戸倉「…っ」
亜仙「立場や外見だけで人を判断するのは、あまりよろしくないかと。戸倉社長もそう思いませんか?」
戸倉父「はい、ごもっともです。…礼奈、謝りなさい」焦ってる
戸倉「えっ…」
戸倉母「早く謝るのよ!」
戸倉「…失礼な事を言ってしまい…申し訳ありませんでした…」
屈辱な表情、ほのりに頭を下げる
ほのり「顔を上げて下さい」
気まずそうに顔を上げた戸倉
ほのり「私は、自分の生い立ちを恥じた事は一度もありません。ですが、私が亜仙さんの横に相応しくないと思う気持ちも分かります。なので、いつか心から相応しいと思っていただけるように、日々努力するつもりです」キリッと堂々とした姿。
その様子に亜仙は誇らしそうに口角が上がる。戌井も軽くドヤ顔。

○パーティー後、控え室代わりのホテルの一室
亜仙、戌井、ほのりがいる。
ほのり「変な空気にしてしまって…本当にごめんなさい」
亜仙「ぜーんぜん!ほのりが謝ることは何もないよ。戸倉社長は娘に甘過ぎるからなぁ」
戌井「あれは甘過ぎですよ。ほのり様と仲良かったなんて絶対嘘でしょう。ああいう勘違い女って、学校に1人はいるんですよね」
ほのり(戌井さんが珍しくよく喋ってる…)

ほのりが出て行った後、亜仙と戌井2人。
亜仙、ふっと笑う。
戌井「どうかされました?」
亜仙「いやぁ、高校の話題が出て、お前と初めて会った日のこと思い出してた」
戌井「え…、記憶から消していただきたいんですが…」
亜仙「あはっ、一生忘れんわ。あんな生意気な戌井も、今となっては貴重だし」
戌井「…。」


過去回想
○8年前の4月、亜仙たちの通った高校
体育館、入学式当日、開始前
誰も居ない校舎裏に高校生の戌井の姿。
高校生の亜仙「何してんのー?君、1年生よな?」ひょこっと現れる
高校生の戌井(!?)驚く
「…。」無視
高校生の亜仙「式始まっちゃうよ。もしかして、体調悪い?」
高校生の戌井「…あんたに関係ねーじゃん」
高校生の亜仙「うーん、ないっちゃないけど、あるっちゃあるんよなぁ。だって俺、生徒会副会長じゃもん!」笑顔
高校生の戌井「…は?」
高校生の亜仙「2年の東狐です、よろしく!」
高校生の戌井「…。」
高校生の亜仙「体調悪いなら保健室連れてくけど」
高校生の戌井「…悪くねぇよ」
高校生の亜仙「あ!まさか、式サボろうとしてる!?」
高校生の戌井「…出る意味ねーし」
高校生の亜仙「学校嫌いなん?」
高校生の戌井「…別に」
戌井の顔をじーっと見る亜仙。
高校生の戌井「…んだよ」
高校生の亜仙「俺、今めっちゃ良いこと思いついた!君さぁ、生徒会入りなよ。んで、俺のことサポートしてくれたら助かる」
高校生の戌井「いや、何言ってんの」困惑
高校生の亜仙「俺さ、人を見る目すげぇあんだよ。君、絶対仕事出来るタイプじゃ!」
高校生の戌井「…。」


○再び現在
亜仙「でもまさか、本当に生徒会に入ってくれるとは思わなかったなぁ」
戌井「いやいや、教室まで毎週のように勧誘に来られたら断れないですよ」
教室に誘いに来てる簡易的な図。
亜仙「あはは、毎週行ってたっけ?…まぁ、そのおかげで今こうして戌井と仕事出来とるから、高校生の俺ナイスじゃな」
戌井「…そうですね」
亜仙「あ、そういえば今度の狐の嫁入り行列、ほのりも連れて行こうと思っとる」
戌井「え、本気ですか?」
亜仙「うん、本気」
戌井「まさか、お母様やご兄弟に会わせるおつもりじゃ…」
亜仙「そりゃあ、婚約者なんだし会わせるじゃろ」
戌井「はぁ…皆さまにどう思われるか…」呆れつつ、心配してる
亜仙「あはは、大丈夫じゃって」


○狸原の住む高層マンション最上階、夜
広いリビングの窓際で夜景を見下ろす狸原。少し離れたところに秘書。
狸原「亜仙君が婚約かぁ。あのお方はどう思ってるのかねぇ」