マンガシナリオ『九尾の息子は、生涯孤独の彼女を優しく甘やかす』


○翌週、3月末、飛翔亭、昼間
仲居として働くほのりの姿。お客様にも笑顔で対応している。

越智「今日で研修も終わりですね。ほのりさんは覚えが早くて、業務やお客様対応も完璧なので、素晴らしかったです」
ほのり「いえ、越智さんが丁寧に教えて下さったおかげです。研修が終わっても、どうぞよろしくお願いします」
越智「こちらこそよろしくお願いします」

〇夜、屋敷のリビング
4人で夕飯。
茶子「そろそろ桜も満開になりそうですね!」
亜仙「じゃな。今度、4人で花見行くか」
茶子「いいですね!私、お弁当作りますよ」
亜仙「戌井、また日程決めといてくれるか?」
戌井「かしこまりました」
ほのり(お花見…楽しそう)
亜仙「…あっ、ほのり。食べ終わったらパジャマを持って離れに来てほしいんじゃけど大丈夫?」
ほのり「あ、はい、分かりました」
(離れ…?行った事ないな)

○屋敷の離れ
離れに続く渡り廊下を歩くほのり。
ほのり(確か、離れには露天風呂があるって戌井さんが言ってたよね)

部屋の明かりが付いている。
引き戸をゆっくり開けるほのり
ほのり「お待たせしました…」
居間のソファに亜仙の姿。
亜仙「俺もさっき来たとこ。…よし、風呂入るか!」
ほのり「えっ!?」
亜仙「脱衣所、先がええ?」
ほのり「え、あ、お風呂に入るって、その…」
亜仙「うん、一緒に入ろうと思って」笑顔
ほのり(!?)

○脱衣所
服を脱ぐほのりはパニック状態。
※亜仙が先に入っている
ほのり(え、待って待って。一緒に入浴っていきなり過ぎん!?いや、出会った時から突拍子のない事をする人だけど。でも、まだ手を繋ぐか、ハグしかしとらんし)パニックで方言炸裂

〇露天風呂
タオルを身体に巻いたほのりが、恐る恐る洗い場に。
ほのり(わぁー)
露天風呂から見える景色に感動してる。少し先に桜も見える。
亜仙はすでに湯船に浸かっている。後ろ姿。
ほのり(あ、夜桜だ)
亜仙「すべらんようにな」外を向いたまま
ほのり「はいっ。あの、まだこっち見ないでくださいね」
亜仙「はぁーい」嬉しそう

体を洗い終え、恥ずかしそうに湯船に近づくほのり。
ほのり「入っていいですか…?」
振り向く亜仙、色っぽい雰囲気
ほのりはドキッとする。
亜仙「もちろん!」
ちゃぽん…少し間を空けて隣に浸かる。
※亜仙、腰にタオル巻いてる
ほのり(ふぅー、気持ちぃ…)
亜仙「…久々に入ったけど、やっぱええな」
ほのり「…どうして急に露天風呂に誘ってくれたんですか?」
亜仙「前に越智さんから、ほのりが温泉に行ったことないって聞いたんよ。研修終わって、どっかの温泉泊まり行くのも考えたんじゃけど、せっかく離れに露天風呂あるし、一緒に浸かりたいなと思って。いつもの我が家の風呂も温泉の湯を引いとるけど、浴槽や景色も違うからな」
ほのり(そんな事考えてくれてたんだ)
「…私、同世代の子達に比べて、行った事ない場所、食べたことないもの、経験のないことが多くて…っ」伏し目がち、寂しげ
亜仙がほのりをぐいっと引き寄せ、後ろから包むような体勢に。
ほのり(!?)
亜仙「…何かを経験すんのに、遅いも早いもないよ。ほのりがしたいこと、行きたいとこ、食べたいもの、全部俺が叶えるけん。…全部俺と経験しよ」
ほのり「…ありがとうございます。嬉しいです」
(亜仙さんといると、知らない世界を沢山知れる。楽しい未来が待っているって、自然と思える)
亜仙「ほのり、こっち向いて」
亜仙の方に顔を向ける。顔近い、見つめ合う。
ほのり(…近い)
ドキッ…
引かれ合うように顔が近づき、そのままキス。
亜仙「…好きだよ、ほのり…」
再びキス。月をバックに。
ほのり(唇が重なった瞬間、はっきりと分かった。私…亜仙さんのことが好き)

脱衣所から出た2人。
亜仙「こっち…」
ほのりの手を引く。

寝室に入る。まだ手を繋いでる。
旅館のように敷布団が一つだけ敷かれてる。
亜仙「今夜はここで一緒に寝よう」
ほのり「え…」
亜仙「茶子が干してくれたから、ふかふかで気持ちいいぞ」
ほのり(そういえば…)
今朝茶子が、洗濯日和ですねぇー、と上機嫌で布団を干していたのを思い出す。
亜仙「この前のホテルは、ベッドに出入りするタイミング合わんくて、一緒に寝た感じしなかったからな」
手を繋いだまましゃがむ。寝転び、布団の中で後ろからほのりを包み込む。
亜仙「朝までこうさせて…」
小さく頷くほのり
亜仙「…おやすみ」
ほのり「…おやすみなさい」
(恥ずかしい…けど、嬉しい)


○4月上旬、関東のホテル、ロビー
ほのり(今日は、亜仙さんが出席するパーティーに婚約者の立場として付き添いで来ている)
ほのり私服姿、亜仙和装、戌井スーツ
亜仙「じゃあ、あとで迎えに行くから」
ほのり「はい」
1人になったほのりがエレベーターを待っている。
戸倉「…何をしているの?」声のみ
ほのり振り返る。ドレスアップした戸倉の姿。
ほのり(あ…)
戸倉「あれ、今日は宿泊業界の社長や重役が集まるパーティーよ?どうしてあなたみたいな一般人がいるの?…もしかして、このホテルで住み込みバイトでもしているのかしら」バカにした表情
ほのり「…。」
戸倉父「礼奈」
戸倉の父と母が来る。
戸倉「パパ」
父たちほのりを見る。
戸倉「高校の同級生と再会したの」
会釈するほのり
戸倉「この子ね、生涯孤独の可哀想な人なのよ。近くにいたら不幸が移るから、もう行きましょ。あ、そういえば今日は亜仙様にお会いできるのよね、パパ」
戸倉父「ああ、そうだよ。凄いお方だから、失礼のないようにな」
戸倉「もちろんよ。まだお若い方なんでしょ?もしかしたら、私の将来の夫になるかもだし、このチャンス逃さないわ」
去っていく戸倉親子
ほのり「…。」複雑な表情

○ホテル内のブライズルーム
普段新郎新婦用に使用しているブライズルームでヘアメイクをしてもらうほのり。目元や口元など全体が分からないように。

亜仙と戌井がやって来る。
亜仙「ほのり…」
振り返り、立ち上がるほのり。振袖姿の全身からの顔アップ、綺麗。
亜仙「…。」ほのりの綺麗さに唖然からの頬染まる
ほのり「…亜仙さん?」
すっ、ほのりの手を持つ
亜仙「ごめん、ほのりが綺麗過ぎて見惚れてた」微笑む
ほのり「…っ」頬染まる
亜仙「今日は緊張させる事ばっかだけど、よろしくな」
ほのり「はい、精一杯頑張ります」