○次の日。昼過ぎ、ホテルのロビー
ほのりと茶子の元へ私服姿の亜仙と戌井がやって来る。
亜仙「お待たせ!」
ほのり「亜仙さん、戌井さん、お疲れ様です」
亜仙「じゃあ、ほのり行こっか」
ほのりの手を握る亜仙。
…ドキッ…
ほのり「あ、えっ、茶子さんたちは…?」
茶子「私たちは久しぶりに兄妹水入らずで過ごすのでお構いなくです!では、また後で!!」
茶子は戌井の腕を引き、足早にその場から去って行った。
ほのり(行っちゃった…)
亜仙「お腹空いたし、まずはランチじゃな!」
上機嫌の亜仙は、ほのりと手を繋いだまま外へ。
○商業ビル内のレストラン
テラス席に座り、ランチを楽しむ2人。
亜仙「ん!このパスタめっちゃ美味い!ほのりも食べてごらん」
皿を差し出されたほのりは、少し迷いながらも「ありがとうございます」と言い、くるくるとフォークに巻きつけた。
ほのり「…ほんとだ、美味しい」
亜仙「な?」笑顔
そのままニコニコ顔で、もぐもぐするほのりを見ている。
ほのり「…食べてるのずっと見られるの、緊張するんですけど…」
亜仙「やっぱほのりは、何しとっても可愛いな」
ほのり「…っ」
(さらっと言ってくるのやめてほしい…)
照れて目線を逸らす。
食べ終えたほのりは、亜仙に問いかける。
ほのり「そういえば…亜仙さんは、兄弟っているんですか?」
亜仙「うん、おるよ。5人兄弟で、兄と姉、妹と弟がいて、俺は真ん中」
ほのり「5人!?」
亜仙「みんな離れたとこに住んどるから、会うのは年に1、2回かな」
ほのり「そうなんですね。…あの、江口さんは…」
亜仙「ん、江口さん?」
ほのり「江口さんは、亜仙さんの兄弟の方に会った事があるんですか?」
亜仙「あぁ、たしか2、3年前に妹と弟に会ったと思う。それがどうかした?」
ほのり「あ、いえ…」
亜仙「…?」
○ランチ後、都市型水族館
チケットを購入する亜仙の後ろで考えるほのり
ほのり(水族館なんて、お父さんとお母さんと一緒に行った記憶が薄っすらあるぐらい)
亜仙「じゃあ、行くか」
当たり前のように手を差し出す。
ほのり「…はい」
照れながら手を繋ぐ。
館内を回る2人、楽しそうなシーン。
亜仙「イルカショーそろそろじゃな」
ほのり「その前にお手洗いに行ってもいいですか?」
亜仙「もちろん」
○女子トイレ内
個室から出てきたほのりが手を洗うところ。
入ってきた女性2人が化粧を直しながら話しだす。
女性「外で待ってた人、めっちゃかっこよくなかった?」
女性「かっこいいっていうか、美しいって感じした。どっかのモデルかと思ったわ」
会話を聞きながら、亜仙のことを言っていると気付くほのり。
ほのり(多分、亜仙さんのことだよね?)
女性「でもさ、そこで待ってるって事は、彼女待ちとかだよね」
女性「だね。あの見た目なら彼女いるでしょ。だけど、あんなイケメンの隣歩くの勇気いるー」
女性「分かる。ま、どうせ彼女も美人なんでしょ」
鏡に映る自分を見るほのり
ほのり「…。」
(前に越智さんは、お似合いって言ってくれたけど、私は見た目も立場も亜仙さんに似合う人間じゃない…)
出てきたほのりに気付き、亜仙が笑顔を見せる。
ほのり「お待たせしました」元気ない感じ
亜仙「どうかした?」
ほのり「え」
亜仙「考えごとしてる顔しとったから」
ほのり「いえ、大丈夫です」
亜仙「そっか」
イルカショーを楽しむ2人。
亜仙はほのりの手をずっと握ってる。
水族館から出た2人。
亜仙「そろそろ戌井たちと合流して、次の場所行くか」
亜仙のスマホ鳴る
亜仙「…あ、ちょうど戌井から電話。…もしもし。…え……あぁ、分かった。ほのりと茶子は先に移動させておく方がええな。…うん、了解…後で」
ほのり(何かあったのかな?)
亜仙「ほのり、申し訳ないんじゃけど、仕事で急用ができたから、俺と戌井は後から向かう。ほのりは、茶子と新幹線で先に向かっといてくれるか?」
ほのり「あ、はい」
亜仙「ごめんな」
○ホテル
タクシーで着いた亜仙を戌井が出迎える。
戌井「ロビーで、支配人や江口さんが対応してくれています」
亜仙「アポ無しで来るとか…何考えてんだ、あの人は」困惑?呆れてる感じ?
○ホテル、ロビーのソファ
ホテルのスタッフや自分の付き人たちに囲まれ、スーツ姿の狸原が座っている。まだ顔見えない。
亜仙「狸原会長、ご無沙汰しております」
狸原「おぉ、亜仙君!久しいねぇ。元気にしてたかい?」
恰幅の良い体型、顔も丸くて大きい。優しそうなおじさんだが、裏のありそうな雰囲気。
亜仙「お陰様で、元気にやっています」
狸原「そうかそうか。昼間、駅近くに新規オープンする店でパーティーをしててね、帰る前に寄らせてもらったんだよ。まさか、亜仙君がいるとは思わなかったがねぇ。…私服ということは、今日はお休みだったかな?悪いね、わざわざ顔を出してもらって」
亜仙「いえ、久しぶりに近くを観光をしていただけなので、お気になさらないでください」
亜仙の顔をじっと見る狸原。
狸原「…やはり、君が一番お母様に似ているね」
亜仙「…ありがとうございます」
静かに見守る戌井。
狸原「さて、素敵なホテルに泊まりたいのは山々なんだが、こう見えて忙しいもんで、今日のうちに飛行機で戻らなきゃいけないんだ。また今度ゆっくり来させてもらうよ」
亜仙「宿泊される際は、ぜひご一報ください。誠心誠意おもてなしさせていただきますので」
狸原「はははっ、それは楽しみだねぇ」
○ホテルの入り口、外
狸原を見送る亜仙やスタッフ一同。
狸原の車見えなくなる。
亜仙「支配人、江口さん、そして皆さん。会長のご対応ありがとうございました」
支配人「亜仙様こそ、わざわざ戻って来てくださりありがとうございました」
亜仙「当分来ないとは思いますが、何かあれば随時報告をお願いします」
支配人「かしこまりました」
○車内
ほのり達の後を追うため、車に乗り込んだ亜仙と戌井。
運転席戌井、助手席亜仙
戌井「会長の件、お母様に報告されますか?」
亜仙「んー、わざわざ報告せんでも把握するだろうし、大丈夫じゃろ」
戌井「そうですか」
○京都にある大きな屋敷
九尾の狐である亜仙の母親が住んでいる。
縁側で庭園を眺める着物を着た母の後ろ姿。顔は見えない。スーツ姿の烏藤が声をかける。
烏藤「麗妃様、お時間よろしいでしょうか?」
麗妃「狸原のことか?」後ろ姿のまま
烏藤「はい」
麗妃「連絡もなしに、のこのこと行ったことは知っておる。無駄に鼻の利く男じゃ、亜仙が来ていることを分かっておったんじゃろ」
烏藤「先月は世城様の元へ突然現れました。…何か企んでいるんでしょうか」
麗妃「あの化け狸は、すぐ調子に乗るからのぉ」美人だと分かる口元のみ。口角上がってる。



