○卒業後の翌日。朝
カーテンの隙間から朝日が差し込み、ベッドで眠るほのりがゆっくりと目を開ける。
ほのり(…ん?朝…?)
時計を確認するほのり。自分が制服を着たままなことに気付く。
ほのり(あ、確か昨日、亜仙さんと話してて…夕飯を食べる前に寝ちゃったんだ)
○リビング
戌井と女性が朝食の準備をしている。後ろ姿。
ほのり「…おはようございます」
戌井「あ、ほのり様。おはようございます。ゆっくり眠れましたか?」
ほのり「はい。すみません、夜ご飯をいただく前に寝てしまって…」
戌井「いえ、疲れてるだろうから寝かせておくようにと亜仙様が仰ったので」
ほのり「そうなんですね」
戌井の後ろから茶子がひょこっと顔を出す。可愛らしいが、しっかりしてる雰囲気。着物に割烹着姿。
茶子「ほのり様、おはようございます!お初にお目にかかります、この家で家政婦をさせて頂いている戌井 茶子と申します」
ほのり「柏木 ほのりです。よろしくお願いします。戌井って…」
戌井「はい、茶子は私の妹です」
ほのり(よく見ると似てる。兄妹かぁ…)
茶子「ほのり様、もう少しお時間かかりますので、先にお風呂へ入ってきてください。脱衣所に着替えも用意しております」
ほのり「ありがとうございます」
茶子「我が家のお風呂は、温泉を引いていますので、お肌ツルツルになりますよ」
ほのり「温泉?」
戌井「えぇ。昨日お伝え出来なかった離れには、露天風呂もございます」
ほのり(そっか、ここは温泉街だから。…そういえば私、温泉行った事ないな)
○リビング
風呂から出たほのりがリビングに戻る。ダイニングテーブルに亜仙が座っている。
亜仙「ほのり、おはよう!」
ほのり「おはようございます。…茶子さん、お風呂ありがとうございました。すごく気持ちよかったです」
茶子「それは良かったです。では、朝ご飯にしましょう。亜仙様の向かいの席でよかったですか?隣の方が良ければおっしゃってください」
ほのり「あ、ここで大丈夫です」
ほのりが亜仙の向かいに座る。茶子はほのりの隣、戌井は亜仙の隣。茶子割烹着脱いでる。
ほのり(あ、みんなで食べるんだ)
亜仙「いただきます!」
戌井、茶子「いただきます」
ほのり「…いただきます」
ほのり味噌汁を飲む。
ほのり「…美味しい!」
茶子「ほんとですか!お口に合って良かったです。ほのり様は、苦手な食材などはありますか?」
ほのり「いえ、何でも食べられます。あっ、オクラは少し苦手です」
茶子「かしこまりました!」
○亜仙の部屋
朝食を食べ終え、亜仙はほのりを自分の部屋へ連れて行った。
亜仙「これ、卒業祝い」
ほのりの手にスマホが渡された。
ほのり「え…」
亜仙「俺の名義で契約しとるから、気にせず使って」
ほのり「いや…受け取れません」
亜仙「俺が持っててほしいの。俺や戌井の番号はもう登録してるから。…遠慮なく受け取って」笑顔
ほのり「…ありがとうございます」頭を下げる
ほのりの頭を優しくポンポンした亜仙。
亜仙「よしっ、デート行くか!」無邪気な笑顔
ほのり(デート…?)
○リビング
亜仙「お待たせ!」
リビングで待っていたほのりの元へ来た亜仙は、いつもの和装姿と違い、若者らしい洋服姿。初めて見る姿にほのりは、思わずドキッとしてしまう。
屋敷の横にあるガレージに行き、数台並んだ中から青色の車の側に立った亜仙。
亜仙「どーぞ」
助手席のドアを開け、ほのりを座らせる。
○農園
着いたのはフルーツ狩りが楽しめる農園。
亜仙「いちご狩りしたことある?」
ほのり「いえ、ないです」
亜仙「初体験か!じゃあ、絶対楽しいわ!」
上機嫌な亜仙の後ろを歩くほのりは、控えめにワクワクしている。
○農園内にある販売所
スタッフ「あ、亜仙さん。お疲れ様です」
亜仙「お疲れ様!」
受付の女性はほのりに気付き、笑顔で会釈
亜仙「ほのり、練乳いる?俺的には、そのままでも十分甘くて美味いから、無くていいと思うけど」
ほのり「無くて大丈夫です」
亜仙「おっけー。じゃあ、早速行くか」
○ハウス内
カップを持った2人
亜仙「ここは6種類の苺が食べ比べできるけん、最初にひと通り食べて、その後気に入ったやつを好きなだけ食べるのがおすすめ!」
ほのり「6種類…違い分かるかな」
亜仙「ぜんっぜん違うから。甘味も食感も」
いちご狩りを楽しむ2人。
ほのり「ほんとだ!さっき食べたのと全然違う!」
苺を頬張るほのりは、品種の違いに感動している。
亜仙「じゃろ?」
ほのりの反応を見て、嬉しそうに口角を上げた。
いちご狩りを楽しんだ2人は、別の場所へやって来た。
○足湯スポット
車から降りたほのりは、温泉?と呟く。
亜仙「無料で足湯ができるんよ、ここは」
ズボンの裾を捲り上げる亜仙。
亜仙「ふぅー、気持ちー」
湯に足をつけた亜仙の横で、裸足になったほのり。座った際に白のスカートが汚れないか心配をしている。
その様子に気付いた亜仙が、ほのりの腕を引き寄せ、自分の片膝の上に座らせる。
ほのり「…っ!?」
亜仙の股の間から足を下ろす状態。突然の密着に混乱しているほのり
亜仙「ちゃんと足浸かっとる?」
ほのり「…はい…」頬染まる
足湯しながら
亜仙「あのさ、ほのりさえ良かったら、明日から旅館で働いてみない?」
ほのり「旅館で?」
亜仙「うん。もちろん、ゆっくりしたかったら家でのんびりしてくれてもええし」
ほのり「いえ、働きたいです!家の事は茶子さんがしてくれてるので、私も何か役に立ちたいです」
亜仙「ありがと。人手不足じゃから助かる」
ほのり「亜仙さんも普段、旅館で働いているんですか?」
亜仙「俺はこのエリアだけじゃなくて、他の市や県のホテル、旅館やゲストハウスを全部管轄しとるから、その日によって居る場所が違うんよ」
ほのり「そうなんですね」
○帰りの車内
ほのり(男の人とデートをするのは、初めてだった)
運転する亜仙の横顔。
ほのり(2人きりでも、亜仙さんの話しやすさのおかげで緊張せず過ごせた。だけど、ちょっぴりドキドキしてる自分がずっといる)
○夜、屋敷の廊下
部屋から出てほのりが、亜仙を呼び止める。
ほのり「あのっ、亜仙さん…」パジャマ姿
亜仙「ん、どした?」寝る用の浴衣姿
ほのり「今日…すごく楽しかったです。いちご狩りも、足湯も、ドライブも全部初めてで…忘れられない1日になりました。連れて行ってくれてありがとうございました!…おやすみなさい」
亜仙「うん、おやすみ…」
恥ずかしそうに部屋へ入っていったほのり。
手で口元を隠した亜仙
亜仙「…やば」ぼそっと呟く。



