マンガシナリオ『九尾の息子は、生涯孤独の彼女を優しく甘やかす』


前話の続き
○京都の病院、特別個室
危篤状態の父親のために麗妃、亜仙たち兄弟と側近、ほのりが集まっている。
狸原「どうする?亜仙君」

ほのり(お父さんの命と引き換えに、亜仙さんが特別な寿命を失う…。そんなこと…)
亜仙「狸原会長、そのお話信じてよろしいのでしょうか?」
狸原「あぁ、いいとも」
麗妃「亜仙、馬鹿な話に乗るな。その貴重な力を犠牲にする必要はどこにもない」
千畝「そうよ」
亜仙「…お母様、せっかくいただいた力を手放すことお許し下さい。この力でお父様が助かるならそれは本望です。それに、お母様がお父様と生きていきたいと思ったように、私もほのりと生涯を共にしたいと思っています。人間の命の短さ、儚さは十分理解しております。限られているからこそ、1分1秒を大切に生きられる。大事な人のために生きられる。どちらが先に命尽きるかは分かりませんが、ほのりのいない世界で何百年も生きるよりも、空の上で再会し、愛し合いたい。…なので、不老不死を犠牲にすることに何の迷いもござません」
ほのり(亜仙さん…)
狸原「立派なご子息だ。…麗妃殿、いかがなされますか?」
麗妃「…一刻を争う時じゃ、亜仙の意思を尊重するしかなかろう。…亜仙、本当によいのじゃな?」
亜仙「はい」

狸原「さて、始めようかね。亜仙君、妖狐の姿になれるかい?」
亜仙「はい、尻尾が1本でいいのなら」
狸原「それで十分だよ。妖狐の姿になったら、身体の中にある不老不死の力を感じるはずだ。その力を外に出すイメージを頭の中ですると、解き放たれた力がお父上の身体に取り込まれる。全て出し切るまで、決して集中を途切れさせてはいけないよ。分かったかい?」
亜仙「やってみます」

目を閉じる亜仙。
白いモヤ
妖狐になった亜仙の姿。神々しい姿に麗妃以外、圧倒される。
ほのり(これが、妖狐の亜仙さん…)
数秒後、妖狐の周りに青白い光が広がり始める。
青白い光はどんどん増え、父親の身体を包み込む。
見守る麗妃たち。

妖狐を包む光が無くなり、父親の身体の周りも光が消えた。
妖狐がその場にゆっくり横たわる。
駆け寄るほのりと戌井。
ほのり「亜仙さんっ…!」
静かに人間の姿に戻るが、まだ意識を失っている。
狸原「力を一気に使い、気絶してるのでしょう。ソファで休ませてあげておくれ、お嬢さん」
ほのり「はい」
亜仙をソファに運ぶ戌井と牛塚。
寝転ぶ亜仙に寄り添うほのり。

狸原「さて、そろそろかな…」
ベッドを見る。
父親が薄っすら目を開き、心電図に変化が起こる。
千畝「誰か、担当医を呼んで!」
顔を近づける麗妃。
父親「…れい…ひ…」
麗妃「そうじゃ、わしじゃ…。長い間、1人にしおって…」涙流しながら

○病院の外
1人で去って行く狸原の後ろ姿。
亜仙「狸原会長!」声のみ
振り返る。
亜仙、ほのり、戌井がいる。
狸原「お、元気になったかな」
亜仙「この度は、本当にありがとうございました」お辞儀
狸原「僕は何も。頑張ったのは君だよ」
亜仙「狸原会長の助言がなければ、父は一生目覚めることはありませんでした。お力添え感謝いたします」
狸原「礼などいらないさ。あ、そうだ。僕はまだ君を養子にすることを諦めていないからね?不老不死の力を持つのも魅力だったが、純粋に君の仕事ぶりを評価しているんだよ。それに、いつか生まれる君たちの子供が、大きな力を秘めているかもしれないからね。じゃあ、今日はお暇するよ」
3人が頭を下げ、狸原を見送る。

病室に戻ろうとする。
戌井「亜仙様」立ち止まる
亜仙「ん?」
戌井「…本当によかったんですか?亜仙様は、何千年も生きるにふさわしい人です…」
亜仙「んー、父を助けれるのが俺だけなら俺がするだけの話だし、ほのりと同じように生きられるなら満足。それにさっきは言えんかったけど、何百年生きてもお前や茶子が側にいないなら仕事する気にもならんし、楽しくないけんな!」笑顔
戌井「…っ」嬉しそうに頬染まる
2人の関係に微笑むほのり


ほのり(あれから数ヶ月、亜仙さんのお父さんは10年眠っていたのが嘘のように、元気を取り戻し、お母さんと仲良く暮らしている)
麗妃と父親がラブラブに暮らすシーン。

ほのり(そして、不老不死の力を失った亜仙さんは身体に大きな変化もなく、今までと変わらない生活を送っている。しかし、生き物に化ける力は残っているため、時折あーくんになることも)
仕事する亜仙と戌井のシーンや、あーくんになってほのりに甘えるシーン。


○秋、午前中
去年の秋にほのりが花嫁姿の亜仙を見た神社で、神前式が執り行われる日。
戌井、茶子の他に、葉月、ほのりが暮らしていた養護施設の職員や子供も参列する。

○新郎新婦控室
亜仙「ほのり、綺麗だよ」
亜仙は紋付き、ほのりは洋髪に綿帽子の白無垢姿。
ほのり「ありがとうございます」微笑み

社殿に向かう花嫁行列の図。神主、巫女、亜仙とほのり、戌井、茶子、葉月、職員たち。戌井はスーツ、茶子は振袖。

ほのり(誰もいても、何処にいても、ずっとずっと孤独だった)

三々九度のシーン。
凛としてかっこいい亜仙の横顔と大人っぽく綺麗なほのりの横顔。

ほのり(そんな私を家族にしてくれ、自分の命まで削ってくれた亜仙さん)

穏やかな表情で2人を見る戌井と茶子。葉月はハンカチで涙拭う。

指輪交換のシーン。
交換した後に見つめ合い、微笑む2人の横顔アップめ。

ほのり(あなたへの愛と感謝は、この命が尽きるまで終わることはない。どうか、1番近くで生きさせてください)


数年後
○屋敷、夜
亜仙とほのりの子(幼児)である男女の双子が、風呂上がりに廊下を走る。
その後ろをバスタオルを持ったほのりと茶子が追いかける。
茶子「白亜様、黒曜様、お待ちくださいー!」
ほのり「乾かさないと風邪引くから!」
玄関まで逃げる、ちょうど亜仙と戌井が帰った
黒曜「あ!おとうさまだ!」
白亜「おとうさま、おかえりなさい!」
嬉しそうに亜仙に飛びつく2人。
亜仙「ただいま!2人とも、まだ髪が濡れとるじゃん。ちゃんと乾かしておいで」
白亜「はぁーい!かわかしたらあそんでね!」
黒曜「いぬいもいっしょにあそぶんだよ!」
亜仙「うん、約束」
戌井「かしこまりました」
茶子、戌井と中へ行く子供たち。
ほのり「亜仙さん、おかえりなさいませ」
亜仙「ただいま」
おかえりのキス。幸せそうな2人の表情。