○ゴールデンウィーク、昼
亜仙の屋敷を見ながら、ぽかんと口を開けて驚く葉月の顔。
葉月「…。」
ほのり「玄関こっち…」
葉月「いやいやいや。どゆこと!?え、何でこんなお屋敷住んどるん!?」歩き進みながら
ほのり「えっと、それは…」
亜仙「いらっしゃい」
亜仙が玄関前で出迎える。
葉月「え、この人……あ!!前に学校に来た!?」
○リビング
葉月「…婚約?…結婚?」
亜仙「そう!葉月ちゃんの大事なほのりを俺が一生守っていくから安心して。まだ入籍日や式の日取りは決めてないんじゃけどな」
ほのり「…びっくりさせてごめん。電話よりも直接話したほうがいいと思って…」
葉月「びっくりっていうか、まだ脳まで理解が追いついてない」
ほのり(だよね…)
葉月「だけど、ほのりが幸せそうで安心した」
ほのり「え」
葉月「ほのりはいつも、我慢ばっかしとったから。どこか気の張った表情をして、不安を抱えてる感じだったでしょ?だからさっき、ほのりが亜仙さんと話してるのを見て、心からの笑顔で本当に安心した」
ほのり「葉月…」
葉月「亜仙さん。…ほのりのことよろしくお願いします」頭下げる
亜仙「うん、任せて。誰よりも幸せにするけん」
○夜、ほのりの部屋
ほのりはベッド、葉月は隣に敷布団
葉月「ほのりとお泊まりなんて、修学旅行以来じゃない?」
ほのり「ほんとだ。…嬉しい」
葉月「同じく。…亜仙さん、本当に良い人だね。イケメンじゃし」
ほのり「うん、すごく優しくて…かっこいいんよ」頬染まる
葉月「ほのりのそんな顔初めて見た。いいなぁ、あんなイケメンとイチャイチャし放題なんて」
ほのり「いっ…!?…イチャイチャなんて、別にしないけど…」
葉月「ほんまにー?」
ほのり「しません。ほら、もう電気消すよ」
葉月「あー、はぐらかしたぁ。…おやすみー」
ほのり「おやすみ」
○翌日
葉月の車でカフェや足湯に行き、楽しむほのりと葉月のシーン。
夕方、屋敷前で降ろしてもらったほのり。
ほのり「送ってくれてありがとう」
葉月「ううん。久々に遊べて楽しかった。夏休みは、ウチに遊びに来てよ」
ほのり「うん、絶対行く。じゃあ、気をつけて帰って」
葉月「また着いたら連絡するわ。じゃあね」
ほのり「またね」
葉月の車が見えなくなったタイミングで、亜仙を乗せた車が帰ってくる。
車が止まり、亜仙だけ降りてくる。
ほのり「おかえりなさい」
亜仙「ただいま。葉月ちゃん、帰ったん?」
ほのり「はい、さっき帰っていったところです」
亜仙「そっか。どんな楽しい時間を過ごしたか、夕飯の時教えて」
ほのり「はい」
数日後、仕事終わりのほのりを戌井が迎えに来た。
○帰りの車内
ほのりは後部座席。
戌井「運転しながらで申し訳ないのですが、亜仙様のご家族について説明させていただきますね」
ほのり「はい」
(亜仙さんと約束した通り、今月末に行われるご家族の集まりに参加することになった。普通の家庭とは異なる事実を抱えるため、事前にご家族の情報を教えてもらう)
戌井「ご兄弟はそれぞれ、お母様が権力を持たれていた様々な業界を引き継いでいます。…普段東海地方に住んでおられるご長男の義乱様は、国内の製造業経営を全て担っている方です」
ほのり(ぎらんさん…製造業…)
戌井「お堅い方で、笑顔もほぼ無いですが、悪い人ではありませんので。義乱様の付き人は物腰の柔らかい、鮎川さんという女性です」
ほのり(真面目な人なのかな)
戌井「ご長女の千畝様は、医療関連を統括されており、ご自身も医師免許をお持ちです。いつもは九州に住んでいらっしゃって、さっぱりとした男勝りな性格の方ですね。秘書の鷹野さんは、天然の可愛さを持った仕事の出来る男性です」
ほのり(お姉さんお医者さんなんだ)
戌井「関東在住の次女の葎花様は、芸能関係に携わっております。たまに葎花様も人前に立つ事もありますが、基本的には裏方で様々な芸能人をサポートされています。秘書は兎田さんという女性で、クールでしっかりされた方です」
ほのり(芸能界にまで…)
戌井「最後に、末っ子の世城様」
ほのり(…あ、江口さんの言ってた)
戌井「東北地方にお住まいの世城様は、不動産業を担当されていて、穏やかで優しい方です。現在20歳なので、ほのり様と年齢も近く、話しやすいと思います。付き人の牛塚さんは、見た目はコワモテですが、面倒見の良い、包容力のある方なので安心してください」
ほのり(二十歳…若いのに凄いなぁ)
戌井「ここまでで何か質問はありますか?」
ほのり「えっと、ご兄弟の方も亜仙と同じように半妖怪…なんですよね?」
戌井「はい、そうです。皆さん、亜仙様のように耳と尻尾が生えた姿になれます」
ほのり「なるほど。あ、前に亜仙さんがご兄弟と会うのは年に数回と言っていたんですが、皆さん仲は良いんですか?」
戌井「悪くはないと思いますよ。ただ、普通のご家庭のような仲の良さではないですかね」
ほのり(…?)
戌井「最後に九尾の狐であり、母親である麗妃様についてお伝えします。麗妃様は長い年月をかけ、ご兄弟が引き続いだ以外にも様々な業界の地位と実権を握られています。麗妃様には、沢山の付き人や秘書の方がいますが、烏藤さんと鯨瀬さんというベテランのお二方がいつも側におられます。麗妃様に伝えたいことがある場合、亜仙様たちご兄弟以外の方は、烏藤さんか鯨瀬さんを通すのが暗黙の了解です。私も亜仙様のいない場で麗妃様と直接会話したことはありません」
ほのり(別格なんだ…。怖い人なのかな…?)
戌井「ひと通りの説明は以上です」
ほのり「あの…亜仙さんのお父さんも京都に住んでるんですか?」
戌井「…お父様については、後日説明させていただきます」
ほのり「あ、わかりました」
(何か特別な事情があるのかな…)
5月末
○京都、麗妃の住む屋敷、午前中
時差で兄弟たちが次々とやって来る。亜仙たち以外、口元から下や後ろ姿で顔が見えないように。
千畝「きゃーなえたわぁ」
鷹野「寝不足のまま移動になってしまいましたからね」
葎花「みんなお土産喜んでくれるかなぁ!」
兎田「皆様のお口に合うよう厳選しましたので、大丈夫でしょう」
鮎川「あ、工場長から電話。さっきの件ですかねぇ」
義乱「だろうな。待っておくから、ちゃっと電話してきなさい」
世城「兄様、姉様たちに会えるの楽しみだっちゃ」
牛塚「皆様、お元気だといいですね」
亜仙「明日、茶子にお土産買って帰るか」
戌井「喜ぶと思います」
ほのり(ここが亜仙さんの実家…)
鯨瀬「麗妃様、全員ご到着されました」
麗妃「わかった。…今年は、濃い時間になりそうじゃのう」



