純白の殺人

雪は、すべてを隠す。
血の色さえ、静かに、優しく。

東京郊外にある高級住宅街「白鷺ヶ丘」。冬の朝、豪奢な邸宅の庭で、ひとりの女性の遺体が発見された。
彼女の名は白石玲奈。表向きは慈善家であり、地元でも名士とされていたが、その裏には誰も知らない“純白の仮面”があった。

警視庁捜査一課の刑事・黒川直樹は、吹きすさぶ雪の中、白石邸に足を踏み入れる。
ドアを開けた瞬間、彼の鼻をかすめたのは、冷えきった空気と、微かに残る香水の残り香。
床に広がる血の跡は、すでに乾き、真っ白なカーペットの上で暗黒の染みとなっていた。

「おかしいな……」黒川は小さく呟いた。
彼女の口元は、かすかに笑っていた。
死者が笑う理由。それは、死の直前に“解放”された者だけが持つ表情だ。