「どうして、なかったことにするんだ」 低くかすれた声が落ちる。 「……おまえも、俺を、おいていくのか」 首を何度も振って返す。 「……なら、そばにいろよ……」 両手の平に、冷えた頬が包まれる。 「……でも僕は、あなたがそうだったように、思いも伝わらないまま、ただそばにいることなんて、できない……」 先輩の言う『そばに……』の意味が、子弟(してい)のようであれば、自らの気持ちを告げてしまった今となっては、もう共にはいられないと感じた。