久しく乗っていなかった新幹線に乗るべく、駅へ向かった。切符を買い、改札を通り、プラットホームへと進む。平日ということもあり、人はそこまで多くなかったのだけど、出来ていた列に僕は並んだ。幾つか列があって、遠くにも列が見える。先頭にいる女性がスマホを右手に持ち、腕を組みながら画面を凝視している。後ろにいる男性も、その後ろにいる男性も。僕の後ろにも列が出来てきた。スマホを握りしめている女性がいる。待ち時間が暇で見ているのだろうけど、なんだか現代って感じ、そう思った。
列が出来始めて、行き交う人が通る道も少なくなっていく。黄色い線を跨いで、右から左へと行く人が増えた。何食わぬ顔で進んでいく人らを見ながら、僕はまた遠くの列に視線を戻した。相変わらず、先頭にいる女性はスマホを凝視していて、時に笑っていて何だか面白そう。例えば、あの女性を後ろの男性が押したのなら。きっと線路上に落ちてしまう。けど、押されないだろうと思って、あの女性はスマホを凝視している。後ろの男性も、その後ろの男性も。いつどこで、押されるかだなんて分からないのに。
僕は先頭に並ぶとき、足に力を入れてしまう癖がある。押されることはないだろうけど、押されても落ちないために。遠くの列の元へ、新幹線が迎えに来た。結果的に誰も落ちなかったけど、それは運命だったわけで、落ちる運命だってある。僕の元へも新幹線が来て、雪崩れ込むようにして乗った。1番後ろの席に座り、席を倒す。少し前のほうで、「倒してもいいですか」と後ろの人に配慮をしているサラリーマンがいて、それがまたさりげない気遣いみたいで格好良かった。その人は颯爽とパソコンを開いた。
所謂、やりらふぃーみたいな男女も乗り込んできた。僕の前の席に座り、ドンと音が鳴るほどの勢いで席が倒れてくる。掛けていた鞄が床に落ち、それでまたドンと音が鳴った。「ん、何か落ちたか?」と前に座る男性は話しているけれど、落ちたのは僕の鞄。「気のせいでしょ」と女性は言い、「楽しみだね、福岡はどんな観光スポットがあるんだろう」と続けた。腹が立ったと言えば単純な話だけど、こういう人と共存しているのも事実なわけで、文句を言わないで僕はイヤホンを耳に着けた。怒らない怒らないっと。
眠気を感じ、目を閉じるとすぐに眠ってしまった。それから目を覚ます頃にはもう、目的地の目前となっていて、イヤホンを外した。「お前が行きたいって言ったんだろ」と男性の声。「そんなに怒らないでよ」と女性の声。前に座る男女が喧嘩をしていて、少しだけ面白くなってきた。僕の隣に座っている人の口角は上がっていて、その隣にいる老夫婦は心配そうに見つめている。福岡に着いた。降りるために並んでいた人らの列を崩すようにして、その男女は喧嘩をしたまま降りて行った。僕は隣の人に「すみません」と言いながら降りて、福岡に着いた。遠くではまだ喧嘩の声が聞こえてきて、隣を歩いていたサラリーマンがふっと鼻で笑っていた。この人もこういう場面は面白がるんだと思い、少しだけ親近感が湧く。
誰も、他人のことは押さなかったけど。怒鳴り合う男女を笑う人らがプラットホーム中にいた。
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列が出来始めて、行き交う人が通る道も少なくなっていく。黄色い線を跨いで、右から左へと行く人が増えた。何食わぬ顔で進んでいく人らを見ながら、僕はまた遠くの列に視線を戻した。相変わらず、先頭にいる女性はスマホを凝視していて、時に笑っていて何だか面白そう。例えば、あの女性を後ろの男性が押したのなら。きっと線路上に落ちてしまう。けど、押されないだろうと思って、あの女性はスマホを凝視している。後ろの男性も、その後ろの男性も。いつどこで、押されるかだなんて分からないのに。
僕は先頭に並ぶとき、足に力を入れてしまう癖がある。押されることはないだろうけど、押されても落ちないために。遠くの列の元へ、新幹線が迎えに来た。結果的に誰も落ちなかったけど、それは運命だったわけで、落ちる運命だってある。僕の元へも新幹線が来て、雪崩れ込むようにして乗った。1番後ろの席に座り、席を倒す。少し前のほうで、「倒してもいいですか」と後ろの人に配慮をしているサラリーマンがいて、それがまたさりげない気遣いみたいで格好良かった。その人は颯爽とパソコンを開いた。
所謂、やりらふぃーみたいな男女も乗り込んできた。僕の前の席に座り、ドンと音が鳴るほどの勢いで席が倒れてくる。掛けていた鞄が床に落ち、それでまたドンと音が鳴った。「ん、何か落ちたか?」と前に座る男性は話しているけれど、落ちたのは僕の鞄。「気のせいでしょ」と女性は言い、「楽しみだね、福岡はどんな観光スポットがあるんだろう」と続けた。腹が立ったと言えば単純な話だけど、こういう人と共存しているのも事実なわけで、文句を言わないで僕はイヤホンを耳に着けた。怒らない怒らないっと。
眠気を感じ、目を閉じるとすぐに眠ってしまった。それから目を覚ます頃にはもう、目的地の目前となっていて、イヤホンを外した。「お前が行きたいって言ったんだろ」と男性の声。「そんなに怒らないでよ」と女性の声。前に座る男女が喧嘩をしていて、少しだけ面白くなってきた。僕の隣に座っている人の口角は上がっていて、その隣にいる老夫婦は心配そうに見つめている。福岡に着いた。降りるために並んでいた人らの列を崩すようにして、その男女は喧嘩をしたまま降りて行った。僕は隣の人に「すみません」と言いながら降りて、福岡に着いた。遠くではまだ喧嘩の声が聞こえてきて、隣を歩いていたサラリーマンがふっと鼻で笑っていた。この人もこういう場面は面白がるんだと思い、少しだけ親近感が湧く。
誰も、他人のことは押さなかったけど。怒鳴り合う男女を笑う人らがプラットホーム中にいた。
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