恋に落ちる夢を見た。隣を女の子が歩いていて、僕もその子も制服を着ていて、下校中だとすぐに分かる。僕の心はドクドクとしていて、女の子がこちらを見てくるたびに顔を逸らしてしまった。信号は赤。立ち止まって話をして、遠くを走っている猫に指をさす。「あの猫、どこに行くんだろうね」と女の子は楽しそうに話していて、「そうだね、どこに行くんだろう」と答えた。青になり、横断歩道を渡る。季節は春から夏へと移り変わっていき、僕もその子も制服が夏服へと変わった。
歩いている道には緑が増えていって、蝉の鳴き声が聞こえてくる。今思えば、汗をかいていない時点で夢だと気付ければよかった。けど、隣を歩いている女の子が夢だと気付かせてはくれない。「私さ、好きな人がいるの」と、少し長い階段を下りているとき、女の子は言った。振り返るとその子は立ち止まっていて、太陽が眩しくて、僕は視線を落とした。「あ、悲しくなった?私に好きな人がいるって知って」と意地悪をしてくる。「別に」と強がって、僕は振り返ってそのまま階段を下りきった。
「待ってよ」と女の子が階段を下りてくる音が背後から聞こえてくる。「にゃー」と鳴き声も聞こえてきて、振り返るとそこには黒猫がいた。「あれ、さっきの猫じゃん」と追いついた女の子が言ってくる。「どうしたんだろう、野良猫なのかな」と僕は言ったけど、構ってあげるほどの優しさはなくて、猫から離れるようにして歩き出した。「大丈夫かな、あの猫」と女の子が心配している。気付くと季節は秋になっていた。あんなに美しかった緑が、いつのまにか紅葉色になってしまった。制服が中間服へと変わった。
線路を隔てて向こう側に女の子の家があって、こちら側に僕の家がある。踏切を渡っていくその子を眺めながら、「好きだな」と恋焦がれていると。女の子は振り返って、「私じゃない人を好きになってよ」と笑いながら言ってきた。踏切警報機が鳴る。僕と女の子を結ばせないと言わんばかりに、間に棒が割り込んできた。遠くからガタンガタンと電車が近付いてくる。「さっきさ、好きな人がいるって言ったじゃん?」と女の子は言う。「君のことじゃないからね」と続けられるそれに合わさるようにして、電車が目の前を通り過ぎた。
電車が通り過ぎると季節は冬。女の子に雪が降り注いでいた。頭に乗っかったそれを払いたくて、踏切へと立ち入ろうとするけど。「もう帰るね」と女の子は行ってしまった。後ろからまた猫の鳴き声が聞こえる。振り返ると黒猫がいて、僕は座り込んで黒猫を撫でた。また踏切警報機が鳴る。黒猫を抱きかかえて、踏切から離れた。あ、黒猫が腕の隙間からするりと抜けた。僕の足元をぐるぐると回り続けるこいつが堪らなく可愛い。未だ、カンカンカンと警報音が鳴り響いている。ベッドで目覚めた。近所の踏切警報機が煩い。黒猫なんてどこにもいないのに、あの温度を僕は覚えている。
--
歩いている道には緑が増えていって、蝉の鳴き声が聞こえてくる。今思えば、汗をかいていない時点で夢だと気付ければよかった。けど、隣を歩いている女の子が夢だと気付かせてはくれない。「私さ、好きな人がいるの」と、少し長い階段を下りているとき、女の子は言った。振り返るとその子は立ち止まっていて、太陽が眩しくて、僕は視線を落とした。「あ、悲しくなった?私に好きな人がいるって知って」と意地悪をしてくる。「別に」と強がって、僕は振り返ってそのまま階段を下りきった。
「待ってよ」と女の子が階段を下りてくる音が背後から聞こえてくる。「にゃー」と鳴き声も聞こえてきて、振り返るとそこには黒猫がいた。「あれ、さっきの猫じゃん」と追いついた女の子が言ってくる。「どうしたんだろう、野良猫なのかな」と僕は言ったけど、構ってあげるほどの優しさはなくて、猫から離れるようにして歩き出した。「大丈夫かな、あの猫」と女の子が心配している。気付くと季節は秋になっていた。あんなに美しかった緑が、いつのまにか紅葉色になってしまった。制服が中間服へと変わった。
線路を隔てて向こう側に女の子の家があって、こちら側に僕の家がある。踏切を渡っていくその子を眺めながら、「好きだな」と恋焦がれていると。女の子は振り返って、「私じゃない人を好きになってよ」と笑いながら言ってきた。踏切警報機が鳴る。僕と女の子を結ばせないと言わんばかりに、間に棒が割り込んできた。遠くからガタンガタンと電車が近付いてくる。「さっきさ、好きな人がいるって言ったじゃん?」と女の子は言う。「君のことじゃないからね」と続けられるそれに合わさるようにして、電車が目の前を通り過ぎた。
電車が通り過ぎると季節は冬。女の子に雪が降り注いでいた。頭に乗っかったそれを払いたくて、踏切へと立ち入ろうとするけど。「もう帰るね」と女の子は行ってしまった。後ろからまた猫の鳴き声が聞こえる。振り返ると黒猫がいて、僕は座り込んで黒猫を撫でた。また踏切警報機が鳴る。黒猫を抱きかかえて、踏切から離れた。あ、黒猫が腕の隙間からするりと抜けた。僕の足元をぐるぐると回り続けるこいつが堪らなく可愛い。未だ、カンカンカンと警報音が鳴り響いている。ベッドで目覚めた。近所の踏切警報機が煩い。黒猫なんてどこにもいないのに、あの温度を僕は覚えている。
--



