淡い光が瞼を透かし、水中の泡のように意識が浮かび上がる。
澄乃は小さな吐息を洩らしながら寝返りを打った。
まだ朦朧としたまま、すぐ側のぬくもりに鼻先を擦りつける。もうひとつ満ち足りた溜め息をつくと、意識が少し鮮明になった。
からりとした陽射しを思わせる匂いに、かすかな石鹸の香りが入り交じる。
ふと、奇妙な違和感を覚え、澄乃は思わず目を見開いた。
「おはようございます」
頭上から、わずかにかすれた静かな声が降って来る。硬直した澄乃がおそるおそる目を上げると、微笑みながら朔也が見下ろしていた。
「──!」
とたんに昨夜の記憶が蘇り、燃えるように顔が熱くなった。澄乃は慌てて背を向け、身体を丸めるようにしてぎゅっと目を閉じた。
頬の熱が耳まで駆け上り、今にも火を噴きそうだ。心臓までめちゃくちゃに乱打している。
羞恥と混乱でこわばる背中に、ぬくもりがそっと触れた。腕が前に回り、いたわるように背後から包み込まれる。
「……お身体は、つらくありませんか?」
気づかう口調に、ますます頬が燃え上がる。
「よ……よく、わかりません……」
口ごもりつつ小声で応じると、彼の手が肩口を優しく撫でた。
「申し訳ない」
「あ、謝らないでください」
自分もまた望んだことなのだから──とはさすがに口にできない。代わりに彼の手におずおずと自分の手を重ねた。
武骨な、固い手。それが、どんなに優しく自分を扱ったか──。
思い出せば身体のこわばりも少しずつ解けてゆく。
何も言わないまま、しばらく身体を寄せ合った。背中に感じる逞しい体つきは、意識すると気恥ずかしかったけれど、もたれかかってもいいのだという安心感をも与えてくれる。
やがて彼の鼓動までもが背中から伝わり、規則正しいその響きを聞いているうちに澄乃の鼓動も少しずつ静まっていく。
ふたたびうとうとしかけた頃、背後で朔也が身じろぎした。澄乃の肩越しに腕を伸ばし、脇卓の時計を取り上げる。
「……こんな時間か」
盤面を確かめた朔也が、ふいに澄乃のうなじにやや強く唇を押しつけた。
澄乃は小さな吐息を洩らしながら寝返りを打った。
まだ朦朧としたまま、すぐ側のぬくもりに鼻先を擦りつける。もうひとつ満ち足りた溜め息をつくと、意識が少し鮮明になった。
からりとした陽射しを思わせる匂いに、かすかな石鹸の香りが入り交じる。
ふと、奇妙な違和感を覚え、澄乃は思わず目を見開いた。
「おはようございます」
頭上から、わずかにかすれた静かな声が降って来る。硬直した澄乃がおそるおそる目を上げると、微笑みながら朔也が見下ろしていた。
「──!」
とたんに昨夜の記憶が蘇り、燃えるように顔が熱くなった。澄乃は慌てて背を向け、身体を丸めるようにしてぎゅっと目を閉じた。
頬の熱が耳まで駆け上り、今にも火を噴きそうだ。心臓までめちゃくちゃに乱打している。
羞恥と混乱でこわばる背中に、ぬくもりがそっと触れた。腕が前に回り、いたわるように背後から包み込まれる。
「……お身体は、つらくありませんか?」
気づかう口調に、ますます頬が燃え上がる。
「よ……よく、わかりません……」
口ごもりつつ小声で応じると、彼の手が肩口を優しく撫でた。
「申し訳ない」
「あ、謝らないでください」
自分もまた望んだことなのだから──とはさすがに口にできない。代わりに彼の手におずおずと自分の手を重ねた。
武骨な、固い手。それが、どんなに優しく自分を扱ったか──。
思い出せば身体のこわばりも少しずつ解けてゆく。
何も言わないまま、しばらく身体を寄せ合った。背中に感じる逞しい体つきは、意識すると気恥ずかしかったけれど、もたれかかってもいいのだという安心感をも与えてくれる。
やがて彼の鼓動までもが背中から伝わり、規則正しいその響きを聞いているうちに澄乃の鼓動も少しずつ静まっていく。
ふたたびうとうとしかけた頃、背後で朔也が身じろぎした。澄乃の肩越しに腕を伸ばし、脇卓の時計を取り上げる。
「……こんな時間か」
盤面を確かめた朔也が、ふいに澄乃のうなじにやや強く唇を押しつけた。
