大正恋刺繍 ~押しかけ婿様の寡黙な溺愛~

「そ……そんなことはない!」

 朔也は珍しくうろたえて腰を浮かせた。いつも冷静沈着な顔が、真っ赤になっている。

「あ、あなたは、非常に美しく、その、大変に、み、魅力的だ……」

 目を泳がせながらしどろもどろに告白する朔也に、これまで感じたことのない愛おしさが込み上げた。

「澄乃さんは、世界で一等美しい女性(にょしょう)だと、俺は思っている」

「世界一は言い過ぎだと思いますけれど……」

「いいや、俺にとっては世界一だ。本当です」

 むきになって言い張る朔也に、ほんのりと目を潤ませて微笑む。

「嬉しいです」

 朔也は顔を赤くしたまま、澄乃の手をおずおずと握り返した。

「……俺が、嫌いではないですか」

「嫌いなわけありません。どうしてそんなこと」

「無理やりに婿入りしました」

 澄乃はちょっと考えた。朔也にも急ぐ理由があったことは、今では理解している。

「確かに驚いたし、正直に申し上げると最初は不愉快でした。ですが、一緒に暮らし始めたら、すぐにわかったのです。この人は信頼できる人だと。信頼してよい人なのだと」

 澄乃は朔也の手を改めて握り直して微笑んだ。

「あなたと結婚してよかったと、思っています。だから──」

 さすがに、あからさまな言葉にはできなかった。恥ずかしさも、まだある。でも、もう逃げ出したいとは思わない。

 じっと澄乃を見つめていた朔也が静かに立ち上がった。手を引かれて澄乃も自然と立ち上がり、部屋の奥の寝台に並んで腰を下ろす。

 肩を抱き寄せられ、広い胸元に顔を埋めた。かすかな石鹸と、午後の戸外のようなあたたかな匂いがする。安心感に包まれて澄乃は目を閉じた。

 頬から顎にかけて、確かめるようにゆっくりと指先が辿ってゆく。

 唇が触れ合った。最初はためらいがちに、二度目は安堵を交えて。さらに繰り返されるたび、少しずつくちづけは深く、情熱的になり──。いつしか澄乃は寝台に組み敷かれ、唇をむさぼられていた。

 浴衣がはだけ、直に肌が触れ合った。背中に回した掌に、しなやかな筋肉の動きが伝わってくる。

 澄乃は熱い溜め息を洩らし、彼の熱情に身を委ねた。