街を出ていくと告げた後……
メアリーは家に戻り、ロズウェルとスタックに旅に出る許可を求めたという。
しかし、反対された。
猛反対された。
当たり前だ。
元々、メアリーは独立を許されたわけではない。
俺と一緒にダンジョンに潜る許可は出たものの……
それだけで、家を出ていいという話ではない。
だが、メアリーは諦めなかった。
何度も何度もロズウェルとスタックを説得した。
説得して説得して説得して……
そして、そのまま家から出てこなくなった。
たぶん、業を煮やしたロズウェルかスタックが、メアリーの頭を冷やすために軟禁などをしたのだろう。
そのまま時間が流れて……
一週間が過ぎた。
「こんなところか」
食料や水。
その他、旅に必要なものを詰め込んだリュックを用意した。
旅の準備は完了した。
街で知り合った冒険者やギルドのサナリーたちに挨拶をした。
準備は終わり。
あとは街を出ていくだけだ。
レッドフォグに来て、約一ヶ月……
世話になった宿ともお別れだ。
一階に降りて、宿の女将と軽い世間話をして……
その後、宿を後にする。
すでに金は払っているので問題はない。
宿の外に出て……
そのまま街の入口へ移動する。
街の入口は関所のように堅牢な門が建てられている。
不審者、犯罪者を街に入れないためのものだ。
ただ、レッドフォグはそれほど厳しいところではないため、あからさまに怪しい人物でなければ出入りは自由だ。
幸いというべきか……
俺は救世主と呼ばれる立場なので顔パスだ。
俺の見送りを知り、憲兵たちが笑顔で手を振ってくれる。
それに応えて……
しばし、俺は門の前で待つ。
なにを待っているのか?
それは……
「マスター、いいんですか?」
「なにがだ?」
「メアリーさんのことですよ。置いていっていいんですか?」
「簡単に置いていくつもりはない。だから、こうして待っているんだろう?」
一応、メアリーの分の荷物も用意した。
メアリーが来なかった場合、荷物が倍になるが……
まあ、訓練と思えば特に問題はない。
「そうじゃなくて、迎えに行かなくてよかったんですか? メアリーさん、マスターが来てくれるのを待っていると思いますよ」
「そうかもしれないな」
「なら……」
「でも、それじゃあダメだ」
「え?」
「俺についてくるということは、家を出るということだ。ロズウェルなどの同意を得られていないとなると、家を捨てることになる。それ相応の覚悟が必要だ。それなのに、俺に……他人に誘われたから家を捨てるなんて、そんな決断じゃあ、この先やっていくことはできないだろうな」
ヒカリはじっとこちらを見て……
次いで、やれやれという感じで苦笑した。
「失礼しました。マスターはマスターなりに、メアリーさんのことを考えていたんですね。直球ではなくて、遠回しでわかりにくいから、誤解してしまいました」
「わかってくれればいい」
「えっと……こういうの、なんでいうんでしたっけ? 確か、ツンデレでしたっけ?」
「どこで覚えたんだ、そんな言葉……」
ウチの聖剣の将来が心配だ。
――――――――――
その後……
一時間ほど待ってみたけれど、メアリーが姿を見せることはなかった。
「ここまでにしておくか」
「でも……いいんですか? ひょっとしたら、うまくいっているかもしれないですし、ちょっと様子を見に行くくらいは……」
「言っただろう? 俺が手を貸したらアイツのためにならない。誰の力も借りることなく、メアリーは自分で選ばないといけないんだ」
「それは……そうかもしれないですが……」
「それができない以上、アイツは一緒に来ない方がいい。終着点の見えない旅なんだからな」
「そういえば……マスターは、これからどうするんですか? 他の街へ移動するのはいいとして、将来の目標というか着地点というか……それについては、どのような構想を?」
「将来か……」
この街でヒカリと出会い、メアリーと出会い……
色々な事を経験して、俺の剣がある程度通用することを知った。
ならば……
「魔法全盛期のこの時代で、剣一本でどこまでできるのか? それを確かめてみたいな」
「ふふっ、マスターらしい目標ですね。とてもいいと思います」
「付き合ってくれるか?」
「もちろんです。私はマスターの剣なのですから」
「ありがとな」
「ふぁっ」
ぽんぽんとヒカリの頭を撫でると、変な声がこぼれた。
「どうした?」
「い、いえ……こんな風にマスターに優しくされるなんて初めてのことなので、ついつい驚いてしまいました……」
……これからは、もう少し優しく接することにしよう。
反省する俺だった。
「さて、それじゃあ荷物を……」
「……ょー……」
「うん?」
「今、なにか……」
聞こえたような気がした。
ヒカリも同じ意見らしく、不思議そうな顔をしていた。
周囲に視線を走らせると……
「し……しょぉおおおおおぉぉぉーーーーーっ!!!!!」
ドドドドドッ、と盛大に土煙をあげながらこちらに駆けてくる物体が一つ。
いや、あれは……
「メアリーさん!?」
隣でヒカリが驚いていた。
俺は……秘密だ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……ぜひゅー、ぜひゅー、ふぴぃ……!!!」
メアリーは急ブレーキをかけて俺の前で止まり……そのまま死にそうな顔をして、何度も何度も荒い吐息をこぼした。
たぶん、家からここまで全速力でずっと走り続けたのだろう。
さすがにかわいそうに思い、そっと背中を撫でてやる。
「大丈夫か?」
「は、はひぃ……ご、ごしんぱいおかけしますぅ……ふへぇ……ぐひゃあ……」
大丈夫ではないな。
女にあるまじき声がこぼれているぞ。
「師匠っ!」
数分の休憩の後、元気を取り戻したメアリーがぐいぐいっと詰め寄ってきた。
だから近い。
「私も連れて行ってください!!!」
「ロズウェルとスタックはどうした? 反対されていたが、説得できたのか?」
「いいえ、できませんでした!」
「うん? なら、どうした?」
「何度も何度も説得して、でもダメで、そのうち頭を冷やせと軟禁されちゃったんですけど……そこまでされたら私も頭にきちゃうじゃないですか。だから、こっそりと抜け出してきました!」
晴れやかな顔でそう言う。
「私は師匠みたいな冒険者になるんです! だから、あんな家になんていられません! いる必要がありません! 家出します! そして師匠についていきます! だから……お願いしますっ、私も連れて行ってくださいっ!!!」
「くっ……ははは」
思わず笑ってしまう。
元気なヤツだとは思っていたが、メアリーにここまでの行動力があるなんて……
ある意味で、俺よりも上じゃないか?
「マスター。今のメアリーさんを見る限り、特に問題はないように思えますが」
「ヒカリさぁん……」
ヒカリの援護を受けて、メアリーが感動に涙した。
「わかっている」
「えっ、それじゃあ……」
「メアリーが決めたことなら、俺は文句は言わない。好きにするといい」
「あっ……」
メアリーは目を大きくして、
「はいっ、好きにしますね! 師匠、これからもよろしくおねがいします!!!」
にっこりと笑った。
「それじゃあ……改めて出発するか。行くぞ」
「はい、マスター」
「了解ですっ、師匠!」
ヒカリとメアリーを連れて……
俺は新しい旅に出た。
この先、なにが待ち受けているのか?
それはわからないが……
俺の剣でどんな道も切り開いていこう。
メアリーは家に戻り、ロズウェルとスタックに旅に出る許可を求めたという。
しかし、反対された。
猛反対された。
当たり前だ。
元々、メアリーは独立を許されたわけではない。
俺と一緒にダンジョンに潜る許可は出たものの……
それだけで、家を出ていいという話ではない。
だが、メアリーは諦めなかった。
何度も何度もロズウェルとスタックを説得した。
説得して説得して説得して……
そして、そのまま家から出てこなくなった。
たぶん、業を煮やしたロズウェルかスタックが、メアリーの頭を冷やすために軟禁などをしたのだろう。
そのまま時間が流れて……
一週間が過ぎた。
「こんなところか」
食料や水。
その他、旅に必要なものを詰め込んだリュックを用意した。
旅の準備は完了した。
街で知り合った冒険者やギルドのサナリーたちに挨拶をした。
準備は終わり。
あとは街を出ていくだけだ。
レッドフォグに来て、約一ヶ月……
世話になった宿ともお別れだ。
一階に降りて、宿の女将と軽い世間話をして……
その後、宿を後にする。
すでに金は払っているので問題はない。
宿の外に出て……
そのまま街の入口へ移動する。
街の入口は関所のように堅牢な門が建てられている。
不審者、犯罪者を街に入れないためのものだ。
ただ、レッドフォグはそれほど厳しいところではないため、あからさまに怪しい人物でなければ出入りは自由だ。
幸いというべきか……
俺は救世主と呼ばれる立場なので顔パスだ。
俺の見送りを知り、憲兵たちが笑顔で手を振ってくれる。
それに応えて……
しばし、俺は門の前で待つ。
なにを待っているのか?
それは……
「マスター、いいんですか?」
「なにがだ?」
「メアリーさんのことですよ。置いていっていいんですか?」
「簡単に置いていくつもりはない。だから、こうして待っているんだろう?」
一応、メアリーの分の荷物も用意した。
メアリーが来なかった場合、荷物が倍になるが……
まあ、訓練と思えば特に問題はない。
「そうじゃなくて、迎えに行かなくてよかったんですか? メアリーさん、マスターが来てくれるのを待っていると思いますよ」
「そうかもしれないな」
「なら……」
「でも、それじゃあダメだ」
「え?」
「俺についてくるということは、家を出るということだ。ロズウェルなどの同意を得られていないとなると、家を捨てることになる。それ相応の覚悟が必要だ。それなのに、俺に……他人に誘われたから家を捨てるなんて、そんな決断じゃあ、この先やっていくことはできないだろうな」
ヒカリはじっとこちらを見て……
次いで、やれやれという感じで苦笑した。
「失礼しました。マスターはマスターなりに、メアリーさんのことを考えていたんですね。直球ではなくて、遠回しでわかりにくいから、誤解してしまいました」
「わかってくれればいい」
「えっと……こういうの、なんでいうんでしたっけ? 確か、ツンデレでしたっけ?」
「どこで覚えたんだ、そんな言葉……」
ウチの聖剣の将来が心配だ。
――――――――――
その後……
一時間ほど待ってみたけれど、メアリーが姿を見せることはなかった。
「ここまでにしておくか」
「でも……いいんですか? ひょっとしたら、うまくいっているかもしれないですし、ちょっと様子を見に行くくらいは……」
「言っただろう? 俺が手を貸したらアイツのためにならない。誰の力も借りることなく、メアリーは自分で選ばないといけないんだ」
「それは……そうかもしれないですが……」
「それができない以上、アイツは一緒に来ない方がいい。終着点の見えない旅なんだからな」
「そういえば……マスターは、これからどうするんですか? 他の街へ移動するのはいいとして、将来の目標というか着地点というか……それについては、どのような構想を?」
「将来か……」
この街でヒカリと出会い、メアリーと出会い……
色々な事を経験して、俺の剣がある程度通用することを知った。
ならば……
「魔法全盛期のこの時代で、剣一本でどこまでできるのか? それを確かめてみたいな」
「ふふっ、マスターらしい目標ですね。とてもいいと思います」
「付き合ってくれるか?」
「もちろんです。私はマスターの剣なのですから」
「ありがとな」
「ふぁっ」
ぽんぽんとヒカリの頭を撫でると、変な声がこぼれた。
「どうした?」
「い、いえ……こんな風にマスターに優しくされるなんて初めてのことなので、ついつい驚いてしまいました……」
……これからは、もう少し優しく接することにしよう。
反省する俺だった。
「さて、それじゃあ荷物を……」
「……ょー……」
「うん?」
「今、なにか……」
聞こえたような気がした。
ヒカリも同じ意見らしく、不思議そうな顔をしていた。
周囲に視線を走らせると……
「し……しょぉおおおおおぉぉぉーーーーーっ!!!!!」
ドドドドドッ、と盛大に土煙をあげながらこちらに駆けてくる物体が一つ。
いや、あれは……
「メアリーさん!?」
隣でヒカリが驚いていた。
俺は……秘密だ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……ぜひゅー、ぜひゅー、ふぴぃ……!!!」
メアリーは急ブレーキをかけて俺の前で止まり……そのまま死にそうな顔をして、何度も何度も荒い吐息をこぼした。
たぶん、家からここまで全速力でずっと走り続けたのだろう。
さすがにかわいそうに思い、そっと背中を撫でてやる。
「大丈夫か?」
「は、はひぃ……ご、ごしんぱいおかけしますぅ……ふへぇ……ぐひゃあ……」
大丈夫ではないな。
女にあるまじき声がこぼれているぞ。
「師匠っ!」
数分の休憩の後、元気を取り戻したメアリーがぐいぐいっと詰め寄ってきた。
だから近い。
「私も連れて行ってください!!!」
「ロズウェルとスタックはどうした? 反対されていたが、説得できたのか?」
「いいえ、できませんでした!」
「うん? なら、どうした?」
「何度も何度も説得して、でもダメで、そのうち頭を冷やせと軟禁されちゃったんですけど……そこまでされたら私も頭にきちゃうじゃないですか。だから、こっそりと抜け出してきました!」
晴れやかな顔でそう言う。
「私は師匠みたいな冒険者になるんです! だから、あんな家になんていられません! いる必要がありません! 家出します! そして師匠についていきます! だから……お願いしますっ、私も連れて行ってくださいっ!!!」
「くっ……ははは」
思わず笑ってしまう。
元気なヤツだとは思っていたが、メアリーにここまでの行動力があるなんて……
ある意味で、俺よりも上じゃないか?
「マスター。今のメアリーさんを見る限り、特に問題はないように思えますが」
「ヒカリさぁん……」
ヒカリの援護を受けて、メアリーが感動に涙した。
「わかっている」
「えっ、それじゃあ……」
「メアリーが決めたことなら、俺は文句は言わない。好きにするといい」
「あっ……」
メアリーは目を大きくして、
「はいっ、好きにしますね! 師匠、これからもよろしくおねがいします!!!」
にっこりと笑った。
「それじゃあ……改めて出発するか。行くぞ」
「はい、マスター」
「了解ですっ、師匠!」
ヒカリとメアリーを連れて……
俺は新しい旅に出た。
この先、なにが待ち受けているのか?
それはわからないが……
俺の剣でどんな道も切り開いていこう。



