ダンジョンの外に出ると、そこは戦場だった。
魔物があふれ、街が蹂躙されている。
冒険者たちが必死になって応戦しているものの、傷つき、倒れている者の方が多い。
まず最初に俺がしたことは……
広場の中央で我が物顔で吠えるドラゴンに一撃を加えることだった。
ブレスを放とうとしていたが、それを阻害する形で、直上からの一撃を与える。
ドラゴンは大地に沈み、悲鳴をあげた。
「今だっ!」
合図を送ると、ダンジョンに潜っていた冒険者たちが次々と飛び出してきた。
皆、街を守るために戦う決意をしたのだ。
周囲に散っている魔物の掃討に入り……
また、傷つき倒れている冒険者たちの救護を行う。
「師匠っ、私はどうしましょう!?」
メアリーが意気込んで尋ねてきた。
「そうだな……このドラゴンを任せてもいいか?」
「えぇ!? 無理っ、無理無理無理ですよぉ!? Aランクのドラゴンなんて、私の手に負えるわけないじゃないですかぁ!?」
「冗談だ」
「うぅ……師匠、たまに意地悪ですよね」
「コイツは俺が仕留める。メアリーは、他の連中と同じように、街に散った魔物を掃討してくれ」
「了解です!」
元気よく頷いて、メアリーが駆け出した。
いつでもどこでも元気だ。
ある意味で、非常に頼りになる。
「グルァッッッ!!!!!」
ドラゴンがゆっくりと起き上がり、血走った目で俺を睨みつけた。
さきほどの一撃はそれなりに応えたらしく、怒り狂っている。
(マスター、大丈夫ですか?)
すでに剣になってもらっているヒカリが、念話で話しかけてきた。
(なにがだ?)
(相手はAランクの魔物……いくらマスターといえど、厳しい戦いのなると思います。戦術の構築を提案します)
(例えばどんな戦術が?)
(マスターの全力なら、ドラゴンの鱗を貫くことも可能です。なので、他の人に囮になってもらい、その間に隙を探す。そうして……)
(却下だ)
(即、否定されてしまいました……)
(さすがに、他の連中を盾にするような真似はできない)
(しかし、それではマスターが……)
(心配するな。たぶん、なんとかなる)
(え?)
(さすがに、Aランクの魔物……ドラゴンを相手にしたことはないから、どこまで通用するかわからない。ただ……コイツは怖くない)
絶望的な状況に遭遇した時、絶対的な強者に出会った時、死を突きつけられた時……
人は恐怖するという。
しかし、俺は今、ドラゴンと対峙しても恐怖を覚えていない。
面倒な相手だ……と思うだけで、他に大して感想はない。
それならば。
俺は自分と……
そして、俺を信じてくれるヒカリとメアリーの言葉を信じて、突き進むだけだ。
「いくぞ」
(はい、マスター)
しっかりと剣を握り締めて、ドラゴンに向けて突貫する。
まずは一撃。
斜めに斬撃を繰り出す。
ギィンッ!
鋼鉄よりも硬い鱗に剣が弾かれた。
さすがの聖剣も、ドラゴンの鱗は簡単に突破できないらしい。
さっきは鈍器のように、剣の腹で殴りつけたが……
それでいくか?
あるいは……
「キシャアアアアアッ!!!」
ドラゴンが怒りに吠えて、前足で薙ぎ払ってきた。
魔法使いの結界なんて紙のように切り裂く強烈な一撃だ。
さすがに受け止めるわけにはいかず、後ろに跳んで避ける。
追撃。
ドラゴンは突進してきて、今度は噛みついてきた。
上体を逸らす。
ガチンッ! と牙と牙が重なり、目の前で口が閉じた。
少しでも遅れていたらミンチになっていただろう。
「ふっ!」
距離をとらず、あえて距離を詰めた。
ドラゴンに肉薄して……さらに加速。
巨体の下に滑り込み、そこで剣を振るう。
鱗のない腹部なら、と思ったのだけど……
(ダメです、マスター)
「ちっ……浅いか」
ドラゴンの下から抜け出して、距離をとる。
腹部はゴムの塊のように弾力があり、分厚い。
鱗よりは柔らかいかもしれないが、剣で斬るとなると、余計に厄介かもしれない。
「ならば……!」
再び加速。
ドラゴンの猛攻を紙一重のところで避けながら、目の前で跳躍。
巨大な瞳に剣を突き立てるが……
ギィンッ! と弾かれてしまう。
ドラゴンにもなれば、瞳も鉄のように硬いらしい。
「グルァ!!!」
ドラゴンがくるっと回転して、尻尾で薙いできた。
瞳を攻撃したばかりの俺は体勢が崩れていて、避けることができない。
咄嗟に剣を盾にして、尻尾を受け止めた。
それでも勢いは殺すことはできず、吹き飛ばれてしまう。
地面を何度か転がり……
瓦礫に激突してようやく止まる。
(マスター!? 大丈夫ですか!?)
(大丈夫だ、問題ない)
あちこちが痛むが、骨は折れていないだろう。
まだまだ動ける。
立ち上がり、剣を構えた。
その後も、何度か切り込み、弱点と思わしく箇所を狙うものの……
決定的な一打を与えることができない。
ただ、それは敵も同じだった。
怒り狂うドラゴンは嵐のような猛撃を叩き込んでくるが、俺はそれをしのいでみせる。
激しい攻防が繰り広げられて……
それでもまだ、どちらも倒れることなく、大地を踏みしめていた。
(くそっ、本当に頑丈なヤツだな)
(マスター、もう限界です! これ以上の戦闘は、マスターに致命的なダメージが届く恐れがあります! ここは撤退を……)
(ダメだ)
(なぜですか!? このままでは、本当に危ないというのに……)
(ただの意地だ。俺は、誰かの言いなりになることがイヤで家を出た。束縛を嫌い、自由を求めた。それなのに、まともな知能もない魔物の言いなりになるなんて……絶対にごめんだ。こんなヤツを好きにさせるくらいなら、俺は戦う。戦って戦って戦って……どこまでも剣を振り続ける。俺は、そういう人間……剣士だ)
(マスター……ですが……)
俺の気持ちを理解してくれたのだろう。
ヒカリの声は、どこか納得しているようでもあった。
しかし、それで心配しなくなるというわけではなくて……迷いはさらに膨らんでいるみたいだ。
なら……心配をかけないようにしよう。
(大丈夫だ、安心しろ。俺に考えがある)
(どうするのですか……?)
(本気でやる)
(……はい?)
今までの真面目な雰囲気とは一転して、間の抜けた声が頭の中に響いた。
(本気で……? え? 今、本気でやると言ったのですか? 私の聞き間違えではなくて?)
(聞き間違いじゃないな)
(それじゃあ……え? マスターは、今まで手加減をしていたと? Aランクのドラゴンを相手に、余力を残していたと?)
(ちょっと違うな。100%の力で戦ってきたが……俺は、120%の力を出すことができる、という感じだ)
(へ?)
再び間の抜けた声が聞こえた。
ただ、今は詳しく説明している時間はない。
(いくぞ、ヒカリ)
(は、はいっ……マスター! 私はマスターの剣です、どこまでもお供します!)
(いい返事だ)
俺はニヤリと笑い……
目を閉じて集中する。
意識を広げて、自然と一体化していくような感覚を得る。
そして……
自分の中のトリガーを引き絞る。
「四之太刀……絶空っ!!!」
瞬間、爆発的に力が湧いてきた。
あふれるほどのエネルギーが体を駆け巡る。
体の芯が灼けるような感覚を得ながら、地面を蹴る。
駆け出した瞬間、最高速度へ。
さらに加速して、音を越える。
その勢いでドラゴンへ迫り……一閃。
狙いが外れてしまうけれど……
ドラゴンの角を根本から切り飛ばした。
魔物があふれ、街が蹂躙されている。
冒険者たちが必死になって応戦しているものの、傷つき、倒れている者の方が多い。
まず最初に俺がしたことは……
広場の中央で我が物顔で吠えるドラゴンに一撃を加えることだった。
ブレスを放とうとしていたが、それを阻害する形で、直上からの一撃を与える。
ドラゴンは大地に沈み、悲鳴をあげた。
「今だっ!」
合図を送ると、ダンジョンに潜っていた冒険者たちが次々と飛び出してきた。
皆、街を守るために戦う決意をしたのだ。
周囲に散っている魔物の掃討に入り……
また、傷つき倒れている冒険者たちの救護を行う。
「師匠っ、私はどうしましょう!?」
メアリーが意気込んで尋ねてきた。
「そうだな……このドラゴンを任せてもいいか?」
「えぇ!? 無理っ、無理無理無理ですよぉ!? Aランクのドラゴンなんて、私の手に負えるわけないじゃないですかぁ!?」
「冗談だ」
「うぅ……師匠、たまに意地悪ですよね」
「コイツは俺が仕留める。メアリーは、他の連中と同じように、街に散った魔物を掃討してくれ」
「了解です!」
元気よく頷いて、メアリーが駆け出した。
いつでもどこでも元気だ。
ある意味で、非常に頼りになる。
「グルァッッッ!!!!!」
ドラゴンがゆっくりと起き上がり、血走った目で俺を睨みつけた。
さきほどの一撃はそれなりに応えたらしく、怒り狂っている。
(マスター、大丈夫ですか?)
すでに剣になってもらっているヒカリが、念話で話しかけてきた。
(なにがだ?)
(相手はAランクの魔物……いくらマスターといえど、厳しい戦いのなると思います。戦術の構築を提案します)
(例えばどんな戦術が?)
(マスターの全力なら、ドラゴンの鱗を貫くことも可能です。なので、他の人に囮になってもらい、その間に隙を探す。そうして……)
(却下だ)
(即、否定されてしまいました……)
(さすがに、他の連中を盾にするような真似はできない)
(しかし、それではマスターが……)
(心配するな。たぶん、なんとかなる)
(え?)
(さすがに、Aランクの魔物……ドラゴンを相手にしたことはないから、どこまで通用するかわからない。ただ……コイツは怖くない)
絶望的な状況に遭遇した時、絶対的な強者に出会った時、死を突きつけられた時……
人は恐怖するという。
しかし、俺は今、ドラゴンと対峙しても恐怖を覚えていない。
面倒な相手だ……と思うだけで、他に大して感想はない。
それならば。
俺は自分と……
そして、俺を信じてくれるヒカリとメアリーの言葉を信じて、突き進むだけだ。
「いくぞ」
(はい、マスター)
しっかりと剣を握り締めて、ドラゴンに向けて突貫する。
まずは一撃。
斜めに斬撃を繰り出す。
ギィンッ!
鋼鉄よりも硬い鱗に剣が弾かれた。
さすがの聖剣も、ドラゴンの鱗は簡単に突破できないらしい。
さっきは鈍器のように、剣の腹で殴りつけたが……
それでいくか?
あるいは……
「キシャアアアアアッ!!!」
ドラゴンが怒りに吠えて、前足で薙ぎ払ってきた。
魔法使いの結界なんて紙のように切り裂く強烈な一撃だ。
さすがに受け止めるわけにはいかず、後ろに跳んで避ける。
追撃。
ドラゴンは突進してきて、今度は噛みついてきた。
上体を逸らす。
ガチンッ! と牙と牙が重なり、目の前で口が閉じた。
少しでも遅れていたらミンチになっていただろう。
「ふっ!」
距離をとらず、あえて距離を詰めた。
ドラゴンに肉薄して……さらに加速。
巨体の下に滑り込み、そこで剣を振るう。
鱗のない腹部なら、と思ったのだけど……
(ダメです、マスター)
「ちっ……浅いか」
ドラゴンの下から抜け出して、距離をとる。
腹部はゴムの塊のように弾力があり、分厚い。
鱗よりは柔らかいかもしれないが、剣で斬るとなると、余計に厄介かもしれない。
「ならば……!」
再び加速。
ドラゴンの猛攻を紙一重のところで避けながら、目の前で跳躍。
巨大な瞳に剣を突き立てるが……
ギィンッ! と弾かれてしまう。
ドラゴンにもなれば、瞳も鉄のように硬いらしい。
「グルァ!!!」
ドラゴンがくるっと回転して、尻尾で薙いできた。
瞳を攻撃したばかりの俺は体勢が崩れていて、避けることができない。
咄嗟に剣を盾にして、尻尾を受け止めた。
それでも勢いは殺すことはできず、吹き飛ばれてしまう。
地面を何度か転がり……
瓦礫に激突してようやく止まる。
(マスター!? 大丈夫ですか!?)
(大丈夫だ、問題ない)
あちこちが痛むが、骨は折れていないだろう。
まだまだ動ける。
立ち上がり、剣を構えた。
その後も、何度か切り込み、弱点と思わしく箇所を狙うものの……
決定的な一打を与えることができない。
ただ、それは敵も同じだった。
怒り狂うドラゴンは嵐のような猛撃を叩き込んでくるが、俺はそれをしのいでみせる。
激しい攻防が繰り広げられて……
それでもまだ、どちらも倒れることなく、大地を踏みしめていた。
(くそっ、本当に頑丈なヤツだな)
(マスター、もう限界です! これ以上の戦闘は、マスターに致命的なダメージが届く恐れがあります! ここは撤退を……)
(ダメだ)
(なぜですか!? このままでは、本当に危ないというのに……)
(ただの意地だ。俺は、誰かの言いなりになることがイヤで家を出た。束縛を嫌い、自由を求めた。それなのに、まともな知能もない魔物の言いなりになるなんて……絶対にごめんだ。こんなヤツを好きにさせるくらいなら、俺は戦う。戦って戦って戦って……どこまでも剣を振り続ける。俺は、そういう人間……剣士だ)
(マスター……ですが……)
俺の気持ちを理解してくれたのだろう。
ヒカリの声は、どこか納得しているようでもあった。
しかし、それで心配しなくなるというわけではなくて……迷いはさらに膨らんでいるみたいだ。
なら……心配をかけないようにしよう。
(大丈夫だ、安心しろ。俺に考えがある)
(どうするのですか……?)
(本気でやる)
(……はい?)
今までの真面目な雰囲気とは一転して、間の抜けた声が頭の中に響いた。
(本気で……? え? 今、本気でやると言ったのですか? 私の聞き間違えではなくて?)
(聞き間違いじゃないな)
(それじゃあ……え? マスターは、今まで手加減をしていたと? Aランクのドラゴンを相手に、余力を残していたと?)
(ちょっと違うな。100%の力で戦ってきたが……俺は、120%の力を出すことができる、という感じだ)
(へ?)
再び間の抜けた声が聞こえた。
ただ、今は詳しく説明している時間はない。
(いくぞ、ヒカリ)
(は、はいっ……マスター! 私はマスターの剣です、どこまでもお供します!)
(いい返事だ)
俺はニヤリと笑い……
目を閉じて集中する。
意識を広げて、自然と一体化していくような感覚を得る。
そして……
自分の中のトリガーを引き絞る。
「四之太刀……絶空っ!!!」
瞬間、爆発的に力が湧いてきた。
あふれるほどのエネルギーが体を駆け巡る。
体の芯が灼けるような感覚を得ながら、地面を蹴る。
駆け出した瞬間、最高速度へ。
さらに加速して、音を越える。
その勢いでドラゴンへ迫り……一閃。
狙いが外れてしまうけれど……
ドラゴンの角を根本から切り飛ばした。



