『結叶へ
君のおかげで約束の日よりも先を生きようと思えたけれど。ソレがまた突然切れて、どうしようもなくなってしまいそうで怖いから、この手紙を書く事にした。
言うなれば、保険、みたいなものかな。
だからこの手紙の出番がないって場合も普通にあり得るし、出番が来てしまったって言う場合もある。いずれにしても、君に渡すべき言葉を一つも渡せないまま終わるって言う最悪を作りたくないんだ。
まぁ、君にとっては迷惑千万だろうし、残酷な手紙になるだろうとは思う。いや、思うんじゃない。そうなるって理解しているよ。
それでもごめん、伝えておきたい言葉があるから読んで欲しい。
結叶、俺は本当に君のおかげで生きられていたよ。言った事あるけれど、君が俺にくれたものって、君が思っている以上に大きくて強いんだ。
君は、特別な事をしていた訳じゃないのにって返してくるだろうな。でも、隣に居てくれる事自体が本当に特別な事なんだよ。
自分で言うのもなんだけど。死にたいって思っている人間の隣に居続けて死から引き離すって、相当しんどい事だろ。体力も削られるし、そいつが持つ闇に自分も引っ張られて嫌でも心がそっちに傾いてしまうからメンタルだって相当やられる。支えなくちゃって躍起になると余計に、「ああしなきゃ」「こうしなきゃ」が募ってくるから、自分のやりたい事だっておざなりになってくる。一番大切にしなきゃいけない自分を護らなくなってくるんだ。
つまり死にたいって思っている人間以上に、その隣に居る人間の方が負担は色々と大きいし、ぐんとかかる。
だから往々にして、隣から離れて行く。本来抱えなくても良い重荷を嫌でも背負わされる訳だから、そうなって当然だ。寧ろ、自分の平穏を護る為に離れて行くべきだって思う。
それなのに、君はいつだって隣に居てくれた。隣で笑ってくれて、隣で支えてくれただろ。
俺に、温かい日常を作ってくれた。本当に言葉にならない位、感謝しているよ。
心底難しいと思うんだ、こんな奴の隣に居続ける事が。そしてご飯を作って、一緒に食卓について、何気ない話をする事が。
普通の人にとっては分からないだろうな。「それだけの事、そんな大げさに言わなくても」って。
でも、死にたいって思っている奴はそんな風に思えない。その「だけ」って言う部分に、どれほど貴重な温かさがあるか分かっているから。
……怖いんだよ。その温かさが、いつ何時壊れるか分からないから。何より、力を付けた「死」の概念を潰されそうだから。
出逢った頃に、俺が君のやる事全てに嫌がったのはそう言う訳。君とご飯を食べる事も話す事も、本当に心底嫌だったんだよ。「ふざけるな、なんでまだ生きようとしているんだ」って、自分に呪詛を延々と吐いていた位だ。
けれど、段々とそうじゃなくなっていった。
結叶が何度もここをぶち破ってきては、温かい光で包み込んでくれたから。この温かさをありがたいと抱えられる様になったばかりか、捨てたはずの自分や想いを拾い直す事が出来たんだよ。
もし、結叶が俺の隣から離れていたとしたら……間違いなく、俺はここまで生きていないし、こんな温かい幸せを心や記憶に刻める事もなかった。
正直言ってしまうと、結叶が音を上げてくれたら良かったのにって思う時もあったよ。でも、そんな想いは「やっぱり」に力強く否定されて、「君が居てくれて良かった」って言う幸せな想いに帰結していくんだ。
だから本当に感謝の言葉しかない。
君が居なかったら、俺はこんなにも温かな日常を送られなかった。楽しい思い出を刻める事もなかった。
こう何度も「君のおかげ」と繰り返し書くと、薄っぺらくなってしまうかもしれないけれど。君の心に刻まれて欲しいんだよ。
俺が本当に幸せだった事を。
君の帰りを待っていた時間が。君に「お帰り」と言って、「ただいま」と笑顔で返される時間が。君とご飯を作る時間が。君とただ喋る時間が。君とゲームをする時間が幸せだった。
奇跡的な温かさを持った日常が、本当に俺を幸せにしてくれた。
勿論、君と山梨・静岡に旅行に行けた事も幸せだったよ。覚えているかな。二日目に行った伊豆の不思議な博物館、俺はあそこが一番思い出深い。
なんせ、そこでお化け屋敷に入って怖がる君の姿が見られたからな。君から「入ろう」って乗り気だったのに、入ったら入ったでキャアキャア怖がっていたから。あれ、全然周り見てなかったよな? 音と雰囲気しか味わってないよな?
本当はめちゃくちゃ怖がりなのに進んでそう言う所へ突っ込んでいく所、ずっとそのままで居て欲しいと思うよ。馬鹿にしている訳じゃなくて、結構可愛いと思うから変わって欲しくないのが本音。
嗚呼、君に分かるかな。綴っている今、俺がどんな顔をしているか。たった一場面でも、思い出すだけでこんなにも笑みが零れるなんて。俺は本当に君に幸せにしてもらっているんだなって感じるよ。
そしてその想いを抱けて、色々な場面を記憶として自分に残せられる。
君のおかげで、抱ける幸せだよ。君じゃなかったら、絶対にこの幸せはない。
ありがとう、結叶。
……じゃあ、なんでって言っているよな。
本当にごめん。どんな謝罪でも償えないって言うのはよく分かっているよ。けど、今の俺は「ごめん」以外に言葉が見つからないんだ。
ごめん。いつもズタズタに傷つけるばかりで、太陽みたいな心に暗闇を差し込んでごめん。
でも、言わせて欲しい。間違いなく、君のせいってものは一つもない。それに、君が止められなかった訳でもない。
君は止めてくれている。君の手を感じない時はなかった、今だってそうだ。腕に「行かないで」って、君の手が強く掴んでくれている。
ただ、それでも行けてしまうのは、自分の手がどこにもないからだ。
自分自身をどうこうしようと決めるのに、一番大切な手は結局自分なんだ。他人の手はその手に影響を与えるだけで、自分自身をどうこう出来る手にはなれないと思う。
自分が決め手になるから、動くんだ。でも、俺には自分って言う手がなくなった。だから自分を護ろうとする事が出来なくなった。
それだけだよ。本当に君のせいじゃない。君はずっと隣に居てくれて、手を離さないでくれている。
君のせい、なんて言うものは一つもない。
だから泣かないで欲しい。泣く事なんて何もない。自分はずっと嫌な奴の隣に居続けて、手を掴み続けているんだぞって胸を張って欲しい位だ。そんな事、誰にでも出来る事じゃないからさ。
それと、こんなにも君をズタズタのボロボロに傷つける奴の事は早く忘れて欲しい。
俺は、君からの好きを貰って良い人間じゃなかったんだ。一方的に残酷な想いをぶちまけて、勝手に離れて行く最低な野郎だ。それでいて、太陽みたいな君の笑顔を曇らせるクズなんだ。
だから君の好きは、もっと相応しい人間が貰うべきなんだよ。
そうだな。君の笑顔を曇らせる事なく、君がくれる以上の幸せを返してくれる男。そんな奴が君の隣に相応しい。
そいつと、ただひたすら幸せになって欲しい。
俺は君の側で、その幸せを護っていくよ。約束する。絶対にその幸せを壊させない。
結叶。こうした形でしか君を護れなくてごめん、本当に弱い人間でごめん。
君の幸せと、これから君が歩む長い道のりに辛苦が降りかからない事だけを願っているよ。
どうかこれから、俺が傷つけた分、沢山の幸が君にやってくる様に。
綴りきれない感謝を込めて 雨澤蓮斗より』
・・・
ルート1、ルート2。好きな方をお進みください。私的な正式ルートは1だと思っております。
君のおかげで約束の日よりも先を生きようと思えたけれど。ソレがまた突然切れて、どうしようもなくなってしまいそうで怖いから、この手紙を書く事にした。
言うなれば、保険、みたいなものかな。
だからこの手紙の出番がないって場合も普通にあり得るし、出番が来てしまったって言う場合もある。いずれにしても、君に渡すべき言葉を一つも渡せないまま終わるって言う最悪を作りたくないんだ。
まぁ、君にとっては迷惑千万だろうし、残酷な手紙になるだろうとは思う。いや、思うんじゃない。そうなるって理解しているよ。
それでもごめん、伝えておきたい言葉があるから読んで欲しい。
結叶、俺は本当に君のおかげで生きられていたよ。言った事あるけれど、君が俺にくれたものって、君が思っている以上に大きくて強いんだ。
君は、特別な事をしていた訳じゃないのにって返してくるだろうな。でも、隣に居てくれる事自体が本当に特別な事なんだよ。
自分で言うのもなんだけど。死にたいって思っている人間の隣に居続けて死から引き離すって、相当しんどい事だろ。体力も削られるし、そいつが持つ闇に自分も引っ張られて嫌でも心がそっちに傾いてしまうからメンタルだって相当やられる。支えなくちゃって躍起になると余計に、「ああしなきゃ」「こうしなきゃ」が募ってくるから、自分のやりたい事だっておざなりになってくる。一番大切にしなきゃいけない自分を護らなくなってくるんだ。
つまり死にたいって思っている人間以上に、その隣に居る人間の方が負担は色々と大きいし、ぐんとかかる。
だから往々にして、隣から離れて行く。本来抱えなくても良い重荷を嫌でも背負わされる訳だから、そうなって当然だ。寧ろ、自分の平穏を護る為に離れて行くべきだって思う。
それなのに、君はいつだって隣に居てくれた。隣で笑ってくれて、隣で支えてくれただろ。
俺に、温かい日常を作ってくれた。本当に言葉にならない位、感謝しているよ。
心底難しいと思うんだ、こんな奴の隣に居続ける事が。そしてご飯を作って、一緒に食卓について、何気ない話をする事が。
普通の人にとっては分からないだろうな。「それだけの事、そんな大げさに言わなくても」って。
でも、死にたいって思っている奴はそんな風に思えない。その「だけ」って言う部分に、どれほど貴重な温かさがあるか分かっているから。
……怖いんだよ。その温かさが、いつ何時壊れるか分からないから。何より、力を付けた「死」の概念を潰されそうだから。
出逢った頃に、俺が君のやる事全てに嫌がったのはそう言う訳。君とご飯を食べる事も話す事も、本当に心底嫌だったんだよ。「ふざけるな、なんでまだ生きようとしているんだ」って、自分に呪詛を延々と吐いていた位だ。
けれど、段々とそうじゃなくなっていった。
結叶が何度もここをぶち破ってきては、温かい光で包み込んでくれたから。この温かさをありがたいと抱えられる様になったばかりか、捨てたはずの自分や想いを拾い直す事が出来たんだよ。
もし、結叶が俺の隣から離れていたとしたら……間違いなく、俺はここまで生きていないし、こんな温かい幸せを心や記憶に刻める事もなかった。
正直言ってしまうと、結叶が音を上げてくれたら良かったのにって思う時もあったよ。でも、そんな想いは「やっぱり」に力強く否定されて、「君が居てくれて良かった」って言う幸せな想いに帰結していくんだ。
だから本当に感謝の言葉しかない。
君が居なかったら、俺はこんなにも温かな日常を送られなかった。楽しい思い出を刻める事もなかった。
こう何度も「君のおかげ」と繰り返し書くと、薄っぺらくなってしまうかもしれないけれど。君の心に刻まれて欲しいんだよ。
俺が本当に幸せだった事を。
君の帰りを待っていた時間が。君に「お帰り」と言って、「ただいま」と笑顔で返される時間が。君とご飯を作る時間が。君とただ喋る時間が。君とゲームをする時間が幸せだった。
奇跡的な温かさを持った日常が、本当に俺を幸せにしてくれた。
勿論、君と山梨・静岡に旅行に行けた事も幸せだったよ。覚えているかな。二日目に行った伊豆の不思議な博物館、俺はあそこが一番思い出深い。
なんせ、そこでお化け屋敷に入って怖がる君の姿が見られたからな。君から「入ろう」って乗り気だったのに、入ったら入ったでキャアキャア怖がっていたから。あれ、全然周り見てなかったよな? 音と雰囲気しか味わってないよな?
本当はめちゃくちゃ怖がりなのに進んでそう言う所へ突っ込んでいく所、ずっとそのままで居て欲しいと思うよ。馬鹿にしている訳じゃなくて、結構可愛いと思うから変わって欲しくないのが本音。
嗚呼、君に分かるかな。綴っている今、俺がどんな顔をしているか。たった一場面でも、思い出すだけでこんなにも笑みが零れるなんて。俺は本当に君に幸せにしてもらっているんだなって感じるよ。
そしてその想いを抱けて、色々な場面を記憶として自分に残せられる。
君のおかげで、抱ける幸せだよ。君じゃなかったら、絶対にこの幸せはない。
ありがとう、結叶。
……じゃあ、なんでって言っているよな。
本当にごめん。どんな謝罪でも償えないって言うのはよく分かっているよ。けど、今の俺は「ごめん」以外に言葉が見つからないんだ。
ごめん。いつもズタズタに傷つけるばかりで、太陽みたいな心に暗闇を差し込んでごめん。
でも、言わせて欲しい。間違いなく、君のせいってものは一つもない。それに、君が止められなかった訳でもない。
君は止めてくれている。君の手を感じない時はなかった、今だってそうだ。腕に「行かないで」って、君の手が強く掴んでくれている。
ただ、それでも行けてしまうのは、自分の手がどこにもないからだ。
自分自身をどうこうしようと決めるのに、一番大切な手は結局自分なんだ。他人の手はその手に影響を与えるだけで、自分自身をどうこう出来る手にはなれないと思う。
自分が決め手になるから、動くんだ。でも、俺には自分って言う手がなくなった。だから自分を護ろうとする事が出来なくなった。
それだけだよ。本当に君のせいじゃない。君はずっと隣に居てくれて、手を離さないでくれている。
君のせい、なんて言うものは一つもない。
だから泣かないで欲しい。泣く事なんて何もない。自分はずっと嫌な奴の隣に居続けて、手を掴み続けているんだぞって胸を張って欲しい位だ。そんな事、誰にでも出来る事じゃないからさ。
それと、こんなにも君をズタズタのボロボロに傷つける奴の事は早く忘れて欲しい。
俺は、君からの好きを貰って良い人間じゃなかったんだ。一方的に残酷な想いをぶちまけて、勝手に離れて行く最低な野郎だ。それでいて、太陽みたいな君の笑顔を曇らせるクズなんだ。
だから君の好きは、もっと相応しい人間が貰うべきなんだよ。
そうだな。君の笑顔を曇らせる事なく、君がくれる以上の幸せを返してくれる男。そんな奴が君の隣に相応しい。
そいつと、ただひたすら幸せになって欲しい。
俺は君の側で、その幸せを護っていくよ。約束する。絶対にその幸せを壊させない。
結叶。こうした形でしか君を護れなくてごめん、本当に弱い人間でごめん。
君の幸せと、これから君が歩む長い道のりに辛苦が降りかからない事だけを願っているよ。
どうかこれから、俺が傷つけた分、沢山の幸が君にやってくる様に。
綴りきれない感謝を込めて 雨澤蓮斗より』
・・・
ルート1、ルート2。好きな方をお進みください。私的な正式ルートは1だと思っております。



