今思えば、抱いた夢を必死に追いかけ始めたのがいけなかったのかもしれない。
それか、これは理想だと諦める勇気を持てていたら良かったのかもしれない。
つまり俺が、どうしようもない弱さを抱える人間じゃなければ良かったのかもしれない。
でも、そんな理想に、俺は成れなかった。
だから募っていく恥が足を奪っている事に気が付いても、馬鹿だと全身に槍を突き立てられても、漫画家以外の道には行かなかったんだ。
いや、他の道を自分で黒く塗り潰したのか。
ここで辞めようと投げてしまったら。今まで重ねてきた努力が水泡に帰すし、傷だらけに成っても進んできた自分がただの「可哀想」に堕ちると分かっていたから。
人生の大半が嘲笑塗れの無駄で終わる事が、ただひたすらに怖かったんだ。
そうやってそこから逃げ続けていたら、年月だけが過ぎていった。華々しい輝きがいっこうに差し込まれず、デビューと言う中間地点にすら到達できないまま傷ばかりが増えていく。
俺は天才じゃない。
だからすぐに到達できるとは思っていなかったけれど。ドンドンと売れる物語を読んでしまうと、結果がいつまでも「落選」だと、頑張ろうとする支えが細くなっていった。漫画を書くって言う事自体が孤独だから、多分余計に「俺じゃ出来ない」を強くしていたのだと思う。
なのに、まっすぐ進み続けられていたのは、「頑張れ」って支えてくれる存在が居たからだ。
ばあちゃんと愛犬のリーフィー。
片方は、俺が抱く夢の一番近くの味方で、孤軍奮闘して負けそうになる俺を横で叱咤してくれた。「蓮斗、アンタは自分じゃ分からんだけや。おばぁは知っとる。諦めにゃあ、蓮斗は何だってなれるって。じゃけぇ、何があっても筆は折らんでおきんさいよ」って。
もう片方は、傷だらけの心を癒やしてくれて、俺の想像力の源になっていた。リーフィーが居たから生まれた物語が多かったし、いつ何時だって描き続ける俺の隣に居てくれたんだ。何があっても、離れないでいてくれたんだよ。
どっちも違った支え方だったけど、俺を見捨てないでずっと側にいてくれた事は変わらなかった。
だから描き続けられた。
けど、ばあちゃんはデビューする前に肺炎で亡くなった。
信じ切ってくれていたのに、結果を一つも見せられなかった悔しさと恥が強く来たよ。
ばあちゃん。情けない孫でごめん、恥ずかしいままの孫で終わってごめん。何一つ成せなくて、本当にごめんって。
でも、あのばあちゃんの孫がコレじゃダメだろ。恥ばかりを残す孫じゃダメだろって思ってさ。殊更「諦めない」が強まった。
そうしたらやっと、持ち込みからぐらびっとの読み切りが決まって、週刊連載に移れる事になれた。
もっと早くに決まっていたら良かったのにって思ったよ。けど、同時にほっとしたんだ。ようやく墓前で、ちゃんと顔を向けて手を合わせられる様になったからさ。
何より、ひたすら嬉しかったよ。色々大変だったけど、ソレはやっと到達できた証だって噛みしめられる幸せがあったし。描ける楽しさで満たされていたから、俺の苦は一つもなかった。
けど、苦痛はあった。「お前の物語はつまらない」「クソみたい、ガチの駄作」って言われる事の悲しさは、夢を叶える前の傷よりも深く刻まれたんだ。
気にしちゃ描けないぞって担当とか先輩とかに言われたし、面白いって手紙をくれる人とかも居たから「自分の楽しいを描き続けよう」って頑張れていたよ。
それでも段々と、かな。気にしないって築いた防壁を罵詈雑言が突き破ってくる様になったんだ。
だからその声が全てに聞こえ始める。
氷山の一角が、氷山そのものになったんだよ。逆だって思っても、「違う」って自分の中で否定される。その否定の前で「嗚呼、そうだ」って納得して、「俺の物語は人の心を傷つける為にしかないんだな」って突き破ってきた声の前で反芻するんだ。
そんな声が染みと成って広がり、ピタリと心を覆った頃にあるメッセージが来た。
『僕の方が面白い物語を描けているのに、こんなつまらない物語が連載を取れている。その理不尽に僕はやられました。もう筆を持てません。漫画を描く事が僕の生きる意味だったのに、生きる意味を失ったんです。全部貴方のせいです、貴方の描くつまらない物語のせいです。
貴方は人を傷つける物語を描いているだけにあらず、今から一人の命を奪うんですよ。これからも最低な漫画を描き続ける最悪の殺人者まんがかとして生きてくださいね。その姿を天国から見てます』って。
衝撃だったよ。
不思議と、死ねって言うストレートな誹謗中傷よりも心に来た。
人を楽しませる為に描いているのに、俺だけが楽しい思いをしていただけだったのか。人を癒やしたくて描いていたのに、俺は人を傷つけていた自覚もなかったのか。
自分のせいで誰かが死んでいる、そんな事にも気が付かない殺人者だったのか。
俺は最低で最悪な人間じゃないかって、自分がひどく嫌になった。それだけじゃない。多分、そこで心を吊る糸が一つ、プチンって切れたんだ。
だから絶望に堕ちかけた。
でも、まだ堕ちなかった。「お前は必要な存在だ、だからそこに堕ちちゃいけない」って横で言ってくれるリーフィーが居てくれたから「不安定」で留まれたんだ。
それでも糸は一つ切れたまま、元には戻らなかった。
一つだけの危ない状態で描いた物語は、果たして面白かったのか。思い返しても分からないけど、俺的には面白くなかっただろうと思う。
それもまた、自分を苦しめる傷だった。こんな物を描き続けていて良いのかって。
流石に、治そうと思ったよ。でも、迫り来る時間しめきりが見て見ぬふりって言う治療法に走らせていたんだ。
だからドンドンと膿んでいった。もう傷の形なんて分からない位に、ぐちゃぐちゃになっていた。勿論、受ける傷だって増える一方だ。
日を追うごとに、悪化の文字が俺の身体を容赦なく蝕んでいたよ。
その頃、俺以外の存在にも「悪化」が蝕み始めていたのに。
気が付かなかった。いや、気が付いてはいたけど。「大丈夫」を貼っていたんだ。
それくらい、リーはずっと元気いっぱいな奴だったから。
そう、リーフィーだよ。リーフィーに、癌が見つかったんだ。七歳になったばかりだったってのに。
今思い返しても、苦しさが襲ってくる。
……忘れられないよ、あのレントゲンも。「置いていくなよ」って必死になっていた姿も、大手術後すぐなのに「俺も帰る」って立ち上がってふらふら歩いた姿も。
癌が日に日に身体を蝕んでも尚「俺は大丈夫」って、元気でいようと必死になっていた姿も。全部、全部忘れられない。
俺は弱いけど、リーはすごく強かったんだよ。
いや、俺が弱いからこそかもしれないな。
リーは、分かっていたんだ。自分が逝ったら、俺がダメになるって。自分が居なきゃダメだって、どんなに苦しくても辛くても踏ん張っていたんだ。
そうじゃなかったら、きっと山を三回も越えてくれなかっただろうし。もう立ち上がる事すら苦しかったはずなのに、最後に俺の側まで自力で歩いてくる事もなかっただろうから。
リーは、俺の為に強く生きてくれたんだ。
何があってもずっと一緒って約束したからさ、って。
でもさ、傷を癒す存在が側に居なきゃ……傍らで支える存在がずっと居てくれなきゃ、与えられる傷と悪化する傷には耐えられないだろう?
俺は、耐えられなかった。苦しくて、悲しくて、辛くて、何も出来なくなった。ペンを握る事の楽しさすらも抱けなくて、一ページも描けなくなった。
真っ白が広がるばかりで、どこから何を埋めたら良いのか分からなかった。
それが、本当に苦しかったんだ。埋めようと探しても、埋めるものがどこにも見つからなかったから。
そんな状態の時に、母からさ「アンタって、本当に頑張らない人よね。全く、いつまで書かずにだらだらとしているつもりなの? そんなんじゃ、アンタの将来本当に大変になるわよ。そもそも漫画家なんて言う不安定な職業なんだからしっかり考えないと。色々と甘過ぎなのよ、アンタは」っていう言葉を貰ったんだ。
まぁ、日頃から俺に否定ばっかり言う人だったし、他人の痛みには気付かない人だから。こんな言葉も慣れたもんだったんだけど、俺の状況がいつもと違いすぎた。
だからそこで遂に、かな。気付いたら、何も見えない・感じない所に居たんだ。本当に堕ちた時は、プツンとかバラバラって壊れる音すらなかった。ただ自分が無に溶け込んでしまったって言うか、本当に感覚も何もなくなる場所に居たんだ。
だから自分の命が「いらない」物って言うか。消えた風に捉えられた。
それと、こうも思えた。
なんで、俺だけが今ここに残っているんだろう? なんで、俺の心臓だけが動いて、俺だけが呼吸を繰り返しているんだろう? って。
全て消えているはずなのに、動けてしまっている全てに厭悪した。
そんな状態で、これらに答えようとしたら一つの事だけが正解になる。いや、その答えしか見えなくなるんだ。
だから俺は、その正解に従おうとしたよ。
一人の人間として最低で最悪な手段だって言うのは、よく分かっていたけど。もう全部がどうでも良かったし、会いたいって言う気持ちが強かったから、その答えだけに向かって突っ走った。
事故物件に移り住んで、銀行のお金も親の口座に九割移したり募金したり兎に角使いまくって、連載も休載して、お墓もどこにするか決めた。極力迷惑をかけない様に、警察を呼ぶ手段とかも事細かに決めておいたんだ。
それで最後の仕上げとして道具を用意しに、ホームセンターへ出かけた。
そんな時だよ。
君と、結叶と出逢ったのは。
それからは知っての通りだ。
それか、これは理想だと諦める勇気を持てていたら良かったのかもしれない。
つまり俺が、どうしようもない弱さを抱える人間じゃなければ良かったのかもしれない。
でも、そんな理想に、俺は成れなかった。
だから募っていく恥が足を奪っている事に気が付いても、馬鹿だと全身に槍を突き立てられても、漫画家以外の道には行かなかったんだ。
いや、他の道を自分で黒く塗り潰したのか。
ここで辞めようと投げてしまったら。今まで重ねてきた努力が水泡に帰すし、傷だらけに成っても進んできた自分がただの「可哀想」に堕ちると分かっていたから。
人生の大半が嘲笑塗れの無駄で終わる事が、ただひたすらに怖かったんだ。
そうやってそこから逃げ続けていたら、年月だけが過ぎていった。華々しい輝きがいっこうに差し込まれず、デビューと言う中間地点にすら到達できないまま傷ばかりが増えていく。
俺は天才じゃない。
だからすぐに到達できるとは思っていなかったけれど。ドンドンと売れる物語を読んでしまうと、結果がいつまでも「落選」だと、頑張ろうとする支えが細くなっていった。漫画を書くって言う事自体が孤独だから、多分余計に「俺じゃ出来ない」を強くしていたのだと思う。
なのに、まっすぐ進み続けられていたのは、「頑張れ」って支えてくれる存在が居たからだ。
ばあちゃんと愛犬のリーフィー。
片方は、俺が抱く夢の一番近くの味方で、孤軍奮闘して負けそうになる俺を横で叱咤してくれた。「蓮斗、アンタは自分じゃ分からんだけや。おばぁは知っとる。諦めにゃあ、蓮斗は何だってなれるって。じゃけぇ、何があっても筆は折らんでおきんさいよ」って。
もう片方は、傷だらけの心を癒やしてくれて、俺の想像力の源になっていた。リーフィーが居たから生まれた物語が多かったし、いつ何時だって描き続ける俺の隣に居てくれたんだ。何があっても、離れないでいてくれたんだよ。
どっちも違った支え方だったけど、俺を見捨てないでずっと側にいてくれた事は変わらなかった。
だから描き続けられた。
けど、ばあちゃんはデビューする前に肺炎で亡くなった。
信じ切ってくれていたのに、結果を一つも見せられなかった悔しさと恥が強く来たよ。
ばあちゃん。情けない孫でごめん、恥ずかしいままの孫で終わってごめん。何一つ成せなくて、本当にごめんって。
でも、あのばあちゃんの孫がコレじゃダメだろ。恥ばかりを残す孫じゃダメだろって思ってさ。殊更「諦めない」が強まった。
そうしたらやっと、持ち込みからぐらびっとの読み切りが決まって、週刊連載に移れる事になれた。
もっと早くに決まっていたら良かったのにって思ったよ。けど、同時にほっとしたんだ。ようやく墓前で、ちゃんと顔を向けて手を合わせられる様になったからさ。
何より、ひたすら嬉しかったよ。色々大変だったけど、ソレはやっと到達できた証だって噛みしめられる幸せがあったし。描ける楽しさで満たされていたから、俺の苦は一つもなかった。
けど、苦痛はあった。「お前の物語はつまらない」「クソみたい、ガチの駄作」って言われる事の悲しさは、夢を叶える前の傷よりも深く刻まれたんだ。
気にしちゃ描けないぞって担当とか先輩とかに言われたし、面白いって手紙をくれる人とかも居たから「自分の楽しいを描き続けよう」って頑張れていたよ。
それでも段々と、かな。気にしないって築いた防壁を罵詈雑言が突き破ってくる様になったんだ。
だからその声が全てに聞こえ始める。
氷山の一角が、氷山そのものになったんだよ。逆だって思っても、「違う」って自分の中で否定される。その否定の前で「嗚呼、そうだ」って納得して、「俺の物語は人の心を傷つける為にしかないんだな」って突き破ってきた声の前で反芻するんだ。
そんな声が染みと成って広がり、ピタリと心を覆った頃にあるメッセージが来た。
『僕の方が面白い物語を描けているのに、こんなつまらない物語が連載を取れている。その理不尽に僕はやられました。もう筆を持てません。漫画を描く事が僕の生きる意味だったのに、生きる意味を失ったんです。全部貴方のせいです、貴方の描くつまらない物語のせいです。
貴方は人を傷つける物語を描いているだけにあらず、今から一人の命を奪うんですよ。これからも最低な漫画を描き続ける最悪の殺人者まんがかとして生きてくださいね。その姿を天国から見てます』って。
衝撃だったよ。
不思議と、死ねって言うストレートな誹謗中傷よりも心に来た。
人を楽しませる為に描いているのに、俺だけが楽しい思いをしていただけだったのか。人を癒やしたくて描いていたのに、俺は人を傷つけていた自覚もなかったのか。
自分のせいで誰かが死んでいる、そんな事にも気が付かない殺人者だったのか。
俺は最低で最悪な人間じゃないかって、自分がひどく嫌になった。それだけじゃない。多分、そこで心を吊る糸が一つ、プチンって切れたんだ。
だから絶望に堕ちかけた。
でも、まだ堕ちなかった。「お前は必要な存在だ、だからそこに堕ちちゃいけない」って横で言ってくれるリーフィーが居てくれたから「不安定」で留まれたんだ。
それでも糸は一つ切れたまま、元には戻らなかった。
一つだけの危ない状態で描いた物語は、果たして面白かったのか。思い返しても分からないけど、俺的には面白くなかっただろうと思う。
それもまた、自分を苦しめる傷だった。こんな物を描き続けていて良いのかって。
流石に、治そうと思ったよ。でも、迫り来る時間しめきりが見て見ぬふりって言う治療法に走らせていたんだ。
だからドンドンと膿んでいった。もう傷の形なんて分からない位に、ぐちゃぐちゃになっていた。勿論、受ける傷だって増える一方だ。
日を追うごとに、悪化の文字が俺の身体を容赦なく蝕んでいたよ。
その頃、俺以外の存在にも「悪化」が蝕み始めていたのに。
気が付かなかった。いや、気が付いてはいたけど。「大丈夫」を貼っていたんだ。
それくらい、リーはずっと元気いっぱいな奴だったから。
そう、リーフィーだよ。リーフィーに、癌が見つかったんだ。七歳になったばかりだったってのに。
今思い返しても、苦しさが襲ってくる。
……忘れられないよ、あのレントゲンも。「置いていくなよ」って必死になっていた姿も、大手術後すぐなのに「俺も帰る」って立ち上がってふらふら歩いた姿も。
癌が日に日に身体を蝕んでも尚「俺は大丈夫」って、元気でいようと必死になっていた姿も。全部、全部忘れられない。
俺は弱いけど、リーはすごく強かったんだよ。
いや、俺が弱いからこそかもしれないな。
リーは、分かっていたんだ。自分が逝ったら、俺がダメになるって。自分が居なきゃダメだって、どんなに苦しくても辛くても踏ん張っていたんだ。
そうじゃなかったら、きっと山を三回も越えてくれなかっただろうし。もう立ち上がる事すら苦しかったはずなのに、最後に俺の側まで自力で歩いてくる事もなかっただろうから。
リーは、俺の為に強く生きてくれたんだ。
何があってもずっと一緒って約束したからさ、って。
でもさ、傷を癒す存在が側に居なきゃ……傍らで支える存在がずっと居てくれなきゃ、与えられる傷と悪化する傷には耐えられないだろう?
俺は、耐えられなかった。苦しくて、悲しくて、辛くて、何も出来なくなった。ペンを握る事の楽しさすらも抱けなくて、一ページも描けなくなった。
真っ白が広がるばかりで、どこから何を埋めたら良いのか分からなかった。
それが、本当に苦しかったんだ。埋めようと探しても、埋めるものがどこにも見つからなかったから。
そんな状態の時に、母からさ「アンタって、本当に頑張らない人よね。全く、いつまで書かずにだらだらとしているつもりなの? そんなんじゃ、アンタの将来本当に大変になるわよ。そもそも漫画家なんて言う不安定な職業なんだからしっかり考えないと。色々と甘過ぎなのよ、アンタは」っていう言葉を貰ったんだ。
まぁ、日頃から俺に否定ばっかり言う人だったし、他人の痛みには気付かない人だから。こんな言葉も慣れたもんだったんだけど、俺の状況がいつもと違いすぎた。
だからそこで遂に、かな。気付いたら、何も見えない・感じない所に居たんだ。本当に堕ちた時は、プツンとかバラバラって壊れる音すらなかった。ただ自分が無に溶け込んでしまったって言うか、本当に感覚も何もなくなる場所に居たんだ。
だから自分の命が「いらない」物って言うか。消えた風に捉えられた。
それと、こうも思えた。
なんで、俺だけが今ここに残っているんだろう? なんで、俺の心臓だけが動いて、俺だけが呼吸を繰り返しているんだろう? って。
全て消えているはずなのに、動けてしまっている全てに厭悪した。
そんな状態で、これらに答えようとしたら一つの事だけが正解になる。いや、その答えしか見えなくなるんだ。
だから俺は、その正解に従おうとしたよ。
一人の人間として最低で最悪な手段だって言うのは、よく分かっていたけど。もう全部がどうでも良かったし、会いたいって言う気持ちが強かったから、その答えだけに向かって突っ走った。
事故物件に移り住んで、銀行のお金も親の口座に九割移したり募金したり兎に角使いまくって、連載も休載して、お墓もどこにするか決めた。極力迷惑をかけない様に、警察を呼ぶ手段とかも事細かに決めておいたんだ。
それで最後の仕上げとして道具を用意しに、ホームセンターへ出かけた。
そんな時だよ。
君と、結叶と出逢ったのは。
それからは知っての通りだ。



