あの時みたいに、グッと指先で押す。
音の鳴らない、インターホンを。
そうして私は、あの時みたいに、クリーム色の扉の前で立ち続け待っていた。
思い返せば、私達の運命はここからだった。
それが運命だとは、あの時すぐには気が付かなかったけれど。運命はここから開かれて、始まったのだ。
閉ざされて、閉ざしてしまって、開いて、開かれていって。そう何度も、扉の開け閉めを繰り返していた。
私達の運命は、この扉から紡いできたのだ。
だからまた、私はここから始める。
すると、あの時みたいに、ゆっくりと扉が開かれて彼が現れた。
「どうしたの?」
弾けない鍵の音、そして声のまろやかさと発せられる言葉が違っているけれど。綺麗な顔が怪訝で歪み、「何だよ」が溢れているのは変わらない。
私は「入っても良い?」と顔を綻ばせて尋ねた。
彼の目が少し丸くなる。
「良いけど、今更ソレ聞く?」
「今更でも大事でしょ?」
お邪魔しまぁすと軽やかな声で、私は踏み込んだ。
ぼやぁと漂う怪訝を通り過ぎてから、遂に辿り着く。隠されている内側へと。
「ぐらびっとの原作者のアマトって、蓮斗?」
定位置と成った場所に腰を下ろしてすぐ、私はまっすぐ問いかけた。
どう触れようか、どう切り込むべきか。その命題を正しく解かなきゃって、色々と悩んでいたけれど。ぐるぐると答えを探していくうちに、思い出したのだ。
私は、私のままで蓮斗と向き合う。それを根っこにしてきたじゃないかって。
だから今、まっすぐ私のままぶつかった。
例え、ここから最悪に進んでしまったとしても、大切な事が歪んでいなければ繋ぎ直す事が出来るはず。
カラカラの口に生まれた唾を小さく嚥下する。
コクリ
静寂が、小さな響きを際立たせていた。
「そうだよ」
強調された空気の中だったからか、吐き出された答えは鮮烈だった。
私はギュッと胸元で広がる衝撃を押しとどめてから、弱々しく唇を開く。
「そっか、やっぱり。そうだったんだ」
「結叶は少年漫画を読まないから、一生バレないと思ってたけど。よく分かったな」
軽口混じりの淡々とした口調だけれど、そこには「遂にこの時が来た」と言わんばかりの降参が滲んでいる様な気がした。
「ちょっと前に、弟が持って来たの。それで作者のページ見たら、アマトと蓮斗は重なっているって思って。だから……」
彼は小さく天を仰ぐ。なんと言おうか、そこから言葉を引っ張ろうとしている様に見えた。
私は天井から探られる繋ぎを待たずに、「それが」と口を開いてしまう。
「蓮斗が抱える闇の元なの?」
ゆっくりと、時間をかけて尋ねた。
そうしてゆっくりと、重力に抗っていた顔が落ちてくる。ストンと、漆黒のカーテンが彼の目元を覆った。
「きっと、俺の考えすぎ・思い込みすぎだって思う話になるだろうけど」
頑なに開かれず、触れられなかった心が、重々しく溢れ始める。
ぽつり、ぽつりと。
音の鳴らない、インターホンを。
そうして私は、あの時みたいに、クリーム色の扉の前で立ち続け待っていた。
思い返せば、私達の運命はここからだった。
それが運命だとは、あの時すぐには気が付かなかったけれど。運命はここから開かれて、始まったのだ。
閉ざされて、閉ざしてしまって、開いて、開かれていって。そう何度も、扉の開け閉めを繰り返していた。
私達の運命は、この扉から紡いできたのだ。
だからまた、私はここから始める。
すると、あの時みたいに、ゆっくりと扉が開かれて彼が現れた。
「どうしたの?」
弾けない鍵の音、そして声のまろやかさと発せられる言葉が違っているけれど。綺麗な顔が怪訝で歪み、「何だよ」が溢れているのは変わらない。
私は「入っても良い?」と顔を綻ばせて尋ねた。
彼の目が少し丸くなる。
「良いけど、今更ソレ聞く?」
「今更でも大事でしょ?」
お邪魔しまぁすと軽やかな声で、私は踏み込んだ。
ぼやぁと漂う怪訝を通り過ぎてから、遂に辿り着く。隠されている内側へと。
「ぐらびっとの原作者のアマトって、蓮斗?」
定位置と成った場所に腰を下ろしてすぐ、私はまっすぐ問いかけた。
どう触れようか、どう切り込むべきか。その命題を正しく解かなきゃって、色々と悩んでいたけれど。ぐるぐると答えを探していくうちに、思い出したのだ。
私は、私のままで蓮斗と向き合う。それを根っこにしてきたじゃないかって。
だから今、まっすぐ私のままぶつかった。
例え、ここから最悪に進んでしまったとしても、大切な事が歪んでいなければ繋ぎ直す事が出来るはず。
カラカラの口に生まれた唾を小さく嚥下する。
コクリ
静寂が、小さな響きを際立たせていた。
「そうだよ」
強調された空気の中だったからか、吐き出された答えは鮮烈だった。
私はギュッと胸元で広がる衝撃を押しとどめてから、弱々しく唇を開く。
「そっか、やっぱり。そうだったんだ」
「結叶は少年漫画を読まないから、一生バレないと思ってたけど。よく分かったな」
軽口混じりの淡々とした口調だけれど、そこには「遂にこの時が来た」と言わんばかりの降参が滲んでいる様な気がした。
「ちょっと前に、弟が持って来たの。それで作者のページ見たら、アマトと蓮斗は重なっているって思って。だから……」
彼は小さく天を仰ぐ。なんと言おうか、そこから言葉を引っ張ろうとしている様に見えた。
私は天井から探られる繋ぎを待たずに、「それが」と口を開いてしまう。
「蓮斗が抱える闇の元なの?」
ゆっくりと、時間をかけて尋ねた。
そうしてゆっくりと、重力に抗っていた顔が落ちてくる。ストンと、漆黒のカーテンが彼の目元を覆った。
「きっと、俺の考えすぎ・思い込みすぎだって思う話になるだろうけど」
頑なに開かれず、触れられなかった心が、重々しく溢れ始める。
ぽつり、ぽつりと。



