濃藍に包まれている世界の中に点々と灯る街灯が、なんだか、私達の道しるべみたいに思える。
このまままっすぐ行けば、大丈夫だよ。何も心配いらないよって。
普段見る時は、ただの光にしか思えないのに。蓮斗が隣に居ると、こんな普通の光景もたちどころに「特別」になるのよね。
私は笑顔で煌々と差し込む白灯を見上げた。
そうして彼から作ってくれた特別を享受していると、上げられた視線が「あ」と延長線にある物を捉える。
「今日は星が綺麗に見えるわ」
ほら、オリオン座がくっきり。と、私は思わず声を上げていた。
蓮斗の顔が、上に引っ張られる様に傾く。
「あぁ」
ストンと顔が戻り、淡々とした相槌が打たれた。
あ、やっちゃった。特別なのは私だけで、蓮斗にとってはコレも「何も変わらない普通」の一つじゃない。
そうだと気付くや否や、「一人で盛り上がっているのがバレるわよ!」と理性がビービーとアラートを鳴らし始めた。
すぐに「それはダメ、まずいわ」と、焦りがバタバタと駆けだし、「夜の散歩ってよく行くの?」と言う列車を快速に切り替えて、口と言う駅に向かわせる。
そして駅に辿り着きそうになり、スピードがやや落とされた時だった。
「田舎の方に行くと、もっと凄い星空なんだけどな」
私の用意していた言葉よりも早い「次」が吐き出される。
ここは光が眩しすぎるんだ。と、独り言の様な言葉が紡がれると、落ちた顔がこちらにゆっくりと向けられた。
「山の方だと、星団とか流れ星とかも現れる時があってここより綺麗に見えるんだよ」
重ねられる次に、思わず私は「えぇっ?」と驚き半分嬉しさ半分を弾けさせてしまう。勿論、慌てて「そうなの?」と繕って、驚きを隠したけれど。
そのおかげか、彼は何も突っ込む事なく「うん」と頷いた。
「星が辺り一面に散ってるからさ、あれが何座でって言うのが分からなくなるけど。それでも本当に綺麗で、凄く良い光景だよ」
多分、プラネタリウムよりも良いって思うと思う。と、蓮斗から優しく渡される予想。
「そう言えるって事は、蓮斗はそんな星空をどこかで見た事があるの?」
「うん。こうなる前までは、色々な所を回って星を見に行ってた」
宇宙をなんとなく感じられるのが好きで。と、蓮斗はフッと口元を緩やかに綻ばせた。
横から見える蓮斗の柔らかい表情に、私の胸がぎゅううっとトキメキを叫び始める。
本当に反則だと思うの、この笑顔。フッて、突然みせてくるのよ? 「今からこの顔しますからね」って予告してもらわないと困るわ。だって、そうじゃないと固まっちゃうし、動けなくなるんだもん。あんまりにも魅力的過ぎるから、もう本当にダメ。
なんて、心ではつらつらと照れた言葉が並んでいるけれど。冷静を司る理性が「はいはい、私が動きますよ」と暴走する私を一人置き去りにして、表の私として動いてくれていた。でも……
「蓮斗が一番だって思った星空を見た場所に、二人で行ってみない?」
理性も理性で落ち着いてはいなかったみたいだ。
暴走の余波がぶわっと溢れてしまい、会話に衝撃をドォンと落とし込む。
「え?」
案の定、蓮斗の目は丸くなっていた。そればかりか、「俺の聞き間違いかもしれない」みたいな感じで、もう一度を目線で促す。
私は無理やり口角を押し上げて「気になったの!」と、あっけらかんと答えた。そうでもしないと、襲いかかってくる羞恥に固まりそうだから。
「蓮斗が言う凄い星空を見てみたいし、そう言う時間を過ごすのも良いかなって思うの! だから、どう?」
「いや、まぁ……良い、けど。でもそうなると、場所が山梨県になるし。加えて目的の物が夜だから、日帰りで帰れないってのを考えると、流石にそれは」
「大丈夫!」
聞き間違いじゃなかったと言う衝撃に面食らいながら、おずおずと言葉を返してきた蓮斗に対して、私は猛然と突っ込んでしまった。
猛スピードと遅々としたスピードがぶつかったら、どうなるのか。それは猛スピードの方が遅い方の物を弾き飛ばしてしまうんだ。
故に、蓮斗の言葉もどこかへ消えてしまう。
動けているのは、熱とスピードを持ち続けている私だけだった。
「私は泊まりでも平気、問題なし! だからそこに行きましょうよ!」
辺りが静けさを纏っているからこそ、一人で動き続けている事を痛感してしまう。
その恥ずかしい痛みが「この痛みを薄めさせてくれ」と私を刺激して、更に熱を上げていくのだ。
もう何が何でも蓮斗に「うん」って言ってもらわなきゃ、って。
「いつもみたいにご飯を食べて、話をしたりって言うのも凄く良いんだけど。いつもと違う特別な時間を過ごすのも最高だと思うの。それでいて蓮斗が言う素敵な星空を見られたら、凄く良い時間をお互いに過ごせるわ。そう、間違いなくね。だからこの提案にネックがあるとするなら、寒さだけかなって思うんだけれど。どう?」
一人で猛る熱と上がっていく速度が、白旗を握る蓮斗の手をドンドンと上げさせていく。
だからこそ、蓮斗が挫けるに時間はかからなかった。
「……良いよ」
ひらりとはためかされる白旗を燃やし尽くすと、轟々と猛っていた私が「やりきった、うんって言って貰えた」とばかりに一安心をつき始めて、よいしょと落ち着きだす。
「やり過ぎた」と荒波の如く反省がぶわりと襲いかかってきて、散歩に集中出来なくなる事も知らないで。
このまままっすぐ行けば、大丈夫だよ。何も心配いらないよって。
普段見る時は、ただの光にしか思えないのに。蓮斗が隣に居ると、こんな普通の光景もたちどころに「特別」になるのよね。
私は笑顔で煌々と差し込む白灯を見上げた。
そうして彼から作ってくれた特別を享受していると、上げられた視線が「あ」と延長線にある物を捉える。
「今日は星が綺麗に見えるわ」
ほら、オリオン座がくっきり。と、私は思わず声を上げていた。
蓮斗の顔が、上に引っ張られる様に傾く。
「あぁ」
ストンと顔が戻り、淡々とした相槌が打たれた。
あ、やっちゃった。特別なのは私だけで、蓮斗にとってはコレも「何も変わらない普通」の一つじゃない。
そうだと気付くや否や、「一人で盛り上がっているのがバレるわよ!」と理性がビービーとアラートを鳴らし始めた。
すぐに「それはダメ、まずいわ」と、焦りがバタバタと駆けだし、「夜の散歩ってよく行くの?」と言う列車を快速に切り替えて、口と言う駅に向かわせる。
そして駅に辿り着きそうになり、スピードがやや落とされた時だった。
「田舎の方に行くと、もっと凄い星空なんだけどな」
私の用意していた言葉よりも早い「次」が吐き出される。
ここは光が眩しすぎるんだ。と、独り言の様な言葉が紡がれると、落ちた顔がこちらにゆっくりと向けられた。
「山の方だと、星団とか流れ星とかも現れる時があってここより綺麗に見えるんだよ」
重ねられる次に、思わず私は「えぇっ?」と驚き半分嬉しさ半分を弾けさせてしまう。勿論、慌てて「そうなの?」と繕って、驚きを隠したけれど。
そのおかげか、彼は何も突っ込む事なく「うん」と頷いた。
「星が辺り一面に散ってるからさ、あれが何座でって言うのが分からなくなるけど。それでも本当に綺麗で、凄く良い光景だよ」
多分、プラネタリウムよりも良いって思うと思う。と、蓮斗から優しく渡される予想。
「そう言えるって事は、蓮斗はそんな星空をどこかで見た事があるの?」
「うん。こうなる前までは、色々な所を回って星を見に行ってた」
宇宙をなんとなく感じられるのが好きで。と、蓮斗はフッと口元を緩やかに綻ばせた。
横から見える蓮斗の柔らかい表情に、私の胸がぎゅううっとトキメキを叫び始める。
本当に反則だと思うの、この笑顔。フッて、突然みせてくるのよ? 「今からこの顔しますからね」って予告してもらわないと困るわ。だって、そうじゃないと固まっちゃうし、動けなくなるんだもん。あんまりにも魅力的過ぎるから、もう本当にダメ。
なんて、心ではつらつらと照れた言葉が並んでいるけれど。冷静を司る理性が「はいはい、私が動きますよ」と暴走する私を一人置き去りにして、表の私として動いてくれていた。でも……
「蓮斗が一番だって思った星空を見た場所に、二人で行ってみない?」
理性も理性で落ち着いてはいなかったみたいだ。
暴走の余波がぶわっと溢れてしまい、会話に衝撃をドォンと落とし込む。
「え?」
案の定、蓮斗の目は丸くなっていた。そればかりか、「俺の聞き間違いかもしれない」みたいな感じで、もう一度を目線で促す。
私は無理やり口角を押し上げて「気になったの!」と、あっけらかんと答えた。そうでもしないと、襲いかかってくる羞恥に固まりそうだから。
「蓮斗が言う凄い星空を見てみたいし、そう言う時間を過ごすのも良いかなって思うの! だから、どう?」
「いや、まぁ……良い、けど。でもそうなると、場所が山梨県になるし。加えて目的の物が夜だから、日帰りで帰れないってのを考えると、流石にそれは」
「大丈夫!」
聞き間違いじゃなかったと言う衝撃に面食らいながら、おずおずと言葉を返してきた蓮斗に対して、私は猛然と突っ込んでしまった。
猛スピードと遅々としたスピードがぶつかったら、どうなるのか。それは猛スピードの方が遅い方の物を弾き飛ばしてしまうんだ。
故に、蓮斗の言葉もどこかへ消えてしまう。
動けているのは、熱とスピードを持ち続けている私だけだった。
「私は泊まりでも平気、問題なし! だからそこに行きましょうよ!」
辺りが静けさを纏っているからこそ、一人で動き続けている事を痛感してしまう。
その恥ずかしい痛みが「この痛みを薄めさせてくれ」と私を刺激して、更に熱を上げていくのだ。
もう何が何でも蓮斗に「うん」って言ってもらわなきゃ、って。
「いつもみたいにご飯を食べて、話をしたりって言うのも凄く良いんだけど。いつもと違う特別な時間を過ごすのも最高だと思うの。それでいて蓮斗が言う素敵な星空を見られたら、凄く良い時間をお互いに過ごせるわ。そう、間違いなくね。だからこの提案にネックがあるとするなら、寒さだけかなって思うんだけれど。どう?」
一人で猛る熱と上がっていく速度が、白旗を握る蓮斗の手をドンドンと上げさせていく。
だからこそ、蓮斗が挫けるに時間はかからなかった。
「……良いよ」
ひらりとはためかされる白旗を燃やし尽くすと、轟々と猛っていた私が「やりきった、うんって言って貰えた」とばかりに一安心をつき始めて、よいしょと落ち着きだす。
「やり過ぎた」と荒波の如く反省がぶわりと襲いかかってきて、散歩に集中出来なくなる事も知らないで。



