鬼神様は女狐がお好き!

 貧しさの中で飢え、戦で斬られ、病で腐るように死ぬよりも、鬼に愛され鬼に終わりを委ねるほうが、よほど幸福だと信じられていた。

 だから鬼の花嫁になることはは、生贄ではなく――選ばれし者だった。

 直子は妖狐だ。
 本来なら千年は生きられるはずの、妖の一族。

 ――それでも。
(喰われなきゃ、意味がない。人間なら鬼の花嫁に選ばれて幸せに思えただろうに)

 狐の肉は、鬼にとって致死の毒になる。
 鬼の霊力が強い本家の人間ほど、なおさらだ。

 血肉が喉を通った瞬間、強靭な鬼の身体は内側から崩れ落ちる。

 実家から捨てられた。
 いつから捨てられたと考えたら気が狂いそうだ。

 直子は生まれた瞬間から、鬼殺しのために仕込む予定の爆弾だったのだ。

 双子の姉の美々子は、人の姿に化けて女学校に通い、ドレスも着物も宝石も欲するもの全てを与えられた。
 美々子の誕生日には盛大なパーティーでが屋敷で開かれた。

 表向き、狐塚家の娘は美々子だけ。

 直子はその存在を隠されていた。
 蔵の中に閉じ込められ、一週間に一度の食事を工夫し食い繋ぐ生活。