鬼神様は女狐がお好き!

「お気付きになっていたのでしょう? 私が妖狐だと⋯⋯」
 直子は小さく微笑み、囁く。

 影一郎は一瞬だけ目を伏せ、それから苦笑した。

「気付いてたよ、最初から。でも、心を奪われてしまった。君に騙され、喰われて、殺されても構わないと――そう思うほどにな」

 その言葉に、直子の胸がきゅっと締め付けられる。
 涙が込み上げてきて視界が滲んだ。

 どれほど自信を得ても、彼ほどの男に、ここまで想われる価値が自分にあるとはどうしても信じきれなかった。

「影一郎様、私も、貴方を愛しています。だから、逃げません」

 影一郎の指が、彼女の背に回る。

「だが、鬼の一族は君の存在を許さない」
「いいえ」

 直子は、はっきりと言い切った。

「認めさせますわ。私が制度をこの世界の価値観そのものを変えます。その前に――私を虐げてきた狐どもに、然るべき報いを受けさせます」
 障子の隙間から差し込む月光が、銀髪を照らし琥珀の瞳を燃えるように輝かせる。

 その姿は、もはやか弱い花嫁ではなく、影一郎の世界を変えた強く賢い初恋の女だった。

 影一郎はしばらく黙って彼女を見つめ、やがて静かに笑った。