鬼神様は女狐がお好き!

(私も狐であることはやめられない。でも、人のフリはできるわ)

 守るフリをして喰らう彼と、従順なフリをして殺す気である自分。

 息が、うまく吸えない。
 紫水晶の眼が、直子を逃がさない。

「俺は心も奪った上で喰うこともできるが、そんな残酷なことはしない。だから、君は俺を愛さなくて良い。ただ、俺の花嫁として俺が君を大事にするだけだ」
「そうですか⋯⋯私の心を奪うのは無理だと思うので、その心配はしなくて大丈夫ですよ」

 影一郎が直子にできる限りの自由を与えたかった。
 彼女が他の男を思っているのは苦しいが、彼女の心を縛りたくない。

 自分が彼女を愛し大切にすれば良いと思っていた。
 直子は影一郎の深過ぎる愛に気付かず、ただ彼の不思議な言い回しに戸惑うだけだった。

「だがな、直子。君が三十年後に死ぬとしても、その三十年を、どう生きるかはまだ決まっていない」
 影一郎の言葉に直子の心臓が、痛いほどに脈打つ。
(あと九百年生きられるのに、寿命を縮められた私の気持ちなんて分かるものか!)

「影一郎様の言う通りですわ」
 直子の声は驚くほど落ち着いていた。