鬼神様は女狐がお好き!

 誰も餌になる自分にこのように真っ直ぐ想いを伝えてくれなかった。

「共生を選ばなければ制度は終わります。上品ぶってないで人を駆逐し生物の頂点に君臨してはどうですか?」
 直子は自分でも驚くほど冷たい声を出していた。

『出来損ないのお前が一族の役に立てる名誉なことだ』と言われ餌として鬼神家に嫁いでいる。
 そんな親に「双子だったから、片方必要なかっただけだろう」と本音をぶつけたことはない。

「俺は花嫁制度が嫌いだ。でも、花嫁のことは大事にしたいし守ってやりたい」

 影一郎の微笑みに直子は少しの苛立ちを覚えた。
 餌に対してというより、愛する女にするような微笑みをしたからだ。

 美しい男の微笑みにうっとりし現実を忘れてしまうような女だったら、どれだけ楽だったかと自分を哀れんだ。

「守ってるんですか? 餌にする罪悪感から優しくしているように見えますよ」
「そうかもしれないな。俺は鬼であることをやめられるわけじゃないから」

 影一郎は、ゆっくりと直子の瞳をまっすぐ見つめる。
 逃げ場を断つように、真正面から見られると正体に気が付かれている気になる。