鬼神様は女狐がお好き!

 街を守り、弱き者を助け、瓦斯灯の下で人と肩を並べて生きる。
 しかし、その根底にある意識は変わらない。

 ――妖は、人より上の存在。
 それは、妖狐の家に生まれた直子だからこそ骨の髄まで理解してしまっている現実だった。

 沈黙が長く続いた。
 香の煙が天井へ昇り、やがて薄れていく。

 その動きを、まるで、直子ではなく――己の内側を覗くように影一郎はじっと見ていた。

「直子、君の考えているだろう事は、概ね正しいよ」
 その一言で、直子の胸がひやりと冷える。

 否定されるよりも、肯定されるほうがずっと残酷だった。

「そもそも、鬼は人間と本当の夫婦になるつもりなどありませんよね。鬼の花嫁制度はまやかしです」

 鬼は妖の中でも最もプライドが高い。
 他の妖と混じることさえ穢らわしいと思っているのに、餌である人間との混血が生まれることなど許すはずがないのだ。

「勘違いしないで欲しい。俺は人間を尊重している」
 残りの人生、金銭の不自由なく暮らさせる。

 それを尊重しているというのならば鬼神家は人を尊重している。