鬼神様は女狐がお好き!

 毒餌に選ばれたのが偶然自分だっただけで、美々子と自分に差はないこと。

 でも、日々、美々子より劣った存在だと非難されることで、自分の確信も揺らいでいた。
 洗脳のように自分が役に立つのは毒餌としてだけだと刷り込まれた。

 そして、実際に鬼の花嫁選定会に赴くことになった時、心がポキっと折れてしまった。

 両親も双子の姉も、初恋の凛介さえも彼女が餌になることを当然と思っている。
(誰も惜しいと思ってくれない命になんの価値があるのだろう)

 妖術で化け、妖狐の証である髪を黒くし可愛らしい十六歳の少女、塚田直子を作り上げた。
 本当の狐塚直(こづかなお)は妖狐らしく近寄りがたい銀髪の妖艶な美女だ。

 しかしながら、その姿は絶世の美女と評判の双子の姉と瓜二つになってしまう。

 結婚式は直子の希望であげなかった。

『呼べる親戚がいないので』
 決して嘘ではない事実を紡ぐと何も突っ込まれなかった。

 正式に鬼神家に嫁いだ直子は今宵から影一郎と寝室を共にする。

 ♢♢♢

 ゆっくりと、扉開けると中は薄暗く香の煙がゆるやかに漂っている。