これは、五度目の婚礼だ。
美しく着飾った白無垢の袖の中で、指先の震えを隠すように、華夜は小さく拳を握った。
鏡に映る自分は、どこから見ても幸福な花嫁そのものである。整えられた髪、丁寧に施された化粧、重ねられた絹の重み――これまでと寸分の狂いもなく、すべてが完璧な装いだった。
五度に渡って一つの違いもないそれに、嫌というほどに現実を突きつけられ、華夜は絶望していた。
もしもこのまま何も変えようとしなければ。今夜あの人は、五度目の死を迎えてしまうのだ。
血に濡れた床と、崩れ落ちる身体。それでも最後まで、自分を気遣う声が、華夜の脳裏に鮮明に蘇る。
——『無事か』
その一言が、何度も何度も繰り返されて、まるで呪いのように胸にこびりついていた。何度も見てきたはずなのに、その結末だけは、どうしても慣れることがなかった。
華夜はゆっくりと目を閉じ、心の中で自分に言い聞かせる。
(……今度こそ、間違えないから)
意を決して開いた襖の向こうに、彼は居た。何も知らない顔で真っ直ぐと自分を見据えるこの男は、きっとまた、自分を守ろうとして死ぬのだろう。
だから。今度は、絶対に。
華夜は、震える唇を開いた。
——お願いです。
「どうか、私に触れないでください」
