レインがニカッと眩しい笑顔を浮かべ、前を向いたその直後だった。
ガラララッ!!!
教室の前方の扉が、鼓膜を震わせるような凄まじい音を立てて勢いよく開け放たれた。
それまでガヤガヤと騒がしかった教室が一瞬で静まり返り、冷たい緊張感が走る。
「──そこまでだ、席に座れ」
低く、地を這うような重苦しい声が教室に響き渡った。
教壇に現れたのは、漆黒の明治軍服風の制服を隙なく着こなし、腰に一振りの大剣を下げた、強面の男だった。鋭い眼光が、獲物を狙う猛獣のように新入生たちをねめつける。
「俺の名前はグレン。今日からお前たち騎士科一年の担任となる。……おい、そこの赤髪。早く前を向け。その首をへし折られたくなければな」
「っ、失礼しました!」
さっきまで余裕たっぷりだったレインが、あわてて背筋をピンと伸ばす。マインもゴクリと息を呑んだのが分かった。
グレン教官はフンと鼻を鳴らすと、黒板に向かい、チョークでガリガリと大きな文字を書き殴った。
そこに躍り出たのは、『番契約』という四文字。
「知っての通り、我が国は近代化の代償として霊脈を汚し、そこから這み出る『瘴気』と『魔物』に脅かされている。それを討ち果たす国家の刃となるのが、ここにいる我々騎士科の役目だ。だが──」
教官は振り返り、黒板を拳でドォン!と叩いた。
「我々騎士は、単体ではただの人間の域を出ん。魔物の硬い皮膚を切り裂き、その命を滅ぼすには、命を預け合える異性の『魔術士』と『番契約』を交わさねばならない。この学園は六年制だが、三年生までに番契約を交わせなければ退学だ。契約の絆があって初めて、貴様らの剣に魔力が宿り、真の力が解放される」
グレン教官の言葉が、私の胸に重く突き刺さる。
異性の魔術士との、番契約──。
「いいか、これは義務だ。もう一度言うが三年のうちに番を見つけられなかった役立たずは、その時点で一発退学(除名)処分とする。ちなみに4年生からは番と一緒に授業・訓練を受けてもらうことになる。この国家防衛の最前線に、ただの凡人を置いておく贅沢な席などない。死にたくなければ、死に物狂いで強くなり、死に物狂いで最高のパートナーを見つけ出せ」
教室の空気が、今度こそ完全に凍りついた。
誰もが息をすることすら忘れたように、教官の言葉に圧倒されている。
三年のうちに、番を……。
その厳しい現実を突きつけられた瞬間、私の脳裏に、選定の儀で見たあの澄んだ蒼い瞳が、そして美しく繊細な魔術の光を放っていた「シオン・エストレヤ」の姿が、なぜか不意に浮かび上がっていた。
「……さて。脅しはここまでだ」
グレン教官はニヤリと、獰猛な笑みを浮かべた。
「普段の訓練は、男子の『第一部隊』、女子の『第二部隊』に分かれて行う。互いに殺し合う気概で競い合え。近いうちに、魔術科との合同顔合わせも予定している。……では、さっそく一人ずつ自己紹介を始めてもらう。まずはフォレスト、お前からだ」
「はいっ!」
レインが勢いよく席を立つ。
ガラララッ!!!
教室の前方の扉が、鼓膜を震わせるような凄まじい音を立てて勢いよく開け放たれた。
それまでガヤガヤと騒がしかった教室が一瞬で静まり返り、冷たい緊張感が走る。
「──そこまでだ、席に座れ」
低く、地を這うような重苦しい声が教室に響き渡った。
教壇に現れたのは、漆黒の明治軍服風の制服を隙なく着こなし、腰に一振りの大剣を下げた、強面の男だった。鋭い眼光が、獲物を狙う猛獣のように新入生たちをねめつける。
「俺の名前はグレン。今日からお前たち騎士科一年の担任となる。……おい、そこの赤髪。早く前を向け。その首をへし折られたくなければな」
「っ、失礼しました!」
さっきまで余裕たっぷりだったレインが、あわてて背筋をピンと伸ばす。マインもゴクリと息を呑んだのが分かった。
グレン教官はフンと鼻を鳴らすと、黒板に向かい、チョークでガリガリと大きな文字を書き殴った。
そこに躍り出たのは、『番契約』という四文字。
「知っての通り、我が国は近代化の代償として霊脈を汚し、そこから這み出る『瘴気』と『魔物』に脅かされている。それを討ち果たす国家の刃となるのが、ここにいる我々騎士科の役目だ。だが──」
教官は振り返り、黒板を拳でドォン!と叩いた。
「我々騎士は、単体ではただの人間の域を出ん。魔物の硬い皮膚を切り裂き、その命を滅ぼすには、命を預け合える異性の『魔術士』と『番契約』を交わさねばならない。この学園は六年制だが、三年生までに番契約を交わせなければ退学だ。契約の絆があって初めて、貴様らの剣に魔力が宿り、真の力が解放される」
グレン教官の言葉が、私の胸に重く突き刺さる。
異性の魔術士との、番契約──。
「いいか、これは義務だ。もう一度言うが三年のうちに番を見つけられなかった役立たずは、その時点で一発退学(除名)処分とする。ちなみに4年生からは番と一緒に授業・訓練を受けてもらうことになる。この国家防衛の最前線に、ただの凡人を置いておく贅沢な席などない。死にたくなければ、死に物狂いで強くなり、死に物狂いで最高のパートナーを見つけ出せ」
教室の空気が、今度こそ完全に凍りついた。
誰もが息をすることすら忘れたように、教官の言葉に圧倒されている。
三年のうちに、番を……。
その厳しい現実を突きつけられた瞬間、私の脳裏に、選定の儀で見たあの澄んだ蒼い瞳が、そして美しく繊細な魔術の光を放っていた「シオン・エストレヤ」の姿が、なぜか不意に浮かび上がっていた。
「……さて。脅しはここまでだ」
グレン教官はニヤリと、獰猛な笑みを浮かべた。
「普段の訓練は、男子の『第一部隊』、女子の『第二部隊』に分かれて行う。互いに殺し合う気概で競い合え。近いうちに、魔術科との合同顔合わせも予定している。……では、さっそく一人ずつ自己紹介を始めてもらう。まずはフォレスト、お前からだ」
「はいっ!」
レインが勢いよく席を立つ。
