蒼い椿椿と騎士科の少女

「エレナ!っと、シオン様!」
遠くから、聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「エレナ、無事だったのね!良かった。急にいなくなるからびっくりし…ってなにこの魔物の山!」
近づいてきたマインは、のように積まれている魔物の残骸を見て唖然とする
「…えっと、どういう状況?」
マインちゃんは恐る恐る聞いた。
「んーと、話せば長いんだけどさ…」
私が話し始めようとした時、
「…ちょっと待って」
「?」
「その首元の華…もしかして、シオン様と………『番契約』を結んだの!?」
「えっ、あ、これは──」
慌てて首を手で隠そうとしたけれど、時すでに遅し。

マインちゃんは「キャーッ!」と裏庭中に響き渡るような黄色い悲鳴を上げた。
「やっぱり!その淡い蒼色の椿、シオン様の魔力そのものじゃない!うそ、じゃあエレナちゃん、ついにシオン様と本当に……!」
「おいおい、何の騒ぎだ?」
そこへ、武器を肩に担いだレインが、他の場所の掃討を終えて歩いてきた。
けれど、レインも周囲の魔獣の山と、私から放たれている今までとは桁違いの魔力の気配に気づくと、ピタリと足を止める。
レインは驚きに目を見開いた後、私の首元の紋様を見て、すべてを察したように不敵にニヤリと笑った。
「なるほどな。お前、ついにあの天才様と契約しやがったか。……おいおい、とんでもねえ魔圧になってんじゃねえか。これなら『出来損ない』なんて言わせねえな」

「やっぱり!その淡い蒼色の椿、シオン様の魔力そのものじゃない!うそ、じゃあエレナちゃん、ついにシオン様と本当に……!」
マインちゃんが「キャーッ!」と裏庭中に響き渡るような黄色い悲鳴を上げる。
「えっ、あ、これは──」
私が慌てて首を手で隠そうとした、その時。

「……僕の騎士に、あまり気安く触らないでほしいな」
背後から、低く、だけど鼓膜に心地よく響く声が聞こえた。
振り返ると、シオン様がすっと私の隣に並び、ごく自然な動作で私の肩を抱き寄せた。
「し、シオン様!?」
「顔が赤いよ、エレナ。まだ魔力酔いが残っているのかな」

シオン様は私を見てふっと優しく微笑んだあと、マインちゃんと、いつの間にか合流していたレインに向き直る。その瞳は、いつもの冷徹な天才魔導師のそれに戻っていた。
「見ての通り、エレナは僕の『番』になった。これからは僕の魔力が彼女の身体を強化し、彼女の剣が僕の盾となる。……だから、あまり彼女をからかわないでくれると助かる。僕の独占欲は、君たちが思っているよりも狭量なんだ」
「ひゃ、ひゃあぁ……!」
シオン様のストレートすぎる言葉に、マインちゃんは両手で顔を覆って悶絶している。
一方でレインは、あきれたように肩をすくめた。
「おいおい、あの孤高の天才様が聞いて呆れるぜ。まさかそんなに余裕のない顔をするようになるとはな。……まあ、おめでとう、エレナ。これで名実ともに最強のコンビ誕生だな」
遠くから、騒ぎを聞きつけた他の生徒や先生たちの足音が近づいてくる。
これだけの魔物の山だ。すぐに大騒ぎになるだろう。

シオン様は私の肩に回した手に少しだけ力を込め、耳元で小さく囁いた。
「さあ、帰ろうか、僕の騎士。学園に正式な契約書を提出したら……次は君の『実家』に、挨拶に行かないとね」
その言葉に、私は不敵な笑みを浮かべた。

待ってろよ、私を出来損ないと呼んだクソ親父──。