ドォン!!!と空気が爆ぜるような音を置き去りにして、私は地面を蹴った。
今までの生身の感覚とは次元が違う。身体が羽のように軽く、まるで世界がスローモーションになったかのように、魔獣の動きがはっきりと見えた。
「ガルルッ──」
正面の魔物が、丸太のような鋭い爪を振り下ろしてくる。
今までの私なら、避けるだけで精一杯だったその一撃を、私は手にした騎士剣の腹で正面からガキィンッ!とあっさりと受け止めた。
(……押し負けない……!)
それどころか、剣から伝わる私の紫紺の魔力が、魔獣の巨体を押し返していく。
驚愕に目を剥く魔獣の隙を見逃さず、私はオーラを纏わせた刃を一閃させた。
ザシュッ!!!
肉体の再生が追いつかないほどの圧倒的な魔力の一撃が、大型魔獣の巨体を真っ二つに一刀両断する。ドサリ、と倒れ伏す魔獣を見届ける余裕もなく、私は次の標的へと視線を向けた。
言葉を交わさずとも、次にシオンさんがどう動くかが、感覚で手に取るように分かった。魂が繋がっているからだ。
「エレナ、そのまま真っ直ぐ!」
シオンさんの声と同時に、激しい氷結の魔術が放たれ、残りの魔獣たちの足元をガチガチに凍りつかせて拘束する。
「はいっ!」
身動きの取れなくなった敵の懐へ、私は目にも留まらぬ速さで滑り込んだ。
シオンさんが創り出してくれた完璧な隙を、私の剣が正確に切り裂いていく。騎士と魔導師──二人の息の合った猛攻の前に、あれほど絶望的だった大型魔獣の群れは、瞬く間に全滅していった。
バサリ、と最後の魔獣が塵となって消え去り、あたりに静寂が戻る。
「はぁ、はぁ……っ」
剣を引くと、体中を巡っていた心地いい熱がゆっくりと落ち着いていく。
戦いが終わり、緊張の糸が切れたせいで足がふらついた。
冷たい地面に倒れそうになった私の身体を、後ろから伸びてきた温かい腕が、優しく包み込むように抱きとめた。
「よく頑張ったね、僕の可愛い騎士様」
耳元で、シオンさんの少し息の上がった、でも愛おしさに満ちた低音の囁きが響く。
彼の大きな手が、私の首元にそっと触れた。その指先が触れた場所が、じわじわと熱を帯びている。
「あ……」
ふと、シオンさんの服のボタンに反射した自分の姿が目に入った。
騎士服の襟元から覗く私の首元に、淡い蒼色の光を放つ、見慣れない幾何学的な紋様が浮かび上がっている。
それは、大輪の美しい『椿の華』を模した形をしていた。
「シオンさん、これ……」
「気づいたかい? 僕たちの番の契約の証、首元の刻印だよ。……白くて綺麗な君の肌に、僕の蒼い椿が咲いている。本当に綺麗だ」
シオンさんは私の肩に顔を埋め、ふふ、と独占欲を滲ませた愉しげな笑みを漏らす。
「これでもう、君がどれだけ強くなって僕の前に立とうとしても……僕の番だってことは、世界中の誰が見ても一目瞭然だね」
「っ……!」
戦闘時とは違う意味で、顔が爆発しそうに熱くなる。
まだどくどくと高鳴るシオンさんの心音を背中に感じながら、私は彼と本当の意味で一つに繋がったのだという幸福感に、深く身を委ねるのだった。
今までの生身の感覚とは次元が違う。身体が羽のように軽く、まるで世界がスローモーションになったかのように、魔獣の動きがはっきりと見えた。
「ガルルッ──」
正面の魔物が、丸太のような鋭い爪を振り下ろしてくる。
今までの私なら、避けるだけで精一杯だったその一撃を、私は手にした騎士剣の腹で正面からガキィンッ!とあっさりと受け止めた。
(……押し負けない……!)
それどころか、剣から伝わる私の紫紺の魔力が、魔獣の巨体を押し返していく。
驚愕に目を剥く魔獣の隙を見逃さず、私はオーラを纏わせた刃を一閃させた。
ザシュッ!!!
肉体の再生が追いつかないほどの圧倒的な魔力の一撃が、大型魔獣の巨体を真っ二つに一刀両断する。ドサリ、と倒れ伏す魔獣を見届ける余裕もなく、私は次の標的へと視線を向けた。
言葉を交わさずとも、次にシオンさんがどう動くかが、感覚で手に取るように分かった。魂が繋がっているからだ。
「エレナ、そのまま真っ直ぐ!」
シオンさんの声と同時に、激しい氷結の魔術が放たれ、残りの魔獣たちの足元をガチガチに凍りつかせて拘束する。
「はいっ!」
身動きの取れなくなった敵の懐へ、私は目にも留まらぬ速さで滑り込んだ。
シオンさんが創り出してくれた完璧な隙を、私の剣が正確に切り裂いていく。騎士と魔導師──二人の息の合った猛攻の前に、あれほど絶望的だった大型魔獣の群れは、瞬く間に全滅していった。
バサリ、と最後の魔獣が塵となって消え去り、あたりに静寂が戻る。
「はぁ、はぁ……っ」
剣を引くと、体中を巡っていた心地いい熱がゆっくりと落ち着いていく。
戦いが終わり、緊張の糸が切れたせいで足がふらついた。
冷たい地面に倒れそうになった私の身体を、後ろから伸びてきた温かい腕が、優しく包み込むように抱きとめた。
「よく頑張ったね、僕の可愛い騎士様」
耳元で、シオンさんの少し息の上がった、でも愛おしさに満ちた低音の囁きが響く。
彼の大きな手が、私の首元にそっと触れた。その指先が触れた場所が、じわじわと熱を帯びている。
「あ……」
ふと、シオンさんの服のボタンに反射した自分の姿が目に入った。
騎士服の襟元から覗く私の首元に、淡い蒼色の光を放つ、見慣れない幾何学的な紋様が浮かび上がっている。
それは、大輪の美しい『椿の華』を模した形をしていた。
「シオンさん、これ……」
「気づいたかい? 僕たちの番の契約の証、首元の刻印だよ。……白くて綺麗な君の肌に、僕の蒼い椿が咲いている。本当に綺麗だ」
シオンさんは私の肩に顔を埋め、ふふ、と独占欲を滲ませた愉しげな笑みを漏らす。
「これでもう、君がどれだけ強くなって僕の前に立とうとしても……僕の番だってことは、世界中の誰が見ても一目瞭然だね」
「っ……!」
戦闘時とは違う意味で、顔が爆発しそうに熱くなる。
まだどくどくと高鳴るシオンさんの心音を背中に感じながら、私は彼と本当の意味で一つに繋がったのだという幸福感に、深く身を委ねるのだった。
