親友の恋を応援する温かい気持ちが胸に広がる。けれどそれと同時に、ふっと自分の胸の奥にも、一人の少年の姿が浮かび上がった。
白銀の髪に、鮮烈な蒼い瞳。
『後夜祭のダンス、僕と踊ってくれないか』
(シオンさん……。今頃、何をしてるのかな。やっぱり、代表戦の準備かな……)
彼のことを考えただけで、チュロスの甘さとは違う、胸の奥がキュンと締め付けられるような熱さが広がっていく。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ去るものだ。
時計の針が午後を回ると、学園内のアナウンスが、メインイベントの始まりを告げた。
『──全校生徒の皆さんに連絡します。これより演習場特設リングにて、一学年代表者によるエキシビションマッチを開催いたします!』
その声を聞いた瞬間、私の背中に冷たい緊張が走った。
「エレナ!」
ルカくんと別れたマインちゃんが、私の元へと走ってくる。彼女の顔には、もう照れの色はなく、親友の晴れ舞台を心配し、応援する真剣な眼差しがあった。
「午後からの試合、全力で応援してるからね! 特等席で見てるから!」
「うん。ありがとう、マインちゃん。行ってくるね」
マインちゃんに見送られながら、私は一般生徒の歓声が響く大通りを離れ、静まり返った騎士科の代表控室へと向かった。
部屋に入ると、そこにはすでに剣の点検を終えたレインが、長椅子に深く腰掛けて待っていた。
遠くから、特設リングに詰めかけた全校生徒や外部の観客たちの、地鳴りのような大歓声がここまで響いてくる。
「……はぁ」
椅子に座り、自分の膝の上に手を置いた。
見つめると、私の指先が、自分でも驚くほど小刻みに震えている。
これまでの訓練や模擬戦とは格が違う。一年の騎士科の看板を背負って、あの無数の観客の前で戦うのだ。身体強化が使えない私たちが、どこまで通用するのか。
恐怖と緊張が、じわじわと体にまとわりついてくる。
「おいおい、エレナ。そんなにガチガチになるなって」
不意に、レインが呆れたような声を上げて、私の前に歩み寄ってきた。彼はいつもと変わらない、どこか飄々とした、だけど不敵な笑みを浮かべている。
「手が震えてるぜ? あの『アイゼン家の出来損ない』から、生身の剣技で俺を打ち負かすまでになった化け物エレナが、今さら観客ごときにビビってんのかよ」
「レ、レイン……。だって、あんな大歓声、聞いたことないよ……」
「関係ねえよ。やることはいつもと同じだ。あいつらがいくらド派手な魔法をぶっ放してこようが、俺たちがこの数ヶ月、死ぬ気で磨いてきた生身の『剣』と『体捌き』で、全部ぶった斬ってやるだけだろ?」
レインはそう言うと、拳を突き出してきた。
彼のいつもと変わらない軽いノリ、そしてその瞳の奥にある確かな闘志を見ていたら、不思議と冷たくなっていた指先に、じわりと熱が戻ってくるのが分かった。
「……そうだね。私たちがやってきたことは、嘘じゃないもんね」
私は小さく笑い、レインの拳に自分の拳をコツンとぶつけた。
「よし。一年の騎士科を舐めてる魔術科の連中に、俺たちのコンビネーションってやつを叩き込んでやろうぜ!」
レインの言葉に力強く頷き、私たちは立ち上がった。
いよいよ、戦いの舞台へ。
まだ身体強化のリミッターは外れていない。だけど、生身の限界を超えた私たちの戦いが、今ここから始まる。
白銀の髪に、鮮烈な蒼い瞳。
『後夜祭のダンス、僕と踊ってくれないか』
(シオンさん……。今頃、何をしてるのかな。やっぱり、代表戦の準備かな……)
彼のことを考えただけで、チュロスの甘さとは違う、胸の奥がキュンと締め付けられるような熱さが広がっていく。
しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎ去るものだ。
時計の針が午後を回ると、学園内のアナウンスが、メインイベントの始まりを告げた。
『──全校生徒の皆さんに連絡します。これより演習場特設リングにて、一学年代表者によるエキシビションマッチを開催いたします!』
その声を聞いた瞬間、私の背中に冷たい緊張が走った。
「エレナ!」
ルカくんと別れたマインちゃんが、私の元へと走ってくる。彼女の顔には、もう照れの色はなく、親友の晴れ舞台を心配し、応援する真剣な眼差しがあった。
「午後からの試合、全力で応援してるからね! 特等席で見てるから!」
「うん。ありがとう、マインちゃん。行ってくるね」
マインちゃんに見送られながら、私は一般生徒の歓声が響く大通りを離れ、静まり返った騎士科の代表控室へと向かった。
部屋に入ると、そこにはすでに剣の点検を終えたレインが、長椅子に深く腰掛けて待っていた。
遠くから、特設リングに詰めかけた全校生徒や外部の観客たちの、地鳴りのような大歓声がここまで響いてくる。
「……はぁ」
椅子に座り、自分の膝の上に手を置いた。
見つめると、私の指先が、自分でも驚くほど小刻みに震えている。
これまでの訓練や模擬戦とは格が違う。一年の騎士科の看板を背負って、あの無数の観客の前で戦うのだ。身体強化が使えない私たちが、どこまで通用するのか。
恐怖と緊張が、じわじわと体にまとわりついてくる。
「おいおい、エレナ。そんなにガチガチになるなって」
不意に、レインが呆れたような声を上げて、私の前に歩み寄ってきた。彼はいつもと変わらない、どこか飄々とした、だけど不敵な笑みを浮かべている。
「手が震えてるぜ? あの『アイゼン家の出来損ない』から、生身の剣技で俺を打ち負かすまでになった化け物エレナが、今さら観客ごときにビビってんのかよ」
「レ、レイン……。だって、あんな大歓声、聞いたことないよ……」
「関係ねえよ。やることはいつもと同じだ。あいつらがいくらド派手な魔法をぶっ放してこようが、俺たちがこの数ヶ月、死ぬ気で磨いてきた生身の『剣』と『体捌き』で、全部ぶった斬ってやるだけだろ?」
レインはそう言うと、拳を突き出してきた。
彼のいつもと変わらない軽いノリ、そしてその瞳の奥にある確かな闘志を見ていたら、不思議と冷たくなっていた指先に、じわりと熱が戻ってくるのが分かった。
「……そうだね。私たちがやってきたことは、嘘じゃないもんね」
私は小さく笑い、レインの拳に自分の拳をコツンとぶつけた。
「よし。一年の騎士科を舐めてる魔術科の連中に、俺たちのコンビネーションってやつを叩き込んでやろうぜ!」
レインの言葉に力強く頷き、私たちは立ち上がった。
いよいよ、戦いの舞台へ。
まだ身体強化のリミッターは外れていない。だけど、生身の限界を超えた私たちの戦いが、今ここから始まる。
