「おい、そこまでだ。集まれ」
私たちの手合わせが終わるのを見計らったかのように、グレン教官の野太い声が演習場に響いた。
散らばっていた生徒たちが、一斉に教官の前へと整列する。いつもなら「声が小さい!」「動きが遅い!」と怒号が飛ぶところだが、今日の教官はどこかニヤニヤとした、獰猛な笑みを浮かべていた。
「おい、お前ら。そわそわしている理由は分かっている。……例の『文化祭の代表戦』、我が一年の騎士科から出場する二人の代表者が決定した」
その言葉に、演習場全体の空気が一瞬で張り詰めた。誰もが息を呑み、教官の手元にある一枚の書状に視線を集中させる。
「この数ヶ月の座学の成績、そして何より実技訓練での戦績。それら全てを考慮し、俺と学園長が選出した。……名前を呼ばれた者は前に出ろ」
教官が書状を広げ、不敵な目をこちらに向けた。
「一人目──レイン・フォレスト!」
「お、やっぱり俺ですか! ありがとうございます、教官!」
レインが待ってましたとばかりに、いつもの軽いノリで一歩前に出る。けれどその瞳には、騎士としての確かな闘志が宿っていた。
クラスメイトたちからも「まあ、フォレストなら納得だな」「身体強化なしであれだけ動けるんだから当然か」と、納得の呟きが漏れる。
「そして、二人目──」
教官はそこで一度言葉を切り、私を真っ直ぐに見据えた。
「──エレナ・アイゼン!」
「え……っ」
あまりの衝撃に、心臓が跳ね上がった。
マインちゃんが隣で「きゃあ!」と小さく悲鳴のような歓声を上げる。
「きょ、教官、私ですか……!?」
「そうだ。お前だ、アイゼン。何か文句でもあるか?」
「いえ、文句なんて……でも、私はまだ、身体強化も使えないのに……」
思わず口籠る私に、グレン教官はふっと鼻で笑い、だけどこれまでで一番真剣な眼差しを向けてきた。
「今の段階で、身体強化が使える奴らが使えないお前に負けている。それが全てだ。ハンデを背負いながら、生身の剣技だけでこのクラスの誰よりも努力し、誰よりも勝利をもぎ取ってきたのはどこのどいつだ?」
教官の言葉に、周りの生徒たちが一斉に私を見た。
そこには以前のような侮蔑の色は一切ない。皆、私の血の滲むような努力を、この数ヶ月間ずっと間近で見てきたのだ。誰もが静かに、私の選出を認めるような目をしていた。
「自信を持て、アイゼン。お前はもう『出来損ない』なんかじゃない。一年の騎士科を背負って立つ、立派な代表だ」
「……はい!」
胸の奥から熱いものが込み上げ、私は強く頷いて一歩前へ出た。レインと並び、教官と向き合う。
「よし。魔術科の代表は、すでに別の二人が決まっているそうだ。……そのうち一人は、言わずもがなあのエストレヤ(シオン)だ」
シオンさんの名前が出た瞬間、私の背筋がピシッと伸びた。
「お前たち二人は、身体強化が使えないという致命的なハンデがある。だが、だからこそ見せつけてやれ。騎士の剣が、魔術科の鼻を明かすところをな!」
「「はい!!」」
レインと声を揃えて返事をする。
(シオンさん……。ついに、同じ舞台に立てる)
まだ番としては未契約。だけど、代表同士としての戦いが始まる。
緊張で震えそうになる手をギュッと握り締め、私は演習場の窓から見える、青い秋の空を見上げた。
私たちの手合わせが終わるのを見計らったかのように、グレン教官の野太い声が演習場に響いた。
散らばっていた生徒たちが、一斉に教官の前へと整列する。いつもなら「声が小さい!」「動きが遅い!」と怒号が飛ぶところだが、今日の教官はどこかニヤニヤとした、獰猛な笑みを浮かべていた。
「おい、お前ら。そわそわしている理由は分かっている。……例の『文化祭の代表戦』、我が一年の騎士科から出場する二人の代表者が決定した」
その言葉に、演習場全体の空気が一瞬で張り詰めた。誰もが息を呑み、教官の手元にある一枚の書状に視線を集中させる。
「この数ヶ月の座学の成績、そして何より実技訓練での戦績。それら全てを考慮し、俺と学園長が選出した。……名前を呼ばれた者は前に出ろ」
教官が書状を広げ、不敵な目をこちらに向けた。
「一人目──レイン・フォレスト!」
「お、やっぱり俺ですか! ありがとうございます、教官!」
レインが待ってましたとばかりに、いつもの軽いノリで一歩前に出る。けれどその瞳には、騎士としての確かな闘志が宿っていた。
クラスメイトたちからも「まあ、フォレストなら納得だな」「身体強化なしであれだけ動けるんだから当然か」と、納得の呟きが漏れる。
「そして、二人目──」
教官はそこで一度言葉を切り、私を真っ直ぐに見据えた。
「──エレナ・アイゼン!」
「え……っ」
あまりの衝撃に、心臓が跳ね上がった。
マインちゃんが隣で「きゃあ!」と小さく悲鳴のような歓声を上げる。
「きょ、教官、私ですか……!?」
「そうだ。お前だ、アイゼン。何か文句でもあるか?」
「いえ、文句なんて……でも、私はまだ、身体強化も使えないのに……」
思わず口籠る私に、グレン教官はふっと鼻で笑い、だけどこれまでで一番真剣な眼差しを向けてきた。
「今の段階で、身体強化が使える奴らが使えないお前に負けている。それが全てだ。ハンデを背負いながら、生身の剣技だけでこのクラスの誰よりも努力し、誰よりも勝利をもぎ取ってきたのはどこのどいつだ?」
教官の言葉に、周りの生徒たちが一斉に私を見た。
そこには以前のような侮蔑の色は一切ない。皆、私の血の滲むような努力を、この数ヶ月間ずっと間近で見てきたのだ。誰もが静かに、私の選出を認めるような目をしていた。
「自信を持て、アイゼン。お前はもう『出来損ない』なんかじゃない。一年の騎士科を背負って立つ、立派な代表だ」
「……はい!」
胸の奥から熱いものが込み上げ、私は強く頷いて一歩前へ出た。レインと並び、教官と向き合う。
「よし。魔術科の代表は、すでに別の二人が決まっているそうだ。……そのうち一人は、言わずもがなあのエストレヤ(シオン)だ」
シオンさんの名前が出た瞬間、私の背筋がピシッと伸びた。
「お前たち二人は、身体強化が使えないという致命的なハンデがある。だが、だからこそ見せつけてやれ。騎士の剣が、魔術科の鼻を明かすところをな!」
「「はい!!」」
レインと声を揃えて返事をする。
(シオンさん……。ついに、同じ舞台に立てる)
まだ番としては未契約。だけど、代表同士としての戦いが始まる。
緊張で震えそうになる手をギュッと握り締め、私は演習場の窓から見える、青い秋の空を見上げた。
