蒼い椿椿と騎士科の少女

「──う、動けない……。マインちゃん、悪いけど私の骨は演習場に埋めておいて……」
「無理よエレナ、私だって自分の骨を運ぶので精一杯なんだから……」
初めての合同授業から、早くも二週間が経とうとしていた。
寮の食堂で、私とマインちゃんはテーブルに突っ伏したまま泥のように融けていた。
午前中の座学(魔物の生態や霊脈の講義)は何とか耐えられるものの、午後からのグレン教官による実技訓練は、まさに地獄の一言に尽きる。
「騎士の基本は強靭な肉体だ!」という教官の怒声のもと、重い木剣を何百回と振らされ、防具をつけた状態でのランニング。
毎日、全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
「よお、お疲れさん。初日から比べたら、二人とも随分サマになってきたじゃん」
トレイに山盛りの白米と唐揚げを乗せたレインが、ケロッとした顔で私たちの前の席に座る。相変わらずこの男の体力は底が知れない。
「レインはいいよね、涼しい顔して……。私なんて、腕が痛すぎて明日髪の毛結べないかもしれない」
「ハハ、まあ俺は昔から親父に仕込まれてたからな。でもさ、エレナ。今日の打ち合い、お前まじで鋭かったぜ? 俺の太刀筋、一回完全に弾いただろ。あれにはビビったわ」
レインが唐揚げを口に放り込みながら、ニカッと笑う。
お世辞かもしれないけれど、その言葉は私の乾いた心に嬉しく染み渡った。
『アイゼン家の恥晒し』『出来損ない』
お父様に言われた冷酷な言葉は、今でも思い出すと胸がキリキリと痛む。
だけど、ここで立ち止まるわけにはいかないのだ。
(もっと、強くならなきゃ。シオンさんの隣に立っても、恥ずかしくないくらいに……)
毎晩、目を閉じるたびに思い出すのは、あの魔力感知の瞬間に触れたシオンさんの澄んだ蒼い瞳と、驚くほど温かかった魔力の感覚。

私と彼にしか分からないあの特別な絆が、今の私の、何よりの原動力になっていた。

そんなある日のホームルーム。
教壇に立ったグレン教官が、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべて黒板を叩いた。
「よし、お前ら。基礎体力の底上げは順調のようだな。……明日、二回目の魔術科との合同授業を行う!」

その言葉に、教室の空気が一気に跳ね上がった。
「今回は、前回のようにおててを合わせる生温い練習じゃねえ。実戦形式の『模擬戦(対抗戦)』だ。騎士科が前衛として突っ込み、魔術科が後衛から術を放つ。お前たちの剣が通用するか、あるいは魔術に焼き尽くされるか、身をもって知るがいい!」
「模擬戦……!」
マインちゃんと顔を見合わせる。
ついに、本格的な訓練が始まる。それと同時に、私の胸は激しく高鳴っていた。
(明日……また、シオンさんに会える。あの人の『本当の力』が、見られるんだ)
緊張と、それを上回るほどの期待で、私の手は自然とギュッと握り締められていた。