蒼い椿椿と騎士科の少女

「エレナ、部屋割り見にいこ!一緒の部屋だといいなぁ」
「多分名簿順だから、同じ部屋じゃないかな?」
マインちゃんの姓は「アイサハイト」私の姓は「アイゼン」で、名簿は名前順だから騎士科の一番はマインちゃんで、二番は私だ。
そんな話をしながら、マインちゃんと私はドキドキしながら部屋割りが書かれた紙を覗き込み、自分の名前を探す。そこに書かれたあったのは…
『137号室  マイン・アイルハイト エレナ・アイゼン』
「「やったーー!」」
見事に声がハモった。
「じゃあ、荷物置きに行こうか。」
おトネさんから鍵を受け取り、部屋に向かった。

137号室の扉を開けると、そこは畳の心地いい匂いが広がる、和洋折衷の綺麗な二人部屋だった。
窓からは夕暮れに染まる学院の敷地が一望できる。
「うわぁ、結構広いね!」
マインちゃんが嬉しそうにベッドに飛び込む。私も山のような荷物を床に下ろし、ようやくほっと一息をついた。
二人で協力しながら荷解きをしていると、自然とお父様とのやり取りが頭をよぎってしまう。
けれど、隣で「このクッションどこに置こう?」とはしゃいでいるマインちゃんを見ていると、不思議と「落ち込んでいる暇はないな」と思えた。
実家は私を出来損ない扱いしたけれど、ここにはマインちゃんがいて、前の席にはレインがいて、大ナタを持ったおトネさんがいる。

「……よし、絶対に見返してやるんだから」
「ん? エレナ、何か言った?」
「ううん、なんでもない! 早く片付けて、おトネさんの特製牛鍋食べに行こう!」
「賛成! お腹ペコペコ!」
その日の夜、食堂でみんなと囲んだ牛鍋は、今まで実家で食べてきたどんな高級な料理よりも温かくて、美味しかった。

深夜。
自分のベッドに入り、天井を見つめる。
明日からは午前が座学、午後が実技訓練だ。
3年以内に、最高峰の魔術士と番契約を結ぶ──その過酷な条件をクリアするためには、一刻も無駄にはできない。

(……シオン・エストレヤ)
目を閉じると、選定の儀であの美しく澄んだ光を放っていた、青年の蒼い瞳が脳裏をよぎった。
アイゼン家の落ちこぼれなんて、絶対に誰にも言わせない。
私はグッと拳を握りしめ、静かに瞼を閉じた。

激動の学園生活が、いよいよ明日、幕を開ける。