卒業アルバムのアイツが、頭から離れない‼

 大学に行けば媛守がいつもいた。
 でももう以前のように付き合っているのか不安がる俺じゃない。隣にいるのは俺のことが好きな叶南で、叶南の隣には叶南が好きな俺だ。
 講義の時間も終え、今日はもう帰るだけだ。
――デートして帰れるかな。
 背筋を伸ばし、机に広げていた教科書などを鞄にしまう叶南に声を掛けようとすると横を向く。すると、終わったはずで席を立つ学生の方が多い中、空いていた俺が座っていない方の叶南の隣に腰かける人物がいた。 

「幸せそうな間抜け顔だな」
「貫太‼」

 俺が驚き声を上げると、俺と貫太の真ん中で不愛想に叶南が目を細める。

「かわいいって言え」

 貫太には当たりが強いと度々思ってきたが、やはりそれは勘違いではないのだ。

「はー? 言っていいのかよ」
「貫太には言われたら鳥肌立ちそう」

 俺は間髪入れずに言われるのを阻止した。

「まだかわいいって言ったら嫌がると思ってるの?」

 自分は許されているのだと叶南は鼻を鳴らす。そして誇らしげに続ける叶南に苦笑し、口角を上げた時だった。

「俺は言うけどねー。貫太みたいに怒られないから」

 俺の顔からわかりやすく笑顔が消えるのを感じる。
 なんですぐに俺たちのパズルはバラバラになるんだろう。完全なピースになる日はいつなんだ。いつまで歪でいるのか気が遠くなる。
 俺はわざと声のトーンを下げて言う。

「いつから貫太呼び?」
「あ……」

 叶南の目が泳いだ。
 すかさず口を開いて追い打ちをかける。

「それに俺が貫太にかわいいって言って怒ったことも知ってるの?」

 視界から貫太が忍び足でこっそり消えようとするのを俺は逃さなかった。

「貫太」
「はい……」

 諦めたように、こちらへ戻ってくる。座らずに立ったままの貫太に問う。

「叶南のこと知ってたの?」
「……言っていいのか?」

 目で合図を送って確認を取る貫太と叶南に胸がざわつく。

「俺が言うから。貫太巻き込んでごめんな」
「そ。またな」

 俺らが返事する前に貫太は踵を返し、ゆったりと教室を後にした。
 教室に残された俺たちは、その場で話そうとしたが次の講義があるらしく入れ替わるように学生が教室に流れ込んできたため、外に出た。
 外に出たとき叶南が少し安堵の表情を見せていたのが気にかかった。
――そんなに2人でいるのが息苦しかったかよ。
 秘密にしているのは叶南たちの方なのに、俺が悪いことをしている気分で不快だ。
 ここ最近、叶南のことで振り回されすぎて疲れを感じる。
――こんなの恋愛じゃない。
 大学の人通りの少ない一角で、向かい合って話すことにした。
――色々知れたって浮かれてたし、未だに俺のことが好きな理由も後から聞けばいいと思っていた。だけど、もう待つのも懲りた。俺はそんなに我慢強くないから。
 俺は叶南が言葉を発する前にと先手を打つ。

「なぁ、叶南。俺たち別れ……っ!」

 叶南の顔が一気に近づく。今までより一段と近いその距離に息を止めると強引に唇を奪われる。
――な、にっ⁉
 耳まで熱い。
 キスされていると認識できたところで、軽く触れていただけの唇を叶南がグッと押し付け腰に手を回す。
――息ってどうやって吸うんだ……!
 戸惑う俺の手首を逃走を阻止するように握り、顔の位置は変えずゆったり唇だけを離す。そして含み笑いをされた。

「もう知らない。離さないし別れてあげないって前に言ったの忘れたわけじゃないよね? ここまで一緒にいたんだから同意したも同然だよ?」

 唇に空気を感じたと思ったら、触れるだけのキスをされる。

「別れるなんて許さないから」

 瞼が半分落ちジッと見つめられる叶南の目が鷹が獲物を狙う瞳のように感じさせる。
 ここまでの鋭い眼光を間近にしたのは初めてで身体が硬直して動けない。
 振っていいって言ってた新勧のときの余裕そうな叶南はどこに行ったんだよ……‼
 こんなことを思いながらも、本当は叶南が別れると言われないのを理解していた上で口に出して叶南の愛を確認しようとした自分が一番狡いんだ――