祥吾はその少女を屋敷に連れ帰ることにした
上空からの捜索で得た情報から
少女は森の外れ近くにあった集落の者の可能性が高かった
しかし、そこに少女を連れて行くにはいくつかの問題があった
一つは、その地点から集落までかなりの距離があること
また、少女の傷や痣から、少女を害する者が集落にいる可能性があること
そして、一番の理由は、少女の耳が、常人に比べ長く尖っていたこと
しかも、横に
併せて、この地点は屋敷から、それほど離れていなかった
千草も反対はしなかった
それどころか、一番に少女を屋敷に連れて帰ると言い出した
祥吾はその理由を尋ねなかった
かわりに、背中の軍刀をはずし、少女を背負った
千草が、私がと言ったが首を振り、軍刀を渡した
「大丈夫だ
アズキがいるから、襲ってくるものはいない」
そのとおりに、屋敷へ着くまで襲ってくるものはいなかった
もっとも、アズキが地響きを立てて木々を踏み潰していくので
そこから逃げ惑うのに忙しかったせいもあるのだろう
屋敷に着くと、千草は風呂を沸かし始めた
その間に、自分の服の入っているタンスから
ちょうど良い大きさの服を選び脱衣場に置いた
それから、風呂場に少女と入った
脱衣場から出てきたときには
顔や全身の汚れはきれいに拭われていた
少し長めの髪は洗われ、頭の上で巻かれていた
そのため、横に尖った耳がよけいに目立った
改めて見ると少女の美しさは際立っていた
と、同時に傷と痣が、理不尽さを際立たせていた
「どうしてここまで――」
千草の声は、憤りに満ちていた
夫婦の寝室に布団を敷き少女を寝かせる
その当然の如くの行動に祥吾が尋ねる
「あーえーと ここへ寝かせるんだな?」
「はい、この子が起きるまで
見守らなければなりませんので」
「そうだよな、うん、そのとおりだ」
部屋のちょうど真ん中にひかれたフトンのせいで
両側に祥吾と千草が寝るようになる
一抹の寂しさを感じる祥吾であった
「旦那様、夕餉の支度をしてまいりますので
しばし、き――い、いえ、この子を見ていただけますでしょうか」
「それはかまわないのだが、今、『この子』の前に何か言いかけてなかったか?」
「い、いえ、そんなことは――」
言いよどむ千草に、釘を差そうとする祥吾
「いいか、この子は アズキとはちがう
自分の名前があるはずだから、勝手に名前をつけてはだめだぞ」
「分かっております
ですが、この子と言葉が交わせるかは分かりませんし
気がつくまで、この子と呼ぶのはどうかと思いまして」
「そ、それはそうだが」
「では、もし、言葉が通じないときは、名前をつけても良いでしょうか」
「そ、そうだな」
「有り難うございます、『きなこ』よかったね」
千草が少女に呼びかける
「お、おい、まだ言葉が通じないとは決まってないぞ
それになんだ、『きなこ』って」
「私、子のつく名前にあこがれてましたの
ですから、この子を見たときすぐに『きなこ』が頭に浮かびましたの」
そう言ったあと
「それに、気絶しておりますから、今も言葉は通じませんわ」
してやったりと悪戯っぽく笑った
千草の『小賢しさ』にやり込められたかっこうの祥吾だが
その得意満面な顔が可愛くて、まあいいかと思うのだった
上空からの捜索で得た情報から
少女は森の外れ近くにあった集落の者の可能性が高かった
しかし、そこに少女を連れて行くにはいくつかの問題があった
一つは、その地点から集落までかなりの距離があること
また、少女の傷や痣から、少女を害する者が集落にいる可能性があること
そして、一番の理由は、少女の耳が、常人に比べ長く尖っていたこと
しかも、横に
併せて、この地点は屋敷から、それほど離れていなかった
千草も反対はしなかった
それどころか、一番に少女を屋敷に連れて帰ると言い出した
祥吾はその理由を尋ねなかった
かわりに、背中の軍刀をはずし、少女を背負った
千草が、私がと言ったが首を振り、軍刀を渡した
「大丈夫だ
アズキがいるから、襲ってくるものはいない」
そのとおりに、屋敷へ着くまで襲ってくるものはいなかった
もっとも、アズキが地響きを立てて木々を踏み潰していくので
そこから逃げ惑うのに忙しかったせいもあるのだろう
屋敷に着くと、千草は風呂を沸かし始めた
その間に、自分の服の入っているタンスから
ちょうど良い大きさの服を選び脱衣場に置いた
それから、風呂場に少女と入った
脱衣場から出てきたときには
顔や全身の汚れはきれいに拭われていた
少し長めの髪は洗われ、頭の上で巻かれていた
そのため、横に尖った耳がよけいに目立った
改めて見ると少女の美しさは際立っていた
と、同時に傷と痣が、理不尽さを際立たせていた
「どうしてここまで――」
千草の声は、憤りに満ちていた
夫婦の寝室に布団を敷き少女を寝かせる
その当然の如くの行動に祥吾が尋ねる
「あーえーと ここへ寝かせるんだな?」
「はい、この子が起きるまで
見守らなければなりませんので」
「そうだよな、うん、そのとおりだ」
部屋のちょうど真ん中にひかれたフトンのせいで
両側に祥吾と千草が寝るようになる
一抹の寂しさを感じる祥吾であった
「旦那様、夕餉の支度をしてまいりますので
しばし、き――い、いえ、この子を見ていただけますでしょうか」
「それはかまわないのだが、今、『この子』の前に何か言いかけてなかったか?」
「い、いえ、そんなことは――」
言いよどむ千草に、釘を差そうとする祥吾
「いいか、この子は アズキとはちがう
自分の名前があるはずだから、勝手に名前をつけてはだめだぞ」
「分かっております
ですが、この子と言葉が交わせるかは分かりませんし
気がつくまで、この子と呼ぶのはどうかと思いまして」
「そ、それはそうだが」
「では、もし、言葉が通じないときは、名前をつけても良いでしょうか」
「そ、そうだな」
「有り難うございます、『きなこ』よかったね」
千草が少女に呼びかける
「お、おい、まだ言葉が通じないとは決まってないぞ
それになんだ、『きなこ』って」
「私、子のつく名前にあこがれてましたの
ですから、この子を見たときすぐに『きなこ』が頭に浮かびましたの」
そう言ったあと
「それに、気絶しておりますから、今も言葉は通じませんわ」
してやったりと悪戯っぽく笑った
千草の『小賢しさ』にやり込められたかっこうの祥吾だが
その得意満面な顔が可愛くて、まあいいかと思うのだった
