祥吾は、次の日から本格的な森の捜索に取りかかった
いや、取りかからされた
千草の熱量は、すさまじく
祥吾の意思は撤退せざるを得なかった
今日の捜索は、昨日と反対方向を調べようと考えていた
屋敷図から見て、昨日は東方向へ向かったが
今日は、西方向へ向かう
祥吾としては、今後
屋敷の東西南北すべての方向を調べて行くつもりだった
千草は、嬉々として
早起きをし、朝餉をつくり
弁当を作り
屋敷の掃除、庭掃除、家畜の世話などを
朝のうちに済ませ
捜索の準備を整えた
採集鞄とおもわれる鞄を肩にかけ
疾風には、大きめの箱を乗せていた
「旦那様、参りましょう!」
まぶしいほどの笑顔は、これまでになく生き生きとして
上気した頬も含め、祥吾がしばらく見とれるほどだった
そんな千草の無防備なほどの姿を、
祥吾は、大いなる喜びと、少しの痛みを覚えながら見ていた
「旦那様?」
「いや、何でもない 行こうか」
「はい!」
いつもより幼く見える千草の、元気いっぱいの声に
疾風とアズキが応える
ただ一人、神爺だけが不貞腐れている
「なんで、わしもついて行かねばならんのだ」
「そういうな
たよりにしてるんだぞ」
祥吾が真顔で言うと、とたんに神爺の顔がゆるむ
「そうかのう
まあ、神様じゃからの」
(まったく、扱いやすい神様だ)
そう思いつつも、祖父とは、こんなやりとりをしたかったと
叶わなかった憧憬を、胸の奥で描いてみる
「旦那様! 見てください
見たこともない植物でいっぱいです!」
千草の声に、その憧憬はかき消えた
昨日は、神爺の騒動で
ろくに植物を調べることが出来なかった千草は
思う存分に調べることが出来るとあって
ウキウキと周りを闊歩していた
その様子と周りの景色が異常なほどにそぐわない
巨木たちの白骨を思わせる根が骸のように累々と横たわる森は
真昼の光を吸い込む不自然なほどの静謐に支配されていたのだが
今や、千草と疾風、アズキの分からない声の掛け合いで
台無しになっていた
「疾風、背中の箱を下ろして」
「ブルッ、ブルッ」
「アズキ、これは食することが出来ますか」
「グォ? グォ?」
「まったく、こちらが神経をとがらせているのが
道化のように思えるな」
疾風から箱を降ろしながら、祥吾は疲れたように肩をすくめた
その時、三人(?)で相変わらず騒いでいた千草が
片手を掲げ二頭を制した
「千草、どうした?」
「水です」
耳を澄ませているのか、片手を耳に当て千草が言った
「川なら、昨日もあっただろ」
「いえ、流れる音では鳴く
水の落ちる音がします」
「落ちる? ……瀧か!?」
肯く千草が、走り出す
すかさず疾風とアズキが後を追う
祥吾と神爺は置いてけぼりだ
(なんで、毎度こうなるんだー!)
いや、取りかからされた
千草の熱量は、すさまじく
祥吾の意思は撤退せざるを得なかった
今日の捜索は、昨日と反対方向を調べようと考えていた
屋敷図から見て、昨日は東方向へ向かったが
今日は、西方向へ向かう
祥吾としては、今後
屋敷の東西南北すべての方向を調べて行くつもりだった
千草は、嬉々として
早起きをし、朝餉をつくり
弁当を作り
屋敷の掃除、庭掃除、家畜の世話などを
朝のうちに済ませ
捜索の準備を整えた
採集鞄とおもわれる鞄を肩にかけ
疾風には、大きめの箱を乗せていた
「旦那様、参りましょう!」
まぶしいほどの笑顔は、これまでになく生き生きとして
上気した頬も含め、祥吾がしばらく見とれるほどだった
そんな千草の無防備なほどの姿を、
祥吾は、大いなる喜びと、少しの痛みを覚えながら見ていた
「旦那様?」
「いや、何でもない 行こうか」
「はい!」
いつもより幼く見える千草の、元気いっぱいの声に
疾風とアズキが応える
ただ一人、神爺だけが不貞腐れている
「なんで、わしもついて行かねばならんのだ」
「そういうな
たよりにしてるんだぞ」
祥吾が真顔で言うと、とたんに神爺の顔がゆるむ
「そうかのう
まあ、神様じゃからの」
(まったく、扱いやすい神様だ)
そう思いつつも、祖父とは、こんなやりとりをしたかったと
叶わなかった憧憬を、胸の奥で描いてみる
「旦那様! 見てください
見たこともない植物でいっぱいです!」
千草の声に、その憧憬はかき消えた
昨日は、神爺の騒動で
ろくに植物を調べることが出来なかった千草は
思う存分に調べることが出来るとあって
ウキウキと周りを闊歩していた
その様子と周りの景色が異常なほどにそぐわない
巨木たちの白骨を思わせる根が骸のように累々と横たわる森は
真昼の光を吸い込む不自然なほどの静謐に支配されていたのだが
今や、千草と疾風、アズキの分からない声の掛け合いで
台無しになっていた
「疾風、背中の箱を下ろして」
「ブルッ、ブルッ」
「アズキ、これは食することが出来ますか」
「グォ? グォ?」
「まったく、こちらが神経をとがらせているのが
道化のように思えるな」
疾風から箱を降ろしながら、祥吾は疲れたように肩をすくめた
その時、三人(?)で相変わらず騒いでいた千草が
片手を掲げ二頭を制した
「千草、どうした?」
「水です」
耳を澄ませているのか、片手を耳に当て千草が言った
「川なら、昨日もあっただろ」
「いえ、流れる音では鳴く
水の落ちる音がします」
「落ちる? ……瀧か!?」
肯く千草が、走り出す
すかさず疾風とアズキが後を追う
祥吾と神爺は置いてけぼりだ
(なんで、毎度こうなるんだー!)
