とある大正新婚夫婦の異世界転移サバイバル!日記 〜動植物学者の父に鍛えられたマイペース妻の知識がチートすぎて、未知の魔境を無双でまったり開拓していきます〜

「あのぉ 旦那様
 何故そんなにお怒りのですか?」
「い、いや、千草は気にしなくても良い」
言えるわけがない祥吾は、言葉を濁す

「そうは参りません
 旦那様が、どういうことで喜ばれ
 どういうことで悲しまれ、お怒りになるのか
 私は、つ、妻として知りとうございます」
食い下がる千草は、『妻』と詰まりながら言う
それが妙に嬉しく、にやける祥吾

「そ、そうか、殊勝な心がけだが、それでは、千草も教えてくれるのだな」
「えっ?」
「俺も、千草が、なにで喜び、悲しみ、怒るかを知りたいのだ
 お、夫として」
うまく返したと思ったが、『夫』で詰まる祥吾

ふと見ると、屋敷神が、ニヤニヤとこちらを見ている

「何が、可笑しい?」
祥吾が厳しい表情に戻って言う

「いやぁ よきかなよきかな
 夫婦仲むつまじきは重畳。家も安泰というものじゃ」

「屋敷神様、そう見えますでしょうか」
千草が、不意に真剣な顔になって尋ねた

屋敷神は、まじめな顔に戻って千草を見る
だが、次の瞬間には破顔して答える

「何を言っておる
 夫を立て、敬い、尽くしておるではないか」
「ですが——」
言いかける千草を、手を上げて止める

「そなたは、結界があると分かったとき、
 真っ先にどう思ったかの?」

その言葉にはっとなる千草
「そのようになっておろう
 それが答えじゃ」
「では、あれは……」
屋敷神が大きくうなずく

「まだまだ先は長いかもしれぬ
 じゃが、今の心のままに進むがよい
 さすれば……な」
その言葉に、両手を胸に当て、静かに目を閉じた
それから、深々と屋敷神に頭を下げた
その瞬間、祥吾には千草の口が小さく震えているように見えた

また、二人だけが分かる会話のやりとりに、
取り残された祥吾は、屋敷神にやつ当たる

「おい、もっともらしい事を言っているが、
 きさまは、色ぼけじじだからな」

「そうじゃのう、では、
 おぬしが何を怒っており、
 何故わしを色ぼけじじいと呼んでおるかを
 奥方に、懇切丁寧に説明しようかの」

「私が間違っておりました
 あなたは、間違いなく屋敷神様です」