無意味な戦いを繰り広げたせいで、無駄に疲れた二人は、
やっと妥協点を見いだした。
結界の外へ行くことを許す代わりに、自分と疾風を必ず連れて行くこと
「旦那様は分かりますが、なぜ、疾風を?」
「何かあったときに、千草を乗せて結果以内へ逃がすためだ」
「旦那様は?」
「お前を逃がすための時間を稼ぐ」
「いけません! それでは、本末転倒です! 私が、旦那様が逃れるため時間を稼ぎます!」
「この前も言ったが、俺がお前をまもりたいのだ」
祥吾は、慎重に言葉を選んで言った。
この間の表情が消えた千草を思い出す。
千草は、とまどいながらも頬染める
「しかし——」
「それでは、外へ行くのはあきらめるか?」
「いえ、それは——」
どちらかを選ぶ葛藤に千草は言葉が続かない
だが、やがて意を決したように言った
「……分かりました。危険な場合は、疾風と共に逃げます。
けれど、旦那様も、決して無理をなさらないで下さい」
その目は真剣な耀きを帯びていたのだが——
祥吾と疾風は目と目で会話した
(本当に逃げると思うか?)
疾風は、自信たっぷりに首を横に振った
とりあえず、形の上では、約束させたが、
すぐにでも、外へ行こうとする千草を、
祥吾は、留めた。
「その前に、やるべきことがある
千草は不満げに問うてくる
「なんでございましょう」
「この屋敷と敷地の状況を確認することだ
『敵を知り己を知れば百戦危うからず』という言葉がある
まず、この屋敷の状況を正確に把握して——」
「それなら、もう終わっております」
さえぎるように千草が言った。
その意外な答えに、
「はあ?」
と間の抜けた声が出る。
「な、なに、どういうことだ?」
「こちらにおいで下さい」
千草は、そう言うと、祥吾を彼の書斎に連れていき、
積まれたいたていた、資料の一番上にあったものを
机に広げた。
「これをご覧下さい」
それは、この屋敷の配置図だった。
「千草、これはどうしたのだ」
驚いた祥吾が問うと、
「ここに置いてありました」
「ここに? どうして千草は、この図を知っていたのだ」
「それは——」
千草が、急に言いにくそうに口ごもる。
「勝手に俺の部屋の入って資料を見たのか? それなら気にしなくても良い」
祥吾は度量の大きさを示そうと鷹揚に言った。
「はい、申し訳ありません。地震があった翌日、
旦那様の言われる『孫子』の言葉を、私も思い出しまして
この屋敷と敷地を調べる資料がないかを、ここに探しに参ったのです。
旦那様の許可をいただかねばと思ったのですが、
何分、そのぉ……」
再び、言いにくそうに口ごもる千草
「すいません……。わかりました。もうそれ以上は言わないで下さい……」
涙目になりそうな祥吾を、窓の外で疾風がヒヒーンと笑った
やっと妥協点を見いだした。
結界の外へ行くことを許す代わりに、自分と疾風を必ず連れて行くこと
「旦那様は分かりますが、なぜ、疾風を?」
「何かあったときに、千草を乗せて結果以内へ逃がすためだ」
「旦那様は?」
「お前を逃がすための時間を稼ぐ」
「いけません! それでは、本末転倒です! 私が、旦那様が逃れるため時間を稼ぎます!」
「この前も言ったが、俺がお前をまもりたいのだ」
祥吾は、慎重に言葉を選んで言った。
この間の表情が消えた千草を思い出す。
千草は、とまどいながらも頬染める
「しかし——」
「それでは、外へ行くのはあきらめるか?」
「いえ、それは——」
どちらかを選ぶ葛藤に千草は言葉が続かない
だが、やがて意を決したように言った
「……分かりました。危険な場合は、疾風と共に逃げます。
けれど、旦那様も、決して無理をなさらないで下さい」
その目は真剣な耀きを帯びていたのだが——
祥吾と疾風は目と目で会話した
(本当に逃げると思うか?)
疾風は、自信たっぷりに首を横に振った
とりあえず、形の上では、約束させたが、
すぐにでも、外へ行こうとする千草を、
祥吾は、留めた。
「その前に、やるべきことがある
千草は不満げに問うてくる
「なんでございましょう」
「この屋敷と敷地の状況を確認することだ
『敵を知り己を知れば百戦危うからず』という言葉がある
まず、この屋敷の状況を正確に把握して——」
「それなら、もう終わっております」
さえぎるように千草が言った。
その意外な答えに、
「はあ?」
と間の抜けた声が出る。
「な、なに、どういうことだ?」
「こちらにおいで下さい」
千草は、そう言うと、祥吾を彼の書斎に連れていき、
積まれたいたていた、資料の一番上にあったものを
机に広げた。
「これをご覧下さい」
それは、この屋敷の配置図だった。
「千草、これはどうしたのだ」
驚いた祥吾が問うと、
「ここに置いてありました」
「ここに? どうして千草は、この図を知っていたのだ」
「それは——」
千草が、急に言いにくそうに口ごもる。
「勝手に俺の部屋の入って資料を見たのか? それなら気にしなくても良い」
祥吾は度量の大きさを示そうと鷹揚に言った。
「はい、申し訳ありません。地震があった翌日、
旦那様の言われる『孫子』の言葉を、私も思い出しまして
この屋敷と敷地を調べる資料がないかを、ここに探しに参ったのです。
旦那様の許可をいただかねばと思ったのですが、
何分、そのぉ……」
再び、言いにくそうに口ごもる千草
「すいません……。わかりました。もうそれ以上は言わないで下さい……」
涙目になりそうな祥吾を、窓の外で疾風がヒヒーンと笑った
