03
優麻が運転してくれている車は、司を神社まで送ってくれた。
そして優麻に付き添われるようなかたちで一緒に鳥居をくぐって、境内に入っていくと、やっぱり最初に飛鳥と緋月が司を出迎えてくれた。
二人は、今日、司がなんのためにどこに出かけるかということも知っていたようだった。
まあ、だからでもあるのだろう。飛鳥もいつものような明るく朗らかな様子ではなく、少し司の様子をうかがうように、司に声をかけてくれる。
「――どうだった? 大丈夫?」
どう。
と言われても、なんとも返事のしようがなかった。
境内は夕暮れていて、そろそろ社務所や授与所を閉めようという時刻だろう。夕方の清掃もあるので、境内には、他の職員たちの姿も見える。そうして、拝殿のあたりに立ち、戻ってきた司と優麻に気づいてこちらへと視線を投げている――兄。
柚真人は、司の様子をうかがっているものの自分から近寄ってこようとはしていないようなので、司は兄に気づいて一瞥したあと視線を飛鳥と緋月へと戻した。
「え、と。大丈夫は大丈夫、だけ、ど……あの――――二人とも、その……いろいろ……みんな、知ってたのよね」
今日、自分が、あの場所で聞いたこと。そう思った。
飛鳥は少し気まずそうに頷き、緋月は申し訳なさそうに、少しだけ頭を下げるような仕草をした。
「司が聞いた話がどのようなものか、正確にはわかりませんけど、わたくしたちがここで貴女や柚真人さまと初めてお会いしてから以降のことは、おおむね、ですわ」
「つまり、今日、司ちゃんが聞いたんだろう話は、俺たちが、司ちゃんがいなくなってから二十五年かけて見聞きしてきた分、てことなのよ。それをいっぺんに聞かされてもキツいよねえ。司ちゃんに伝えるにしてもやりかたってもんがあるとは思うんだけど」
「国家権力の暴虐ですわね……」
国家権力。そう言えば、神社本庁がどうとか宮内庁がどうとか鎮護官がどうとか、そういった、公を意味する言葉らしきものもたくさん聞いた。
16歳の司にとっては、なんだか難しい話なのだな、という感想が先に立ったが、言われてみるとそれはそう、ということになるのかもしれない。
「ただ、これが一番安全確実で簡単な方法だった。だから柚真人も、今日のことを受け入れたんだとは思うんだよね。司ちゃんのためにね」
「この二十六年の間、とくに柚真人さまご自身が大変な思いをなさいましたものね。わたくしたちが受け継いでいる力と務めは、わたくしたち一代限りのものではありませんし、常に闇や穢れといったものと隣り合わせですから、わたくしちた自身の潔斎も常に保たれているかどうか、この世の理を外れることがないか、監護、統率されている必要がありますのよ」
それは、先ほどの場でも言われた。理屈ではわかるので、司は軽く頷いた。
ただ、全部噛み砕いて自分自身で飲み込むまでには、さすがにまだ至れない。
「それで……なにか、他に言われたりはしまして?」
緋月が訊いてくれたので、ああそうだ、と司は思い出し、
「どうするか決めるように言われた。この先、どうするのか、って」
「それは……勾玉の血脈の者として、ということ?」
「……たぶん。……ほかには、いまのところは、とくに、何も」
そうだ。
問題は。
これから、どうすればいいんだろう――どうするべきなんだろう――ということだ。それには、兄のことも含まれる。
ちゃんと、しっかり、考えないと――と司は唇を少し強く引き結び、
「――いったん、家に入るね。飛鳥くんも緋月ちゃんも、ありがとう」
そういって、その場から、家に向かって歩き出した。
☆
その日は、 飛鳥も緋月も優麻も、夕食のあとくらいまで一緒にいてくれて、司が今日知ったことについていろいろ補足をしたり補完したり、疑問に答えたりしてくれた。
たとえば、司にとっては新しくなっていた神社の社殿について、とか。
飛鳥と緋月は、皇神社の上位に位置する勾玉の血脈という機構のことをどう知っていったのか、とか。
皇神社の他に、同業者としてどんな人たちがいてどんな形態があるのか、とか。
それから、優麻の素性についてや、緋月と飛鳥のプライベートなことも少し。
その中でも、それぞれが司の混乱をさらに助長したり、新しく積み重ねたりはしないように気を遣って話をしてくれているのが感じられて、なんだかもうしわけないな、と司は思った。それから、あらためて、みんな優しいな、とも。
ただ、兄の柚真人は、自分以外の皆が好き勝手喋るのに任せて、あまり口を挟まなかった。食事自体は黙食で行われるので、皆が話をしてくれたのはその後のことになる。
なのでやや遅い時間になって、じゃあまた明日、と、飛鳥と緋月は皇邸を辞していった。
後片付けは優麻が手伝ってくれ、いまいちど、大丈夫ですか、と司に確認してくれた後で、優麻も仕事に戻るといい――この時間にまだ仕事があるらしいのがやや心配なところだが――司は、柚真人と二人になる。
そこで、やっと。
二人で優麻を見送り、廊下に立っていた時に、
「あの。柚真人、ちょっといい?」
司はそう、兄をうかがった。
柚真人はちょっとだけ目を瞠って、
「なんだ」
と司の問いかけを受けてから居間に入っていった。柚真人が、話があるなら聞くがといった態で畳に正座をしたので、司も柚真人と向かい合って座った。
皆のいろんな話を聞きながら、ずっと考えていることがあった。
兄にやっと、それを訊ける。
「……その。柚真人って、この先どうなるの」
司には、そのことがなによりも気になっていたのだ。
「どう、とは?」
柚真人が答える。
司は、重ねた。これは、柚真人がわかっていないはずがないことだ。
「だから、この先。ずっと先。――その恰好。柚真人がもう、そのまま歳を取らないって、本当なんでしょ?」
柚真人は、ぴくっとわずかに反応した。
「ああ……その話か。まあ、見ての通りだな。俺は、人ではなくなったから。というよりも、もともと人ではなかったんだ」
「そうじゃなくて。そういうことじゃなくて。――それって、いつかは、ひとりになっちゃうってことじゃないの?」
「――」
「そうだよね?」
「――まあ、それはそうだな。言ってしまえば」
訊かなくとも、分っている答えではあった。ただ、確かめたかった。
柚真人の口から、肯定の言葉が出て、司は、ああやっぱり、と胸に重たい澱を感じた。
司が柚真人と病室で再会した日、司と柚真人は、お互いに兄妹だからと踏みとどまった。そんなように感じていた。でも、少し違った部分もあったのだ。司はそのことも確信した。
もちろん兄妹だから。ということもあるだろう。でもそれ以上に。どうにもならない。どうしようもない。そういう道を、柚真人は選択していた。だからだ。
「それで、いいの?」
いいわけない。そう思っているから司の声は少し震えた。
司のため。とはいえなんてことをしたんだこの兄は。
柚真人が、自分に普通の恋愛感情を向けることがあるなんてなんだか想像もつかない。そういって飛鳥に相談したときに、飛鳥が司にくれた答え。
きっと。それがある程度正しいんだろう。飛鳥は柚真人をよく見ている。
「いい悪いの問題ではないな。それに、俺はもう、そういう道を歩き出してる。後戻りはできないし、そのつもりで臨んだ。得られた結果には満足している。だからお前が気にすることじゃない」
柚真人は、苦笑するような表情になって司に返した。
その表情は、この姿の柚真人と会ってから司が目にする、初めてといってもいいくらいの穏やかさを含む表情だったが、だからこそ余計に司の胸は痛んだ。
「気にする、とか、そういうことじゃないよ」
「――」
「なんてこと、したの」
「――」
「なんてこと、したのよ。飛鳥くんも、緋月ちゃんも、わたしも、そのうちいなくなっちゃうんだよ」
「――まあ、そうだな。だが、優麻がいるよ」
そういうことでもない。司は思ったが、咄嗟にはそれに適切な切り返しは出来なかった。
言葉に詰まると、柚真人は小さくため息をついて、
「それでいい、と俺は思ってる。そこに嘘はない。これまで、お前に向けてきた言葉にも嘘が無いように。俺はお前が大事だったから、全てを賭しても取り返した。この先、お前がお前の人生を全うできるなら、それでいい」
「――私は」
そんなこと頼んでない。そう口をついて出そうになった司だったが、その言葉はすんでのところで飲み込んだ。それは、たとえ思っても向けてはいけない言葉だと思った。事実、司は助け出されて今現在ここにいて、そのことに対して司は感謝を覚えるのだから。
どうしよう。どう続けよう。司は考え続けた。
「……鬼、って。どれくらい生きるの」
「さあ。千年は固いんじゃないか。優麻がそうだから。あいつ、俺とは前世からの付き合いだし」
「……前世……」
「それと、鬼は人と違って生死の理の中にない。だから老いないし、死ぬのではなく、朽ちて滅びる。いろいろな理由でな」
「……くちる……」
「ただ、一度人に生まれた俺がそうだったように、現世の理で人は輪廻の輪をめぐる。今のお前が生きて老いて死んだとしても、やがてどこかに生まれ変わる。そうしたら俺がまたお前を見つける。お前が嫌でなければ、の話だが。そうやって、この先も、ずっとお前を見守るよ。それだけでも、俺はここで生きていける」
柚真人の目線が自分とはもうすでに違っている。
司は、内心唇を噛みしめたい気持ちだった。
そこでふと、柚真人が、まだ司の知らなかったことを告白する。
「というか、俺とお前は、そもそも前世からの縁なんだ。今のお前には、きっと単なる荒唐無稽な話になるんだろうが、俺は、前世のお前を知ってた。だからお前を追いかけて、一度は人に生まれ変わることを望んだんだ」
「……私、の? え? ……ぜんせ?」
「俺とお前の縁は、そもそもそこから始まる。まあ、単純におとぎ話みたいなものだと思って聞いてくれてかまわないんだが、俺たちは、当時お互いに、今とは違った意味で許されない恋をしていた。そうして、添い遂げられなくて、二世を誓って死に別れたんだ」
「――」
「何故なら。俺は、かつて人に長らく仇を成してきた鬼の頂点に立つ者で。お前は、今と同じ――草薙の剣を携えた、退魔の巫女だったからな。だから、何度も戦いもした。その果てで、気が付いたらお互いに、なんでかそういうことになった」
「――」
「だからこの先にお前が生まれ変わっても、状況はさして変わらないとも言える。俺は、このままあり続ければ、お前の御霊の存在そのものを追いかけることができる。俺の存在がお前にとって必要なくても、お前を見守ってはいたい。――だから、いいんだ。この先千年ひとりでも」
「――」
確かに、それは司にとってはおとぎ話みたいなものにしか聞こえない。
でも、嘘はないんだろう。それが柚真人の行動の根拠になっているんだろう。
そう思える表情と語り口を、柚真人はしていた。
ただ司ははっとして、
「……もしかして、だから、私を助けたの?」
「うん?」
「柚真人にとって、私は妹じゃなくて、前世で大事な人だったから。私じゃなくてもいいから、私がいなくなっても、柚真人は大丈夫なの?」
そういうことなのかもしれない。
それなら自分、あくまでもこの自分には、柚真人を止める資格も力もない。そう思った。
すると柚真人は急に真率な顔になって。
「――それは、違うな」
目を奥まで覗き込んでくるみたいに柚真人がいうので、司はちょっとだけ怯んだ。
「違うと言うか――逆だよ。俺は、お前がここからいなくなった時に、この記憶を思い出した。正確には、強制的に引きずり出されたわけだが――それまでは、自分で自分が何者かなんてわかっていなかった。前世があることを思い出した時、正直いうと俺は心底からほっとしたんだ。たとえ兄妹としてどうしようもなくとも、お前を愛してもいい理由がみつかったわけだから」
「――」
「お前は人として生まれ変わるから、というのは、それで俺は最低限自分を生かせるということだよ。いったろ、鬼は朽ちる。ただお前を失って絶望するだけだったら、俺もそのあとほどなく潰えて消える」
「――」
あの時と違って、柚真人は穏やかに淡々と話してくれる。それは、柚真人がここまでの間に重ねてきた月日の結果でもあるのだろう。
ただ、司の方からよく考えると、それはそれで何かすごくすごいことを、てらいなくつらつらと言われているのではないか、という気もした。
そんな雰囲気がまったくないから茫漠となって聞いているけれど、柚真人からいま紡がれている言葉は、ことによっては睦言の類だ。
もしかすると、柚真人の中にはすでに大きな諦観がある。だから、今、柚真人は、そう、なのかもしれない。
次に司の口をついて洩れたのは、司のそういう思いであった。
「――私は」
「――」
「私は、……どうしたらいいのよ」
柚真人は、司の小さな気持ちなど端から越えていて、固めている覚悟も違う。
司の気持ち、司のこの先の生き方には、行き場がない。
「私は……私だよ」
「――」
「私には、……柚真人でないと、意味がないのに」
「――お前にそう言ってもらえるだけで俺は充分だ」
「私は、……そんなふうに、言えないよ」
「――」
「柚真人のこと、このまま、ひとりにして、おいていくなんて嫌だよ」
「だが、それが理だ」
「……知らないよ、そんなの」
聞き分けの無いことを言っているなという自覚はあった。
でも同時に、どうやって聴き分けろというのだろう。こんな、ことを。
「それじゃあ、……私にはもう、柚真人のためにできることは他にない……ってことになるの」
「お前はいままでと変わらず生きてけばいい。今日連れていかれた場所で聞いたと思うが、もし、今生において皇の家や勾玉の一族のことに関わりたくないのならその方法もあるわけだし」
「私は、私が、柚真人と一緒にいたいのに。私のあとの私のことなんて私にはわからないよ」
「お前と、一緒にはいてやるよ。お前がここにいる限りは。――兄として」
「柚真人…………」
今までに聞いたことのないような優しい声を、こんな時に聞かせないで欲しい、と司は思った。
「お前の兄でいることは、あの頃の俺にとってはお前にも言ったようにしんどいことだったが、それでよかったと思ったこともあった。兄であれば、お前がどんな人生を歩もうとも、傍にずっといてやれる」
「……柚真人は、そうしたいの」
司は自分の正座した脚の上に置いている握りこぶしに、ぎゅっと力を込めた。
「……いったろう。俺はもう後戻りはできないし、それでいいと思ってこういう選択をした。俺が今どうしたいかなんて、いまさら、どうでもいいことだ」
「よくないでしょ……」
「だとしてもそれをお前に言うわけにはいかないよ」
「――どうして」
「俺がそう決めたからだ。……あの日、病室でお前にいったことに嘘は無い。だがあれは、俺なりのけじめみたいなものでもあった。あれで、最後だ。もう、お前を困らせるようなことは言わないし、今の立場でお前をちゃんと守ってやる」
「――私が。いま、柚真人のことを、好きって、言っても? ……もう、遅いんだ、ね」
司とて、柚真人を困らせるつもりはなかった。
柚真人の努力と忍耐、そして気遣いもわかっているつもりで話している。ただ、頭の隅には、そうかもう、自分の気持ちは柚真人を困らせるものでしかないのかなとも思った。
柚真人は、ぐっと何かを飲み込んだような顔をした。
それから――これはどういう表情だろう。困ってはいる。でもどこか、辛そうでもあり、諦観もあり、感情がうまく汲めない。兄がこういう顔をするところを、司は、見たことがなかったから。
「俺がかつて、お前の前世と死に別れた時、人に生まれ変わろうとしたのは、そこにも意味があった。だが、俺はすでに人の理から外れた者だ。巫女であるお前に、鬼は触れられない」
「!」
「――意味は、わかるな? それに、この立場で巫女であるお前を奪えば、それこそ許されるものではない。なにより俺は、お前のためにも、飛鳥や緋月のためにも、この社を守らなくてはならない」
「――…………」
ああ。そういうことか。
意味はわかるのか、とは以前問われたこともあるが、その意味すら、もはやお互いの間で変わってしまったのだ。というよりも、お互いの間にあった禁忌は、より、侵せぬ枷となったのだ。
「だが別に、そうでなくとも想うことだけならできる。昔はそんな余裕もなかったが、今はそう思える。お前を失う、失ったことに比べれば、生きて、傍にいられることがどれだけ幸いなことか思い知ったしな」
ふ、と。決してなげやりにではなく、何かを含んだように笑まれて。
司は、それが柚真人の決めたことなのだな、と納得せざるを得なかった。――飛鳥は、こんな柚真人をずっと近くで見てきて、諦めてほしくない、という言葉を司に託したのだろう。でも、司にも、柚真人にここまで言い切られるとどうしようもない。柚真人が司に向けている気持ちは、それ自体がちょっと大きすぎる、といった飛鳥の言葉もまた正しいのだ。
そのうえで、柚真人は、自分のために、司のために、一度すべてに踏ん切りをつけた。
そこからまたあらぬ感情を募らせてしまえば、いつかはまた、限界もくれば辛くもなろう。生きて傍にいられるのだから、一度は繋がった想いがあるのは確かなのだから、そうであれば、ずっと兄妹でいればいい。
むろん、わかる。そうあるべきだということ。それでいいのだということ。そうするしかないのだということ。なにもかも。
ただ。
司にとっては。ただ。
納得ができない。
くりかえし尋ねている、柚真人はそれでいいのか、という言葉は。
そんなの、全部、柚真人の犠牲の上に成り立つのではないかと。そういうふうにしか、おもえない。
柚真人はなにも望めない。それでいいと本人がいってくれても、それでいいはずがないと思う気持ちがとめられない。
自分に、何も報いる術がないのが我慢ならない。どうして、自分のことを柚真人が好きになるのかわからない。理由がない。そんなふうに思ってそれをそのまま柚真人に返してしまいもしたが、それすらやや後悔した。いかに自分になにもないように思えても、ここまでされては、否定できない。傾けられた兄の全身全霊に。
この人は報われるべきなのに。そう思った。この人は報われるべきだ。そして報いることはたぶん自分にしか出来ない。飛鳥が、いっていたのも、そういうことだ。
「――納得は、すぐにしかねるところはまだまだあるだろう。だがまあ、時間はあるから」
柚真人はそういって、話を終わらせようとしているのが感じ取れた。
「お前のことは、今後なにがあっても、なにがどうなっても、ずっと、俺にとってはなにより大事だし、それは変わらないよ」
いやだ、と司は思った。
なにか。ほかに。方法はないの。
その時だ。
あ。
ああ。
唐突に。
脳裏にそれが閃いた。
そうだ。
どうにもほかにどうしようもないというなら、それを試したって、いい。
「――柚真人、待って」
「あ?」
「ここで、待ってて。まだ、私の話はあるの」
「?」
司は、いうが早いか立ち上がった。自分がしようとしていることを柚真人にさとられてはならないと思った。多分止められるから。
「いいから、ちょっと待っててね!」
優麻が運転してくれている車は、司を神社まで送ってくれた。
そして優麻に付き添われるようなかたちで一緒に鳥居をくぐって、境内に入っていくと、やっぱり最初に飛鳥と緋月が司を出迎えてくれた。
二人は、今日、司がなんのためにどこに出かけるかということも知っていたようだった。
まあ、だからでもあるのだろう。飛鳥もいつものような明るく朗らかな様子ではなく、少し司の様子をうかがうように、司に声をかけてくれる。
「――どうだった? 大丈夫?」
どう。
と言われても、なんとも返事のしようがなかった。
境内は夕暮れていて、そろそろ社務所や授与所を閉めようという時刻だろう。夕方の清掃もあるので、境内には、他の職員たちの姿も見える。そうして、拝殿のあたりに立ち、戻ってきた司と優麻に気づいてこちらへと視線を投げている――兄。
柚真人は、司の様子をうかがっているものの自分から近寄ってこようとはしていないようなので、司は兄に気づいて一瞥したあと視線を飛鳥と緋月へと戻した。
「え、と。大丈夫は大丈夫、だけ、ど……あの――――二人とも、その……いろいろ……みんな、知ってたのよね」
今日、自分が、あの場所で聞いたこと。そう思った。
飛鳥は少し気まずそうに頷き、緋月は申し訳なさそうに、少しだけ頭を下げるような仕草をした。
「司が聞いた話がどのようなものか、正確にはわかりませんけど、わたくしたちがここで貴女や柚真人さまと初めてお会いしてから以降のことは、おおむね、ですわ」
「つまり、今日、司ちゃんが聞いたんだろう話は、俺たちが、司ちゃんがいなくなってから二十五年かけて見聞きしてきた分、てことなのよ。それをいっぺんに聞かされてもキツいよねえ。司ちゃんに伝えるにしてもやりかたってもんがあるとは思うんだけど」
「国家権力の暴虐ですわね……」
国家権力。そう言えば、神社本庁がどうとか宮内庁がどうとか鎮護官がどうとか、そういった、公を意味する言葉らしきものもたくさん聞いた。
16歳の司にとっては、なんだか難しい話なのだな、という感想が先に立ったが、言われてみるとそれはそう、ということになるのかもしれない。
「ただ、これが一番安全確実で簡単な方法だった。だから柚真人も、今日のことを受け入れたんだとは思うんだよね。司ちゃんのためにね」
「この二十六年の間、とくに柚真人さまご自身が大変な思いをなさいましたものね。わたくしたちが受け継いでいる力と務めは、わたくしたち一代限りのものではありませんし、常に闇や穢れといったものと隣り合わせですから、わたくしちた自身の潔斎も常に保たれているかどうか、この世の理を外れることがないか、監護、統率されている必要がありますのよ」
それは、先ほどの場でも言われた。理屈ではわかるので、司は軽く頷いた。
ただ、全部噛み砕いて自分自身で飲み込むまでには、さすがにまだ至れない。
「それで……なにか、他に言われたりはしまして?」
緋月が訊いてくれたので、ああそうだ、と司は思い出し、
「どうするか決めるように言われた。この先、どうするのか、って」
「それは……勾玉の血脈の者として、ということ?」
「……たぶん。……ほかには、いまのところは、とくに、何も」
そうだ。
問題は。
これから、どうすればいいんだろう――どうするべきなんだろう――ということだ。それには、兄のことも含まれる。
ちゃんと、しっかり、考えないと――と司は唇を少し強く引き結び、
「――いったん、家に入るね。飛鳥くんも緋月ちゃんも、ありがとう」
そういって、その場から、家に向かって歩き出した。
☆
その日は、 飛鳥も緋月も優麻も、夕食のあとくらいまで一緒にいてくれて、司が今日知ったことについていろいろ補足をしたり補完したり、疑問に答えたりしてくれた。
たとえば、司にとっては新しくなっていた神社の社殿について、とか。
飛鳥と緋月は、皇神社の上位に位置する勾玉の血脈という機構のことをどう知っていったのか、とか。
皇神社の他に、同業者としてどんな人たちがいてどんな形態があるのか、とか。
それから、優麻の素性についてや、緋月と飛鳥のプライベートなことも少し。
その中でも、それぞれが司の混乱をさらに助長したり、新しく積み重ねたりはしないように気を遣って話をしてくれているのが感じられて、なんだかもうしわけないな、と司は思った。それから、あらためて、みんな優しいな、とも。
ただ、兄の柚真人は、自分以外の皆が好き勝手喋るのに任せて、あまり口を挟まなかった。食事自体は黙食で行われるので、皆が話をしてくれたのはその後のことになる。
なのでやや遅い時間になって、じゃあまた明日、と、飛鳥と緋月は皇邸を辞していった。
後片付けは優麻が手伝ってくれ、いまいちど、大丈夫ですか、と司に確認してくれた後で、優麻も仕事に戻るといい――この時間にまだ仕事があるらしいのがやや心配なところだが――司は、柚真人と二人になる。
そこで、やっと。
二人で優麻を見送り、廊下に立っていた時に、
「あの。柚真人、ちょっといい?」
司はそう、兄をうかがった。
柚真人はちょっとだけ目を瞠って、
「なんだ」
と司の問いかけを受けてから居間に入っていった。柚真人が、話があるなら聞くがといった態で畳に正座をしたので、司も柚真人と向かい合って座った。
皆のいろんな話を聞きながら、ずっと考えていることがあった。
兄にやっと、それを訊ける。
「……その。柚真人って、この先どうなるの」
司には、そのことがなによりも気になっていたのだ。
「どう、とは?」
柚真人が答える。
司は、重ねた。これは、柚真人がわかっていないはずがないことだ。
「だから、この先。ずっと先。――その恰好。柚真人がもう、そのまま歳を取らないって、本当なんでしょ?」
柚真人は、ぴくっとわずかに反応した。
「ああ……その話か。まあ、見ての通りだな。俺は、人ではなくなったから。というよりも、もともと人ではなかったんだ」
「そうじゃなくて。そういうことじゃなくて。――それって、いつかは、ひとりになっちゃうってことじゃないの?」
「――」
「そうだよね?」
「――まあ、それはそうだな。言ってしまえば」
訊かなくとも、分っている答えではあった。ただ、確かめたかった。
柚真人の口から、肯定の言葉が出て、司は、ああやっぱり、と胸に重たい澱を感じた。
司が柚真人と病室で再会した日、司と柚真人は、お互いに兄妹だからと踏みとどまった。そんなように感じていた。でも、少し違った部分もあったのだ。司はそのことも確信した。
もちろん兄妹だから。ということもあるだろう。でもそれ以上に。どうにもならない。どうしようもない。そういう道を、柚真人は選択していた。だからだ。
「それで、いいの?」
いいわけない。そう思っているから司の声は少し震えた。
司のため。とはいえなんてことをしたんだこの兄は。
柚真人が、自分に普通の恋愛感情を向けることがあるなんてなんだか想像もつかない。そういって飛鳥に相談したときに、飛鳥が司にくれた答え。
きっと。それがある程度正しいんだろう。飛鳥は柚真人をよく見ている。
「いい悪いの問題ではないな。それに、俺はもう、そういう道を歩き出してる。後戻りはできないし、そのつもりで臨んだ。得られた結果には満足している。だからお前が気にすることじゃない」
柚真人は、苦笑するような表情になって司に返した。
その表情は、この姿の柚真人と会ってから司が目にする、初めてといってもいいくらいの穏やかさを含む表情だったが、だからこそ余計に司の胸は痛んだ。
「気にする、とか、そういうことじゃないよ」
「――」
「なんてこと、したの」
「――」
「なんてこと、したのよ。飛鳥くんも、緋月ちゃんも、わたしも、そのうちいなくなっちゃうんだよ」
「――まあ、そうだな。だが、優麻がいるよ」
そういうことでもない。司は思ったが、咄嗟にはそれに適切な切り返しは出来なかった。
言葉に詰まると、柚真人は小さくため息をついて、
「それでいい、と俺は思ってる。そこに嘘はない。これまで、お前に向けてきた言葉にも嘘が無いように。俺はお前が大事だったから、全てを賭しても取り返した。この先、お前がお前の人生を全うできるなら、それでいい」
「――私は」
そんなこと頼んでない。そう口をついて出そうになった司だったが、その言葉はすんでのところで飲み込んだ。それは、たとえ思っても向けてはいけない言葉だと思った。事実、司は助け出されて今現在ここにいて、そのことに対して司は感謝を覚えるのだから。
どうしよう。どう続けよう。司は考え続けた。
「……鬼、って。どれくらい生きるの」
「さあ。千年は固いんじゃないか。優麻がそうだから。あいつ、俺とは前世からの付き合いだし」
「……前世……」
「それと、鬼は人と違って生死の理の中にない。だから老いないし、死ぬのではなく、朽ちて滅びる。いろいろな理由でな」
「……くちる……」
「ただ、一度人に生まれた俺がそうだったように、現世の理で人は輪廻の輪をめぐる。今のお前が生きて老いて死んだとしても、やがてどこかに生まれ変わる。そうしたら俺がまたお前を見つける。お前が嫌でなければ、の話だが。そうやって、この先も、ずっとお前を見守るよ。それだけでも、俺はここで生きていける」
柚真人の目線が自分とはもうすでに違っている。
司は、内心唇を噛みしめたい気持ちだった。
そこでふと、柚真人が、まだ司の知らなかったことを告白する。
「というか、俺とお前は、そもそも前世からの縁なんだ。今のお前には、きっと単なる荒唐無稽な話になるんだろうが、俺は、前世のお前を知ってた。だからお前を追いかけて、一度は人に生まれ変わることを望んだんだ」
「……私、の? え? ……ぜんせ?」
「俺とお前の縁は、そもそもそこから始まる。まあ、単純におとぎ話みたいなものだと思って聞いてくれてかまわないんだが、俺たちは、当時お互いに、今とは違った意味で許されない恋をしていた。そうして、添い遂げられなくて、二世を誓って死に別れたんだ」
「――」
「何故なら。俺は、かつて人に長らく仇を成してきた鬼の頂点に立つ者で。お前は、今と同じ――草薙の剣を携えた、退魔の巫女だったからな。だから、何度も戦いもした。その果てで、気が付いたらお互いに、なんでかそういうことになった」
「――」
「だからこの先にお前が生まれ変わっても、状況はさして変わらないとも言える。俺は、このままあり続ければ、お前の御霊の存在そのものを追いかけることができる。俺の存在がお前にとって必要なくても、お前を見守ってはいたい。――だから、いいんだ。この先千年ひとりでも」
「――」
確かに、それは司にとってはおとぎ話みたいなものにしか聞こえない。
でも、嘘はないんだろう。それが柚真人の行動の根拠になっているんだろう。
そう思える表情と語り口を、柚真人はしていた。
ただ司ははっとして、
「……もしかして、だから、私を助けたの?」
「うん?」
「柚真人にとって、私は妹じゃなくて、前世で大事な人だったから。私じゃなくてもいいから、私がいなくなっても、柚真人は大丈夫なの?」
そういうことなのかもしれない。
それなら自分、あくまでもこの自分には、柚真人を止める資格も力もない。そう思った。
すると柚真人は急に真率な顔になって。
「――それは、違うな」
目を奥まで覗き込んでくるみたいに柚真人がいうので、司はちょっとだけ怯んだ。
「違うと言うか――逆だよ。俺は、お前がここからいなくなった時に、この記憶を思い出した。正確には、強制的に引きずり出されたわけだが――それまでは、自分で自分が何者かなんてわかっていなかった。前世があることを思い出した時、正直いうと俺は心底からほっとしたんだ。たとえ兄妹としてどうしようもなくとも、お前を愛してもいい理由がみつかったわけだから」
「――」
「お前は人として生まれ変わるから、というのは、それで俺は最低限自分を生かせるということだよ。いったろ、鬼は朽ちる。ただお前を失って絶望するだけだったら、俺もそのあとほどなく潰えて消える」
「――」
あの時と違って、柚真人は穏やかに淡々と話してくれる。それは、柚真人がここまでの間に重ねてきた月日の結果でもあるのだろう。
ただ、司の方からよく考えると、それはそれで何かすごくすごいことを、てらいなくつらつらと言われているのではないか、という気もした。
そんな雰囲気がまったくないから茫漠となって聞いているけれど、柚真人からいま紡がれている言葉は、ことによっては睦言の類だ。
もしかすると、柚真人の中にはすでに大きな諦観がある。だから、今、柚真人は、そう、なのかもしれない。
次に司の口をついて洩れたのは、司のそういう思いであった。
「――私は」
「――」
「私は、……どうしたらいいのよ」
柚真人は、司の小さな気持ちなど端から越えていて、固めている覚悟も違う。
司の気持ち、司のこの先の生き方には、行き場がない。
「私は……私だよ」
「――」
「私には、……柚真人でないと、意味がないのに」
「――お前にそう言ってもらえるだけで俺は充分だ」
「私は、……そんなふうに、言えないよ」
「――」
「柚真人のこと、このまま、ひとりにして、おいていくなんて嫌だよ」
「だが、それが理だ」
「……知らないよ、そんなの」
聞き分けの無いことを言っているなという自覚はあった。
でも同時に、どうやって聴き分けろというのだろう。こんな、ことを。
「それじゃあ、……私にはもう、柚真人のためにできることは他にない……ってことになるの」
「お前はいままでと変わらず生きてけばいい。今日連れていかれた場所で聞いたと思うが、もし、今生において皇の家や勾玉の一族のことに関わりたくないのならその方法もあるわけだし」
「私は、私が、柚真人と一緒にいたいのに。私のあとの私のことなんて私にはわからないよ」
「お前と、一緒にはいてやるよ。お前がここにいる限りは。――兄として」
「柚真人…………」
今までに聞いたことのないような優しい声を、こんな時に聞かせないで欲しい、と司は思った。
「お前の兄でいることは、あの頃の俺にとってはお前にも言ったようにしんどいことだったが、それでよかったと思ったこともあった。兄であれば、お前がどんな人生を歩もうとも、傍にずっといてやれる」
「……柚真人は、そうしたいの」
司は自分の正座した脚の上に置いている握りこぶしに、ぎゅっと力を込めた。
「……いったろう。俺はもう後戻りはできないし、それでいいと思ってこういう選択をした。俺が今どうしたいかなんて、いまさら、どうでもいいことだ」
「よくないでしょ……」
「だとしてもそれをお前に言うわけにはいかないよ」
「――どうして」
「俺がそう決めたからだ。……あの日、病室でお前にいったことに嘘は無い。だがあれは、俺なりのけじめみたいなものでもあった。あれで、最後だ。もう、お前を困らせるようなことは言わないし、今の立場でお前をちゃんと守ってやる」
「――私が。いま、柚真人のことを、好きって、言っても? ……もう、遅いんだ、ね」
司とて、柚真人を困らせるつもりはなかった。
柚真人の努力と忍耐、そして気遣いもわかっているつもりで話している。ただ、頭の隅には、そうかもう、自分の気持ちは柚真人を困らせるものでしかないのかなとも思った。
柚真人は、ぐっと何かを飲み込んだような顔をした。
それから――これはどういう表情だろう。困ってはいる。でもどこか、辛そうでもあり、諦観もあり、感情がうまく汲めない。兄がこういう顔をするところを、司は、見たことがなかったから。
「俺がかつて、お前の前世と死に別れた時、人に生まれ変わろうとしたのは、そこにも意味があった。だが、俺はすでに人の理から外れた者だ。巫女であるお前に、鬼は触れられない」
「!」
「――意味は、わかるな? それに、この立場で巫女であるお前を奪えば、それこそ許されるものではない。なにより俺は、お前のためにも、飛鳥や緋月のためにも、この社を守らなくてはならない」
「――…………」
ああ。そういうことか。
意味はわかるのか、とは以前問われたこともあるが、その意味すら、もはやお互いの間で変わってしまったのだ。というよりも、お互いの間にあった禁忌は、より、侵せぬ枷となったのだ。
「だが別に、そうでなくとも想うことだけならできる。昔はそんな余裕もなかったが、今はそう思える。お前を失う、失ったことに比べれば、生きて、傍にいられることがどれだけ幸いなことか思い知ったしな」
ふ、と。決してなげやりにではなく、何かを含んだように笑まれて。
司は、それが柚真人の決めたことなのだな、と納得せざるを得なかった。――飛鳥は、こんな柚真人をずっと近くで見てきて、諦めてほしくない、という言葉を司に託したのだろう。でも、司にも、柚真人にここまで言い切られるとどうしようもない。柚真人が司に向けている気持ちは、それ自体がちょっと大きすぎる、といった飛鳥の言葉もまた正しいのだ。
そのうえで、柚真人は、自分のために、司のために、一度すべてに踏ん切りをつけた。
そこからまたあらぬ感情を募らせてしまえば、いつかはまた、限界もくれば辛くもなろう。生きて傍にいられるのだから、一度は繋がった想いがあるのは確かなのだから、そうであれば、ずっと兄妹でいればいい。
むろん、わかる。そうあるべきだということ。それでいいのだということ。そうするしかないのだということ。なにもかも。
ただ。
司にとっては。ただ。
納得ができない。
くりかえし尋ねている、柚真人はそれでいいのか、という言葉は。
そんなの、全部、柚真人の犠牲の上に成り立つのではないかと。そういうふうにしか、おもえない。
柚真人はなにも望めない。それでいいと本人がいってくれても、それでいいはずがないと思う気持ちがとめられない。
自分に、何も報いる術がないのが我慢ならない。どうして、自分のことを柚真人が好きになるのかわからない。理由がない。そんなふうに思ってそれをそのまま柚真人に返してしまいもしたが、それすらやや後悔した。いかに自分になにもないように思えても、ここまでされては、否定できない。傾けられた兄の全身全霊に。
この人は報われるべきなのに。そう思った。この人は報われるべきだ。そして報いることはたぶん自分にしか出来ない。飛鳥が、いっていたのも、そういうことだ。
「――納得は、すぐにしかねるところはまだまだあるだろう。だがまあ、時間はあるから」
柚真人はそういって、話を終わらせようとしているのが感じ取れた。
「お前のことは、今後なにがあっても、なにがどうなっても、ずっと、俺にとってはなにより大事だし、それは変わらないよ」
いやだ、と司は思った。
なにか。ほかに。方法はないの。
その時だ。
あ。
ああ。
唐突に。
脳裏にそれが閃いた。
そうだ。
どうにもほかにどうしようもないというなら、それを試したって、いい。
「――柚真人、待って」
「あ?」
「ここで、待ってて。まだ、私の話はあるの」
「?」
司は、いうが早いか立ち上がった。自分がしようとしていることを柚真人にさとられてはならないと思った。多分止められるから。
「いいから、ちょっと待っててね!」

