12
☆
見送りはいい、と言い、皇邸の玄関を出た。
その頃にはすっかり日も暮れて、空気もひんやりどころではなく冷たかった。なにしろ年末だ。二人の吐く息も白い。
玉砂利を踏みしめながら、桜と雅は参道の端を歩いていく。
「……桜は、皇に甘いわね」
雅が、ため息交じりに呟いた。
そこには、多少の失望と、残念さが滲んでいたように、桜には感じられた。桜は隣を歩く雅の方へ、ちらりとだけ視線を流した。
「そうでもないと思うわよ。私は今回、貴女も助けたつもりだし」
すると雅は、小さく、拗ねた子供のように返してきた。
「……助けられたつもりはないわ」
その言い方からして、雅自身に思うところはあるはずで、自覚はあるのよねえ、と桜は思った。
「でも、貴女がもう少しあのまま事態を見守っていたら、どうなっていたかはわかっているでしょう? そうしたら、その後で、あの子がどうなったかも」
「……」
「私たちの――勾玉の血脈同士の争いも、避けられるべき。それに、皇の当主に、いまのところ非はないわ」
神薙雅が、皇柚真人を忌み嫌いたくなる、その心情を、桜はある程度理解してるつもりだった。そしてそこには複雑に絡み合った様々な事情と感情があることも。でも、もっとも端的には――。
「あなたも、あの子が怖いのよね」
「怖い?」
訊き返してきた声には、かちんと来たような響きがあった。
むろん、雅には、認めたくない言葉だろう。
だが、そうであろう、と桜は思う。そして、彼女にもまた、暁圭吾のように間違った判断をして欲しくない、とも。
ゆえに、諭すにしても言葉は選んだ。
「認めた方が、楽よ。あの子は、貴女にとっては異物でしかない。だから怖いし、憎いのよ。あなたは人間だから」
「――私は、暁とは違うわ」
「それは、もちろん。でも、私が言いたいのは、どうしようもないことだと早く諦めなさい、ということよ」
「――?」
「言ったでしょ。あなたは人間だから、って。私たちは常にそういう――恐怖心とも戦っている。修行や鍛錬によっていくらかは克服できるとしても、本能的なものまで殺せるわけではないわ」
人の皮を被った鬼である。雅にしてみたら、柚真人はそういう生き物だ。
それ自体が許せない。ということもあるだろう。しかしそれよりもなによりも、肌で、自分では太刀打ちできないと感じてしまうことも、雅にとってはいかんともしがたいのだ。
本来であれば、排除されるべき存在である。なのに、本庁や宮内庁、そして勾玉の血脈を統括する最上位の存在たる『祭司長』までが、柚真人を認めている。おまけに、皇柚真人を制御できるのは現在行方不明となっている皇の妹巫女ただひとりであるとされている。それも、雅は気に入らない。
皇の妹巫女が、なんだというのだ。そのために、鬼でありながら人であることに固執するなどと。自分から、人を棄てておきながら。いっそさっさとその本性に立ち戻れば、この手で斬りかかることができようものを、という――それはある種の執着であるのかもしれない。
「それに、私だって皇の御当主とは同類のようなものよ。貴女、私のことは怖くないでしょう?」
桜がそうも付け加えると、雅は少し顔を顰めて不満そうに言った。
「……桜は、そうは言っても『人間』よ」
「半分は、そうね。でも半分は、皇の御当主と同じよ。私は、鬼と人との混血児。年齢も、もう三〇〇に近い。人、ではない混ざりものなのよ」
「……」
「真水と、一滴でも濁りの入った水とは、違うわ。私は、どちらかというなら濁り水に近いの」
「……桜は、望んでそうなったわけではないわ」
「そうね。でもそれは、皇の御当主もよ。暁が、あの子が幼い頃にあんなめちゃくちゃなことをしなければね」
「……それでも、望んで人を棄てたのよ。力を欲して、鬼に成った。それだけで、私にとっては、桜とあれは同じじゃないわ」
頑なね、と桜は雅にそれとわからない程度の嘆息を吐いた。
そう。
桜は、そろそろ齢三〇〇を数えようとする、人といえば人、しかし柚真人と同じ鬼といえば鬼でもある。ただそれだけ長く、自分と同じ道をゆく、勾玉の巫たちを見てきた。それゆえ、雅にしても、柚真人にしても、自分の弟子のような気分がするのである。
もちろん、半血は鬼であるから、桜にも鬼の性分のようなものはある。が、どちらかといえば桜は鬼の性としては柚真人よりはその隣にいつもつき従っている笄優麻に寄っており、争いや諍いを好んではいなかった。かつてこちら側で生きようと決めた時、憎しみは人ではなく、自分をこの世に産み落として捨て置いた存在だけに向けることにした。
そんな桜にとって、皇柚真人は、――本人に向かってそう言えば、あれはたぶんたいそう嫌な顔をするだろうが――弟のようなものなのだ。かの者の、前世の生まれは千二百年ほど前だと聞く。なれども、実際に世を生きた年数でいえば、おそらく桜の方が長かろう。
自分と、雅。
ふたつぶんの草履が玉砂利を踏みしめる音を聴きながら。
これはまだ、手がかかるかしらねえ、と。
桜は思った。
暁の、今回の企てについては片づいた。しかし、事の本番はここからだ。
自分たちのすべきことは。皇司を、巫女として取り戻すこと。
あの時、その力を暴走させたかつての草薙の巫女が、今、どういう状態でいるのかは誰にも――わからない。
☆
例の小箱は、かつて、暁の家にあったものだそうだ。
ゆえに、雅は、見覚えがないかと緋月に聞いたのだろう。
二人が皇邸を辞した後、緋月は平謝りといった態で、柚真人に対してなんども頭を下げた。
柚真人はもちろん気にするなと返したのだが、その様子から、二、三日は緋月のことを心配した。
しかし緋月はというと、どちらかというと自分の実親の方にそれはそれは憤った様子を見せていて、柚真人が心配したような意味ではほとんどこたえていないようだった。
そもそも緋月や柚真人がまだ高校生であった頃に、暁圭吾と暁維月はともに緋月の前から姿を消している。そしてそれがなぜかということを、緋月ものちのちに知ることになっていたから、緋月の方としては早々に両親への見切りはついていた――というようなことなのだろう。
あの夏の日以来、緋月は、先妻の娘であり腹違いの姉であった水月のもとに身を寄せた。そして、そこで成人し、大学を卒業するまで義姉に面倒をみてもらった。
緋月は皇の神職としての能力もきちんと引き継いでいたため、それでなく、緋月が一人前になるまでは、皇卓史の助力もあった。
さらにいえば緋月自身、幼いころから皇柚真人に仕えることを己の生き方の最優先事項としていた。
そのためもあって、自分の、皇の家にまつろわない両親のことは、緋月にとってはむしろもとより勾玉の血脈に対する反乱分子のような認識であったらしい。
クリスマスが終わって、神社だけでなく世間にあっても、もひろく年始の準備がはじまって、それが佳境も佳境となることには、緋月はすっかりいつもの様子を取り戻した。
ちなみに、あのクリスマスイブの夜に、橘飛鳥が取り寄せておいたクリスマスケーキはまだ、少々皇家の冷蔵庫に残っている。それらもまた、多少なり緋月を元気づけるのには役立った。
そして、この年の大晦日、である。
この日は時間が経てば経つほど神社内が忙しくなる。
そのことを知っていて、鎮護官はまだ早朝といえる時間に、皇神社にやってきた。
漣環いわく、暁圭吾と暁維月のことの顛末については、まあ、柚真人が考えられうる限りで最悪の処分が下されたということだった。
それを緋月に話すべきかどうかはさすがに柚真人でも迷ったが、緋月の答えは、
「許されるのであれば、すべて柚真人さまの胸にとどめおきください。私が今さら聞いたところで、どうにもなりませんもの」
というものだった。
そして漣環は、桜があらかじめ柚真人に告げていたように、
「――桜御護からの、あなたへの伝言よ。年が明けたら、ここから先を、間違えずに行きなさい、と」
今回は報告事項もあったので、皇の家に上がって、漣環は、柚真人と対面した。
その環がくれた言葉に、柚真人は少し身を硬くした。それは、覚悟によるものだ。
「――間違い、ないんだな」
「――」
「――司は、戻るんだな」
「それは、あなた次第ということになるわ。あなた次第と、桜御護は仰った。永遠に失うか、取り戻せるか。その択一で、鍵はあなた。だから私も、今一度こうして頭を下げるわ。――あの子の、叔母として」
漣環は、そう言って、本当にひとつ頭をさげた。
「――」
柚真人は、唇を引き結ぶ。
心臓が、強く、速く、いてもたってもいられぬ鼓動を刻みだす。
「いいわね。巫女が、ここに戻るのであれば、我々はあなたに協力する。我々は、暁とは違うわ。それから、あなたの――彼女への想いも、信じている。かならず。必ず、皇の、そして草薙の、最後の巫女を、取り戻して」
桜と、ほとんど同じことを言うんだな、と思った。
こちら側は、皇の巫女を取り戻したい。
対して勾玉の血脈として見ると、司は、最後の草薙の巫女。彼女を正気で取り戻さなければ、意味はない。もしも司が、暴走した自らの力に呑まれ、そこから戻れないのであれば、環は、司を――。
させるものか。
柚真人は、端座する己の両脚の、袴の上においた拳を、ぐっと強く握りしめた。
そうして。
「――必ず」
覚悟をあらため、誓う言葉だ。
そして柚真人は、いまいちど。
必ず、と。
自分の胸に、強く刻んだ。
☆
見送りはいい、と言い、皇邸の玄関を出た。
その頃にはすっかり日も暮れて、空気もひんやりどころではなく冷たかった。なにしろ年末だ。二人の吐く息も白い。
玉砂利を踏みしめながら、桜と雅は参道の端を歩いていく。
「……桜は、皇に甘いわね」
雅が、ため息交じりに呟いた。
そこには、多少の失望と、残念さが滲んでいたように、桜には感じられた。桜は隣を歩く雅の方へ、ちらりとだけ視線を流した。
「そうでもないと思うわよ。私は今回、貴女も助けたつもりだし」
すると雅は、小さく、拗ねた子供のように返してきた。
「……助けられたつもりはないわ」
その言い方からして、雅自身に思うところはあるはずで、自覚はあるのよねえ、と桜は思った。
「でも、貴女がもう少しあのまま事態を見守っていたら、どうなっていたかはわかっているでしょう? そうしたら、その後で、あの子がどうなったかも」
「……」
「私たちの――勾玉の血脈同士の争いも、避けられるべき。それに、皇の当主に、いまのところ非はないわ」
神薙雅が、皇柚真人を忌み嫌いたくなる、その心情を、桜はある程度理解してるつもりだった。そしてそこには複雑に絡み合った様々な事情と感情があることも。でも、もっとも端的には――。
「あなたも、あの子が怖いのよね」
「怖い?」
訊き返してきた声には、かちんと来たような響きがあった。
むろん、雅には、認めたくない言葉だろう。
だが、そうであろう、と桜は思う。そして、彼女にもまた、暁圭吾のように間違った判断をして欲しくない、とも。
ゆえに、諭すにしても言葉は選んだ。
「認めた方が、楽よ。あの子は、貴女にとっては異物でしかない。だから怖いし、憎いのよ。あなたは人間だから」
「――私は、暁とは違うわ」
「それは、もちろん。でも、私が言いたいのは、どうしようもないことだと早く諦めなさい、ということよ」
「――?」
「言ったでしょ。あなたは人間だから、って。私たちは常にそういう――恐怖心とも戦っている。修行や鍛錬によっていくらかは克服できるとしても、本能的なものまで殺せるわけではないわ」
人の皮を被った鬼である。雅にしてみたら、柚真人はそういう生き物だ。
それ自体が許せない。ということもあるだろう。しかしそれよりもなによりも、肌で、自分では太刀打ちできないと感じてしまうことも、雅にとってはいかんともしがたいのだ。
本来であれば、排除されるべき存在である。なのに、本庁や宮内庁、そして勾玉の血脈を統括する最上位の存在たる『祭司長』までが、柚真人を認めている。おまけに、皇柚真人を制御できるのは現在行方不明となっている皇の妹巫女ただひとりであるとされている。それも、雅は気に入らない。
皇の妹巫女が、なんだというのだ。そのために、鬼でありながら人であることに固執するなどと。自分から、人を棄てておきながら。いっそさっさとその本性に立ち戻れば、この手で斬りかかることができようものを、という――それはある種の執着であるのかもしれない。
「それに、私だって皇の御当主とは同類のようなものよ。貴女、私のことは怖くないでしょう?」
桜がそうも付け加えると、雅は少し顔を顰めて不満そうに言った。
「……桜は、そうは言っても『人間』よ」
「半分は、そうね。でも半分は、皇の御当主と同じよ。私は、鬼と人との混血児。年齢も、もう三〇〇に近い。人、ではない混ざりものなのよ」
「……」
「真水と、一滴でも濁りの入った水とは、違うわ。私は、どちらかというなら濁り水に近いの」
「……桜は、望んでそうなったわけではないわ」
「そうね。でもそれは、皇の御当主もよ。暁が、あの子が幼い頃にあんなめちゃくちゃなことをしなければね」
「……それでも、望んで人を棄てたのよ。力を欲して、鬼に成った。それだけで、私にとっては、桜とあれは同じじゃないわ」
頑なね、と桜は雅にそれとわからない程度の嘆息を吐いた。
そう。
桜は、そろそろ齢三〇〇を数えようとする、人といえば人、しかし柚真人と同じ鬼といえば鬼でもある。ただそれだけ長く、自分と同じ道をゆく、勾玉の巫たちを見てきた。それゆえ、雅にしても、柚真人にしても、自分の弟子のような気分がするのである。
もちろん、半血は鬼であるから、桜にも鬼の性分のようなものはある。が、どちらかといえば桜は鬼の性としては柚真人よりはその隣にいつもつき従っている笄優麻に寄っており、争いや諍いを好んではいなかった。かつてこちら側で生きようと決めた時、憎しみは人ではなく、自分をこの世に産み落として捨て置いた存在だけに向けることにした。
そんな桜にとって、皇柚真人は、――本人に向かってそう言えば、あれはたぶんたいそう嫌な顔をするだろうが――弟のようなものなのだ。かの者の、前世の生まれは千二百年ほど前だと聞く。なれども、実際に世を生きた年数でいえば、おそらく桜の方が長かろう。
自分と、雅。
ふたつぶんの草履が玉砂利を踏みしめる音を聴きながら。
これはまだ、手がかかるかしらねえ、と。
桜は思った。
暁の、今回の企てについては片づいた。しかし、事の本番はここからだ。
自分たちのすべきことは。皇司を、巫女として取り戻すこと。
あの時、その力を暴走させたかつての草薙の巫女が、今、どういう状態でいるのかは誰にも――わからない。
☆
例の小箱は、かつて、暁の家にあったものだそうだ。
ゆえに、雅は、見覚えがないかと緋月に聞いたのだろう。
二人が皇邸を辞した後、緋月は平謝りといった態で、柚真人に対してなんども頭を下げた。
柚真人はもちろん気にするなと返したのだが、その様子から、二、三日は緋月のことを心配した。
しかし緋月はというと、どちらかというと自分の実親の方にそれはそれは憤った様子を見せていて、柚真人が心配したような意味ではほとんどこたえていないようだった。
そもそも緋月や柚真人がまだ高校生であった頃に、暁圭吾と暁維月はともに緋月の前から姿を消している。そしてそれがなぜかということを、緋月ものちのちに知ることになっていたから、緋月の方としては早々に両親への見切りはついていた――というようなことなのだろう。
あの夏の日以来、緋月は、先妻の娘であり腹違いの姉であった水月のもとに身を寄せた。そして、そこで成人し、大学を卒業するまで義姉に面倒をみてもらった。
緋月は皇の神職としての能力もきちんと引き継いでいたため、それでなく、緋月が一人前になるまでは、皇卓史の助力もあった。
さらにいえば緋月自身、幼いころから皇柚真人に仕えることを己の生き方の最優先事項としていた。
そのためもあって、自分の、皇の家にまつろわない両親のことは、緋月にとってはむしろもとより勾玉の血脈に対する反乱分子のような認識であったらしい。
クリスマスが終わって、神社だけでなく世間にあっても、もひろく年始の準備がはじまって、それが佳境も佳境となることには、緋月はすっかりいつもの様子を取り戻した。
ちなみに、あのクリスマスイブの夜に、橘飛鳥が取り寄せておいたクリスマスケーキはまだ、少々皇家の冷蔵庫に残っている。それらもまた、多少なり緋月を元気づけるのには役立った。
そして、この年の大晦日、である。
この日は時間が経てば経つほど神社内が忙しくなる。
そのことを知っていて、鎮護官はまだ早朝といえる時間に、皇神社にやってきた。
漣環いわく、暁圭吾と暁維月のことの顛末については、まあ、柚真人が考えられうる限りで最悪の処分が下されたということだった。
それを緋月に話すべきかどうかはさすがに柚真人でも迷ったが、緋月の答えは、
「許されるのであれば、すべて柚真人さまの胸にとどめおきください。私が今さら聞いたところで、どうにもなりませんもの」
というものだった。
そして漣環は、桜があらかじめ柚真人に告げていたように、
「――桜御護からの、あなたへの伝言よ。年が明けたら、ここから先を、間違えずに行きなさい、と」
今回は報告事項もあったので、皇の家に上がって、漣環は、柚真人と対面した。
その環がくれた言葉に、柚真人は少し身を硬くした。それは、覚悟によるものだ。
「――間違い、ないんだな」
「――」
「――司は、戻るんだな」
「それは、あなた次第ということになるわ。あなた次第と、桜御護は仰った。永遠に失うか、取り戻せるか。その択一で、鍵はあなた。だから私も、今一度こうして頭を下げるわ。――あの子の、叔母として」
漣環は、そう言って、本当にひとつ頭をさげた。
「――」
柚真人は、唇を引き結ぶ。
心臓が、強く、速く、いてもたってもいられぬ鼓動を刻みだす。
「いいわね。巫女が、ここに戻るのであれば、我々はあなたに協力する。我々は、暁とは違うわ。それから、あなたの――彼女への想いも、信じている。かならず。必ず、皇の、そして草薙の、最後の巫女を、取り戻して」
桜と、ほとんど同じことを言うんだな、と思った。
こちら側は、皇の巫女を取り戻したい。
対して勾玉の血脈として見ると、司は、最後の草薙の巫女。彼女を正気で取り戻さなければ、意味はない。もしも司が、暴走した自らの力に呑まれ、そこから戻れないのであれば、環は、司を――。
させるものか。
柚真人は、端座する己の両脚の、袴の上においた拳を、ぐっと強く握りしめた。
そうして。
「――必ず」
覚悟をあらため、誓う言葉だ。
そして柚真人は、いまいちど。
必ず、と。
自分の胸に、強く刻んだ。

