「やった…金賞取れた!」
「よかったな!安達くん。とうとう、君の写真の良さが伝わったんだな」
「私も初めて入賞しました!」
「すごいじゃないか、川崎さんも」
俺の高校は写真部の強豪校。周りの人達は次々に賞を取っていく。同じクラスの安達ですら、もうトップクラス。
俺だけ、どんどん遠ざかっていく。
「先生!私、優秀賞取りました!」
ここから何人もの人が写真家として羽ばたいていくのだろうか。周りの笑顔を見ていると、自分が惨めに思えた。
「僕も!!」
周りが眩しい。俺だけ、取り残された気分。
「みなさん、今回のコンテストもよく頑張りました。入賞した諸君、おめでとう」
笑顔で顧問の話を聞く周りを見ていると、おかしくなりそうだった。俺なんか…。
「蓮水くん、次は取れるよ」
先生が肩を叩いた。
「まだ、蓮水くんの写真の良さに気づいてないだけだから」
先生、その言葉が1番痛いよ…。
放課後。校庭のベンチで寝そべる。空は高く、果てしない。手を伸ばしても、一向に届かない。今の俺みたいだ。
お腹に置いているカメラが妙に重たく感じた。入部した時は、もっと楽しく写真が撮れていた。建物、風景、植物…いろんなものを撮っては、周りに見せて、よく褒められていたのを思い出す。なのに、俺は一度も賞を取ったことがない。
もう2年生になってしまった。今の俺には"撮りたいもの"が何もなかった。
「俺に才能なんて、ないんだ」
気づけば30分も寝そべったままだった。こんなことしている場合じゃない。俺は勢いよく起き上がり、なんとなくカメラのレンズの蓋を開けた。
何か撮らないと…。目の前ではいろんな部活が始まっていた。題材なんていくらでもある。でも、撮りたいものは、何も浮かんでこなかった。
なんとなくファインダーを覗く。被写界深度を浅くして、対象物を絞る。このファインダーで奥で輝く主役を探していく。
パシャ。グラウンドを飛び立つ鳩。これじゃない。
パシャ。ゴールネットを揺らすサッカーボール。これでもない。
俺は何度もシャッターを押した。走り高跳びのバーが落ちる瞬間、野球部のゲッツーの瞬間、泥だらけになったハンドボール…何を撮っても、全くしっくり来なかった。
もう今日はやめたほうがいいかもしれない。そう思う気持ちと裏腹に、悔しさだけがふつふつと湧き上がる。やめようと思う度に、諦めようとする度に、俺の中でそれはダメだと引き留めるやつがいる。負けず嫌いなところは昔から変えられないのだ。
もう一度、ファインダーを覗く。反射的にシャッターを押した。続けて2,3回……。
ーーパシャ。
なんだ今の感覚は……。妙にシャッターを押すボタンが物凄く重く感じた。自分でもよくわからない。でも、あの瞬間、痺れるような何かを感じたのだ。
慌てて写真を見返す。そこに映るグローブと白球。帽子が少しずれていて、汗だくな髪が見える。薄いTシャツの下にはピチッとしたアンダーシャツを着ていて、膝の方まで上がってきている。そこから見える腕は筋肉と血管がかすかに浮き出ている。これは本当に僕の写真なのだろうか。俺が撮ったとは、到底思えない写真だった。
もう一度、ファインダーを覗く。さっきの人は……、あれ。女子しかいない…。さっきとカメラを向けてる場所は同じなのに、同じような格好をした女子しか見当たらないのだ。おかしいな……。確かにこの場所なんだけど……。
俺はファインダーから目を離した。
「危ない!!」
「え……」
顔を上げた時にはもう遅かった。大きな影が迫ってくる。
「痛っ…」
弾丸が頭に当たった。そのまま白いボールが下に落ちた。頭がジンジンする……。
「すいません、大丈夫ですか?」
顔を上げると、目の前にさっきの写真に映る彼がいた。爽やかな声と透き通る目。
「え……」
俺の足元には白い大きな球が落ちている。野球ボールではなく、ソフトボールだ。彼はそれを拾い上げた。
「当たりましたよね。頭当たりました?」
「あ、はい」
「頭はまずいな……。救急車呼びましょうか?」
「いやいや、大丈夫なんで」
「本当ですか?」
彼は俺の頭に手を伸ばした。優しく触れるその手に反応して体が竦む。
「一緒に保健室行きましょう」
彼は俺の腕を掴み、半ば強引に引っ張った。
「い、いや!!本当に大丈夫なんで!」
俺は走ってその場から逃げた。
なんだこれ。俺、今、なんかすごい心臓の音がうるさい気がする。走ってるから?いや、それにしてもデカすぎる気がする。
俺はそのまま駐輪場まで無我夢中で走った。カメラをバッグに入れ、そのまま自転車に乗って家に帰った。
今も頭が痛む気がした。
「よかったな!安達くん。とうとう、君の写真の良さが伝わったんだな」
「私も初めて入賞しました!」
「すごいじゃないか、川崎さんも」
俺の高校は写真部の強豪校。周りの人達は次々に賞を取っていく。同じクラスの安達ですら、もうトップクラス。
俺だけ、どんどん遠ざかっていく。
「先生!私、優秀賞取りました!」
ここから何人もの人が写真家として羽ばたいていくのだろうか。周りの笑顔を見ていると、自分が惨めに思えた。
「僕も!!」
周りが眩しい。俺だけ、取り残された気分。
「みなさん、今回のコンテストもよく頑張りました。入賞した諸君、おめでとう」
笑顔で顧問の話を聞く周りを見ていると、おかしくなりそうだった。俺なんか…。
「蓮水くん、次は取れるよ」
先生が肩を叩いた。
「まだ、蓮水くんの写真の良さに気づいてないだけだから」
先生、その言葉が1番痛いよ…。
放課後。校庭のベンチで寝そべる。空は高く、果てしない。手を伸ばしても、一向に届かない。今の俺みたいだ。
お腹に置いているカメラが妙に重たく感じた。入部した時は、もっと楽しく写真が撮れていた。建物、風景、植物…いろんなものを撮っては、周りに見せて、よく褒められていたのを思い出す。なのに、俺は一度も賞を取ったことがない。
もう2年生になってしまった。今の俺には"撮りたいもの"が何もなかった。
「俺に才能なんて、ないんだ」
気づけば30分も寝そべったままだった。こんなことしている場合じゃない。俺は勢いよく起き上がり、なんとなくカメラのレンズの蓋を開けた。
何か撮らないと…。目の前ではいろんな部活が始まっていた。題材なんていくらでもある。でも、撮りたいものは、何も浮かんでこなかった。
なんとなくファインダーを覗く。被写界深度を浅くして、対象物を絞る。このファインダーで奥で輝く主役を探していく。
パシャ。グラウンドを飛び立つ鳩。これじゃない。
パシャ。ゴールネットを揺らすサッカーボール。これでもない。
俺は何度もシャッターを押した。走り高跳びのバーが落ちる瞬間、野球部のゲッツーの瞬間、泥だらけになったハンドボール…何を撮っても、全くしっくり来なかった。
もう今日はやめたほうがいいかもしれない。そう思う気持ちと裏腹に、悔しさだけがふつふつと湧き上がる。やめようと思う度に、諦めようとする度に、俺の中でそれはダメだと引き留めるやつがいる。負けず嫌いなところは昔から変えられないのだ。
もう一度、ファインダーを覗く。反射的にシャッターを押した。続けて2,3回……。
ーーパシャ。
なんだ今の感覚は……。妙にシャッターを押すボタンが物凄く重く感じた。自分でもよくわからない。でも、あの瞬間、痺れるような何かを感じたのだ。
慌てて写真を見返す。そこに映るグローブと白球。帽子が少しずれていて、汗だくな髪が見える。薄いTシャツの下にはピチッとしたアンダーシャツを着ていて、膝の方まで上がってきている。そこから見える腕は筋肉と血管がかすかに浮き出ている。これは本当に僕の写真なのだろうか。俺が撮ったとは、到底思えない写真だった。
もう一度、ファインダーを覗く。さっきの人は……、あれ。女子しかいない…。さっきとカメラを向けてる場所は同じなのに、同じような格好をした女子しか見当たらないのだ。おかしいな……。確かにこの場所なんだけど……。
俺はファインダーから目を離した。
「危ない!!」
「え……」
顔を上げた時にはもう遅かった。大きな影が迫ってくる。
「痛っ…」
弾丸が頭に当たった。そのまま白いボールが下に落ちた。頭がジンジンする……。
「すいません、大丈夫ですか?」
顔を上げると、目の前にさっきの写真に映る彼がいた。爽やかな声と透き通る目。
「え……」
俺の足元には白い大きな球が落ちている。野球ボールではなく、ソフトボールだ。彼はそれを拾い上げた。
「当たりましたよね。頭当たりました?」
「あ、はい」
「頭はまずいな……。救急車呼びましょうか?」
「いやいや、大丈夫なんで」
「本当ですか?」
彼は俺の頭に手を伸ばした。優しく触れるその手に反応して体が竦む。
「一緒に保健室行きましょう」
彼は俺の腕を掴み、半ば強引に引っ張った。
「い、いや!!本当に大丈夫なんで!」
俺は走ってその場から逃げた。
なんだこれ。俺、今、なんかすごい心臓の音がうるさい気がする。走ってるから?いや、それにしてもデカすぎる気がする。
俺はそのまま駐輪場まで無我夢中で走った。カメラをバッグに入れ、そのまま自転車に乗って家に帰った。
今も頭が痛む気がした。

