憑かれ告られ愛となれ、そして友となれ!

「お待たせ」
 大星さんが、小さく手を振ってやって来た。
「待ってない。もっと遅くても良かったのに」
 穏やかに微笑んで、暁は椅子から立ち上がる。
 キョウさんは、まだはっきりとした人格として表に出てくることも可能だろう。だけどそれをしない。そのことに、暁も大星さんも気付いている。
 いつだったか、何気ない会話の中で航琉くんが暁に
「大星さんはキョウさんだけを好きなわけではなく、キョウさんを含めて暁さん自身を好きなのではないでしょうか」
 と尋ねた。暁は悲しげに笑って
「それじゃああまりにもキョウが可哀想だ」
 と言っていた。
 先回りをして、暁は大星さんにそう思ったとしても言わないようにと釘を刺しておいたらしい。
 そのときにどんなやりとりがあったのか、俺は知らない。
 俺はきっと、無意識のうちに暁とキョウさんを秤にかけて、暁をとった。
 そしてキョウさんは、自ら秤を降りたんだ。
「……っ」
「……おい? どうした? 何かあったか?」
「なん、っでも……ない……、っ」
 涙が出ていた。
 暁が心配をしてくれるのは、俺と沢山の時間を一緒に過ごして仲良くなったからだ。そこにキョウさんは介在しない。
 開けられなかったタンスの引き出しが開けられるように、暁がキョウさんの部分を取り戻せば、キョウさんを含めた暁という人物全体で幸せに向かうのだと思っていた。
 キョウさんが幸せになる道は、あったのか。それは俺が考えてはいけないと言われている気がして、口に出せば歩を進める暁の邪魔をしてしまう気がして、なかなか泣き止むことが出来なかった。