――きゃははっ! きゃははははっ!
子供が、笑っている。
透明な輪郭がはしゃいでいる。
俺の知らないところで何かこの子供の楽しいことが、得体の知れないものが進行している気がした。
――おはなし、して?
得体の知れない子供の要求。
――おはなしして、おはなししてよぅ
この一週間俺はおはなしをしていない。ヤミポンは、眠れているだろうか。
――きゃははははっ!
この子は、何者なんだろう。ヤミポンに聞いても答えてはくれない。この子のことも、自分自身のことも、ずっと。
――おはなしして、おはなしして?
友達なら話してほしいなんて思うのは、傲慢だと分かってる。立場で行いを強要するのは暴力だ。話せるなら、とっくに話してくれてるだろう。
過去や気持ちの中には言葉にしてしまえば自分の何かが崩れてしまいそうな怖いものがあって、ヤミポンが安心して話せる相手に、信じられる存在に、俺はなれなかったんだ。
――おはなしして、おはなしして、おはなしして、おはなしして、おはなしして、おはなしして、おはなしして、おはなししておはなししておはなししておはなししておはなししておはなししておはなししておはなししておはなしして
「……ひっ、」
強い冷気のようなものに襲われた感覚がして、一気に視界が暗くなる。頭が痛い、気持ちが悪い、眩暈がする――……
ふわ、と何かが首に掛けられる気配がして、眩暈が引いた。気持ちの悪さも、頭痛もない。子供の声が、聞こえない。姿が見えない。
首にはお守りが掛けられていた。俺の手が、自分で掛けたらしき位置で止まっている。
「ヤミポン」
返事は聞こえない。
「そこに居るなら、返事、を……」
応えてほしかった。
「これじゃ……聞こえない……」
お守りを外そうとして、それは駄目だと言われている気がして、ぎゅっと握りしめる。
何も聞こえない。姿も、見えない。
「勝手には、居なくならないでくれ……」
願うことしか出来なかった。俺の声が届いてくれるのかも、わからないまま。
