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ちょっぴり遡って、あの直後。
俺は自分のせいで血を流す航琉くんを見てパニックを起こしかけていたけれど、
「燈李さんがくれた傷、大事にします」
などと航琉くんが言い放ったため、
「大事にはしなくていいから、お大事にして」
とツッコミを入れる方に頭が舵を切り冷静になった。大切な宝物みたいに傷口を撫でるんじゃない。消毒と処置してもらいに保健室だ。
航琉くんの色ボケ……恋愛で俺を見てくることには一時期悩まされたけど、その悩みを乗り越えるという意味では凄く救われてもいる。彫刻刀で遊んでいたと適当な言い訳を話したら保健室の先生にかなり怒られた。幸い傷は大事には至らなかった。
「少し、抱きついてもいい?」
航琉くんにそう聞いたのは、休日を挟んで数日後。
「えっ?」
ドキッ! みたいな顔をされてしまったけど、そういう意味ではなく、ヤミポンの気配がしない……感じ取れないからだ。
気配がしないからイチャつける、という意味でもなく。
「わかりました」
俺の暗い顔を見て何かを察したのか、航琉くんは両手を広げて待ってくれた。
ごめん。使うようなことをして。
俺はそっと、触れるか触れないかくらいの感覚で航琉くんの体に腕を回す。
「……っ!」
手が、体が震える。
酷い恐怖と、嫌悪感……自分への嫌悪も混ざっているような……
「う、ぇ」
怖い。
存在感のある、大きな身体が。
体温が、気持ちが悪い。
俺はすぐに身を離し、口を押さえた。吐きそうだ。
航琉くんが心配そうに俺を見つめている。
「だ、いじょうぶ。これは、俺の感覚じゃない」
勝手に探って、勝手に暴くようなことをした。
「居るんですね、そこに。……ヤミポンさん」
「あれから、気配が全くしなくなっちゃったんだけど、多分……まだ、居てくれてる」
俺から離れることが出来ないわけだから『居てくれる』は言葉が違う気もしたけど、もし俺の前から消えることが出来るとして、勝手に消えられるより良かった。何も解決しないまま、何もわからないまま、居なくならないでくれ。
子供の霊も姿が見えない。ほんの少しだけ気配を感じることがある。怯えている。怖いものから隠れるように、息を潜めて小さくなっている。そんな気配。おはなしをしても、それは変わらなかった。
気持ちが落ち着く、と以前俺の声に対して言ってくれたけど、もうそれは無理なのかもしれない。
居なきゃいけない場所で安心出来ないのなら、どこで眠ることが出来るんだろう。
俺の近くに居るよりは、屋上のほうが具合悪く感じていたとはいえ、ゆっくり出来るのだろうか。
解放してやりたい。
俺はそのとき初めて、そう思った。
ちょっぴり遡って、あの直後。
俺は自分のせいで血を流す航琉くんを見てパニックを起こしかけていたけれど、
「燈李さんがくれた傷、大事にします」
などと航琉くんが言い放ったため、
「大事にはしなくていいから、お大事にして」
とツッコミを入れる方に頭が舵を切り冷静になった。大切な宝物みたいに傷口を撫でるんじゃない。消毒と処置してもらいに保健室だ。
航琉くんの色ボケ……恋愛で俺を見てくることには一時期悩まされたけど、その悩みを乗り越えるという意味では凄く救われてもいる。彫刻刀で遊んでいたと適当な言い訳を話したら保健室の先生にかなり怒られた。幸い傷は大事には至らなかった。
「少し、抱きついてもいい?」
航琉くんにそう聞いたのは、休日を挟んで数日後。
「えっ?」
ドキッ! みたいな顔をされてしまったけど、そういう意味ではなく、ヤミポンの気配がしない……感じ取れないからだ。
気配がしないからイチャつける、という意味でもなく。
「わかりました」
俺の暗い顔を見て何かを察したのか、航琉くんは両手を広げて待ってくれた。
ごめん。使うようなことをして。
俺はそっと、触れるか触れないかくらいの感覚で航琉くんの体に腕を回す。
「……っ!」
手が、体が震える。
酷い恐怖と、嫌悪感……自分への嫌悪も混ざっているような……
「う、ぇ」
怖い。
存在感のある、大きな身体が。
体温が、気持ちが悪い。
俺はすぐに身を離し、口を押さえた。吐きそうだ。
航琉くんが心配そうに俺を見つめている。
「だ、いじょうぶ。これは、俺の感覚じゃない」
勝手に探って、勝手に暴くようなことをした。
「居るんですね、そこに。……ヤミポンさん」
「あれから、気配が全くしなくなっちゃったんだけど、多分……まだ、居てくれてる」
俺から離れることが出来ないわけだから『居てくれる』は言葉が違う気もしたけど、もし俺の前から消えることが出来るとして、勝手に消えられるより良かった。何も解決しないまま、何もわからないまま、居なくならないでくれ。
子供の霊も姿が見えない。ほんの少しだけ気配を感じることがある。怯えている。怖いものから隠れるように、息を潜めて小さくなっている。そんな気配。おはなしをしても、それは変わらなかった。
気持ちが落ち着く、と以前俺の声に対して言ってくれたけど、もうそれは無理なのかもしれない。
居なきゃいけない場所で安心出来ないのなら、どこで眠ることが出来るんだろう。
俺の近くに居るよりは、屋上のほうが具合悪く感じていたとはいえ、ゆっくり出来るのだろうか。
解放してやりたい。
俺はそのとき初めて、そう思った。
